先日、ニュースを見て「なんで~?」って思うことが・・・
平成24年4月23日朝に発生した京都府亀岡市の府道の悲惨な事故、
昨日で1年が経ちましたが、抜本的な改善対策がなされていないらしいです。


(1年経った現在でも、現場道路は「グリーンベルト」と「青い路側帯」を描いただけのようです・・・)
僕も、自分の命なんかよりも大事な「3人の愛する子供」を持つ親として、
不運にも被害者となってしまったご家族に同情せざるを得ません。
そこで今回は、「通学児童の安全確保」について
府道の現状を踏まえたうえで「これからどう対処すべきか」を
土木に携わる者として、私見を述べてみたいと思います。
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まずは、現況分析と設計条件の確認です。
(事故当時の道路状況)
・ 沿道は住宅地で、車がやっとすれ違うことができるほどの道幅だった
・ 並走する国道9号の抜け道となっていたため、交通量は多かった
・ 事故当時は一方通行規制で制限速度V=40km/hだった
・ 防護柵や縁石などで分離された「歩道」または「歩行空間」はなかった
さらに、
現況をみて設計条件を想定すると、
・ 道路は中央線のない1車線で「車がやっとすれ違うことができるほどの道幅」から、
車道幅員は2.25m×2=4.5m、路肩幅は1.0mとすると、全幅W<7.0m
・ 沿道は住宅地で道路への出入りあり、また、道路拡幅は困難である
・ 生活道路であることから終日「一方通行」などの規制は難しい
・ 周辺の土地利用・地形状況から迂回路の選定は困難である
では、
事故を機に、京都府(市)の行政は何をしたか・・・
(事故後の行政の対応策)
・ 事故現場を迂回する通学路に変更した
・ 歩行者の通行部分を塗装で色分けする「グリーンベルト」を施工した
・ 制限速度を時速40キロから時速30キロに引き下げた
・ 通学路のガードレール設置などをこれから実施する

そのほか、
当該路線への「通学時間帯の通行禁止(車両通行止め)」を提案したが、
周辺地域住民の反対多数で棄却されたとか・・・
ところで、「なぜ改善されていないのか」を問われれば、
小学校やPTA・父兄の「児童の安全最優先!」な言い分と、
「それはわかるが、生活利便性や現状も維持したい!」沿道・周辺住民、近隣企業の
言い分が食い違って、「どうすればよいか」をそれぞれの弁士(議員)が未だ
「右往左往」して決めかねている状況なのであろうと推測します。
まあ、そんなことはさておき、
ここで、
上記の条件で、「自分の子供を交通事故から守る」道路改良を
「僕だったら」どう提案し設計するか考えてみましょう。
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(考えられる対策)
①歩車分離
歩車分離には、「縁石」「防護柵」など物理的な分離と、「ペイント」「区画線」など
視覚的な分離があるが、今回のケースを考えれば「物理的な分離」が対策案となるであろう。
尚、路線バスなどの車両が交互通行できない=「車両通行規制」が必須となる。

(視覚的な障害物設置も効果的です)
②通行車輛速度の抑制
速度抑制デバイスには、「クランク」「シケイン」などの「ボンエルフ」のほか、
「ハンプ」「狭さく」が考えられますが、
道路幅員に限りがありますからクルマを左右に振る「ボンエルフ」は不適合となります。


(ボンエルフの一般図) (ハンプは人工的な「段差」です)


(区画線によるシケイン) (段差ハンプと道幅を局所的に狭くする「狭さく」です)
③通過交通の抑制
混雑する「並走する国道9号の抜け道」であることから、「ボラード」や「交通規制」による「通過交通の排除」
が考えられますが、上記「通行止め反対」の住民意見により不可。
④歩道(歩行空間)の拡幅
限られた道路幅員では、電柱や看板の移設など「障害物除去」による歩行空間の拡幅が考えられます。

(電柱は通学児童をドライバーの視野から隠し、子供を車道へと追い出します)
これらの対策案より、「実施可能な対策工」を導いてみましょう。
①歩車分離・・・OK
②通行車輛速度の抑制・・・OK
③通過交通の抑制・・・NG
④歩道(歩行空間)の拡幅・・・NG
したがって、これらさまざまな条件を踏まえると、
・ 「防護柵」または「歩車道境界ブロック」による物理的歩車分離

・ 「ハンプ」「段差舗装」「リブ付き区画線」など速度抑制デバイスの設置

・ 一登下校時間帯の方通行や進入禁止など時間帯指定「通行規制」の実施
・ 「電柱移設(地中化)」「看板移設」など障害物の除去
が、「実施可能な対策」となると考えます。
(行政の考えそうな、一般的な対策しか出てきませんでスイマセン・・・)
他方、
このような「地域を改善する道路事業」こそ、
「PI(パブリックインボルブメント)」や「ワークショップ」による道路改良設計
を実施すべきですね!!
※ PIとは・・・
「施策の立案や事業の計画・実施などの課程で、関係する住民や利用者などに情報を公開した上で、
広く意見をお聞きし、それらに反映する」ことを言います。
※ ワークショップとは・・・
住民が中心になって地域の課題を解決しようとする場合に、
地域にかかわるさまざまな立場の人々が自ら参加して、
地域社会の課題を解決するための改善計画を立てたり、進めていく共同作業のことを言います。


(さまざまな立場のヒトが1つのテーブルで改善策を提案し、意見をワークシートにまとめます)
正直、僕としては、
なんとか「通過交通の排除策」の「時間帯通行規制の実施」が
早期発現可能で、効果「大」であると考えますが、
その弊害が外の通学路線で発生することになりますので・・・難しいですね。
みなさんなら、どう考えますか?

朝の通勤時、通学児童に列をみながら考えてみてください・・・
では、このへんで、
僕の「通学児童の安全確保について」に関する見解を終わります。
ご静聴、誠にありがとうございました(笑)
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