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(有)遠藤測量設計事務所の「人生は上々だ!」

静岡県内で土木測量設計にたずさわる技術者のブログ

NEXCO中日本 中部横断自動車道 工事現場研修会2013

2013-06-13 23:11:42 | 土木技術について


本日は、ぜんぜん暇ではないんですが(むしろ忙殺ピンチ?)、
NEXCO中日本の
「中部横断自動車道 工事現場研修会」に行ってきました。




しかも、いつもの「発注者→受注者」の立場 大逆転!
バスで優雅にお茶ももらって、「お殿様 ご一行様~」状態で・・・(笑)
快適カイテキ~(笑)


「中部横断自動車道」といえば、
「山梨」⇔「静岡」をむすぶ山岳自動車道で、
現在、長野県にいくためには、国道52号線のクネクネ道を身延町を通過し、
鰍沢(南アルプス市)まで抜けるか、
または、
国道139号の西富士道路(朝霧高原と精進湖経由)の山岳道路を抜けて、
「中央道 双葉JCT」まで行かなければなりません。

冬の凍結・雪道の時期では、かなりの難間ルートでした(遠回りだし・・・)

でも、
これができれば、一般道に下りることなく、
高速で、快適に第二東名⇔中央道・長野道にアクセスできます!
長野や日本海がかなり身近になります!!

いままで諦めていたスキーをはじめ、渓流釣りや温泉、トレッキング、
キャンプ、フルーツ狩り、はたまたオートバイツーリングなどなど、
「遊びのエリア」がグーンと広がります!!
これは「莫大なお金をかけるべき」すばらしい公共事業ではないでしょうか!


さて、本題の現場見学会に戻ります。
今回、見学したのは以下の3箇所です。
 1. 湯沢第一トンネル (2295m)
 2. 興津川橋梁(460m)
 3. 前沢トンネル(685m)


では、「湯沢第一トンネル」から・・・



こちらのトンネルは、すでに貫通しておりまして・・・
小鳥のさえずりが響き、静かなもんでした。施工は「清水建設」
周囲の環境に配慮し、排土をベルトコンベアーでやったようです

・・・以上

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つぎに、「興津川橋梁」・・・・
施工者は「川田建設」
こちらの橋梁は、橋中央部に縦断へこみ凹部(サグ)がある5径間の橋梁です。



興津川上空部は、河川内には橋脚を入れられなかったため(当たり前か)、
径間を跳ばす(ロングスパン化する)ため自重の軽量化を図る
「波型鋼板」をつかった上部工が採用されたようです。
上部工の送り出しスピードは4.5m/日程度みたいで、
「7層塗りの塗装」が足枷になっているようでした。

  

しかし、スゲー高さ!落ちたら間違いなくあの世行き!
作業エレベータの関係で上まで行きませんでしたが、
高所恐怖症のボクちゃんでは、
「蛇ににらまれた甘カエル」のように
動けなくなってしまうこと間違いなしです(笑)

・・・・以上

---------------------------------------------------------

最後は「前沢トンネル」です。
興津川橋梁の路線手前に位置するトンネルで、現在、掘進中です。



いやはや、何がスゲーって、
この現場に到着するまでの仮設工(仮設道路工)がスゴイコトすごいこと!
大規模な盛土・切土や切土補強土(ロックボルト)、
沢を渡る「仮設橋梁」やヤード確保の「仮桟橋」・・・
仮設だけで相当な大工事ですよ、こりゃ!

で、その黄金の仮設道路を通っていざ抗口へ・・・



顔を粉塵で汚した「炭鉱夫」に似た作業員をみて、北海道時代の「夕張炭鉱」を思い出します。

と突然!!
けたたましいサイレンとともに「ドーン!!!」と、頑丈な抗口扉が震えました!!
はじめて目の当たりにした「発破」の瞬間でした!!!



「超スゲー!!!」とお殿様連中が関心しているそばから、「炭鉱夫」作業員が扉をオープンし、
モウモウと上がる粉塵のなか、勇猛に次々と入抗していきます。



「こういう現場最前線の作業員の方々が、ボクなんかより、
      これからもっと貴重な存在になってくるんだろうなー」

・・・・・などと考えちゃいました(笑)


(抗口の天端を注目!「神木に米俵」が3俵、積まれています。
 安全を祈願する、古くからの祈祷棚です・・・最先端の土木技術を駆使する中でも、
    日本人の神様に対する信仰深さ、従順さはいまも昔も不変です・・・)


そしてお殿様ご一行は、
バスでウトウトしながら、快適に、
唯一のパラダイスな時間を終えました(笑)



施工協議会(切土状況確認)

2013-06-10 23:54:52 | 土木技術について

本日は、道路災害復旧工事の施工協議に行ってきました。


(斜面上の施工です。いやはや、どうやって0.45BHをあげたんでしょうか?スゴイ!)

今回は、「谷止工」を築造するため掘削(切土)を行うんですが、
なんせ、斜面勾配1:1.2~の斜面上に設置するものですから
結構なオープン掘削となります。




  (見えている丁張は1:0.3で、ロックボルトを打設し補強します)



そこで、以下の事項をふまえ、
切土補強土(ロックボルト)を施工する計画としました。
 ・ 山斜面が急峻であるため切土安定(1:0.8~1:1.2)では
   切土線が無限線になってしまう
 ・ 上項同様、掘削影響範囲が二乗に比例する勢いで拡大するため
   斜面の不安定化につながる
 ・ 立木補償のほか用地買収、管理幅が巨大化する
これらの考えから、
背面床掘り掘削の切土勾配を1:0.3(ロックボルト併用)、
袖部の掘削を「作業掘削勾配の1:0.6」および
露頭する表層切土面は「切土安定勾配1:1.2」として計画していました。

そして、本日、
現場確認の結果、
「土質は設計当時よりも密実でしっかりしている」ことが判明したため、
ロックボルトの設計をより現場条件に合致させ、
効果的かつ経済的なものに全面的に見直すことといたしました。
※ボクの設計ミスも、おもいっきり露呈しますが、
  未熟者なのでそれは素直に・真摯に受け止めます。
  これが「技術力アップの真髄」であると考えています。




そのほか、
施工者や職人さんより、
施工者側の意見として「どうしてやるか」など、
さまざまな、実施的な、具体的な質問が飛び交います(笑)



その都度、設計した意図、意義、そうした理由(言い訳?)と
「こうしたほうがいい」という設計者の立場から提案を繰り出します(笑)
さらに、その提案に対して、
同席していただいた地質コンサル技術者にも意見・見解を仰ぎ、
ホントに「正しい提案なのか」「もっといい提案・見解はないのか」
を地質技術者の立場から合わせて協議していきます。

業者さんは、こちらの意図がわかると「ラジャー!」と、
こころよく(?)理解・了解してくれます(笑)

いやー、こういうのって、
とってもとっても勉強になるし、とってもエキサイティング!!
ボクみたいな「井の中の甘カエル」では、
こういう技術交流が、最大の「技術アップ」になりますねー!

これからも、
基準書・指針の「机上技術者」ではく、
施工と一体化した「現場技術者」を目指して精進していく所存です!



施工状況の視察

2013-06-05 23:22:00 | 土木技術について

本日は現場の帰りに、
(以前にご紹介いたしました)「道路災害復旧」の施工状況視察に立ち寄ってきました。
(2013.5.14 「施工現場を視察しました」より ↓ )
http://pub.ne.jp/kendo/?entry_id=4889086

現場監督に挨拶し、雑談しながら施工現場に向かいます。

  
    (復旧路線の終点(下流)付近です)             (起点(上流)付近状況)


※空中の単管傾斜足場で施工(作業)しています!
・・・・・・ こんなことできるんですねー!参考になります!




鉄筋コンクリート構造物であります「張コンクリート擁壁」が、
だいぶ立ち上がってきました。


(青い縦帯は通水マットです。足場上では職人さんたちが一歩一歩、作業を進めています)

  
(空中単管足場の上の状況・・・高所作業です・・   おじちゃんが奥で残存型枠をはめています)

 

 (主筋の重ね継ぎ手が見えますか?継ぎ手長はL=D16×35=560≒600mmです)
 (前面・背面の重ね継ぎ手位置のズラシもしっかりやってくれてました)
 


そこで、
監督および職人さんに、口をそろえて「設計のダメだし」を食らいました(笑)
その内容とは・・・
「こんな薄い張コンクリート擁壁で、残存型枠はやめてくれやぁ~」
監督と職人さんの合唱ハモリングでした(笑)

職人の言い分を列記する。
 ・ 残存型枠の設置にはパネルごとにプレート(留め金)が必要で、
   そのプレートを固定するサポートを別途、溶接・組みつけしなければならない
 ・ 主筋・配力筋の組み立てと型枠固定のプレート設置(溶接)で作業が頻雑化している
 ・ 擁壁背面に作業空間が確保できない、手が入らない(作業性、最悪)
 ・ ただでさえ主筋・配力筋でロックボルト(アンカー)の配置が困難であるのに、
   残存型枠(パネル)の固定プレート配置でさらに困難となる

  
 (職人さんが作業の手順を説明してくれます・・・
    残存型枠の固定プレート、ひとつひとつ、溶接固定しています、こりゃ手間だ!大失敗!!)



そんなこんなで、結果、
「作業の手間・工程が2倍かかっちゃってるぜよぉ~!!」
「効率悪すぎだべや~!!」   ※職人さん談
でした(笑)

ボク : 「ごめんゴメン(笑)施工実績も確認して設計したつもりだったんだけど、
       ダメだったね~(笑)」
     「よかれと思って設計したんだけどねぇ~」
     「まあ、今後、二度とこんなことしないから、今回はガマンしてやぁ~(笑))



職人 : 「まったくよぉ~、今回はしょうがねーから、次からはたのむぜぇよ~(笑)」

   
そんなこんなの現場実習で、
またひとつ、ボクはおりこうさんになっちゃいました(笑)

  
(一般の型枠も空中で固定できるんですね~(笑)
    ちなみに、型枠に張り付いている足場が「キャットウオーク」です)


みなさんも、
「張コンクリート」や「L型」「逆T」擁壁なんかの薄い鉄筋構造物に
「残存型枠」の使用はやめましょう
・・・(そんなやついねーか・・・)(笑)

割高だし、作業が手間で時間は倍かかるし、鉄筋が頻雑でメンドクセーし、
ボクみたいに職人さんに怒られるのがオチですよ(笑)

「脱型の手間が省ける」=「施工スピードアップ」には決してなりません!!!

残存は今まで通り、
「無筋コンクリート」や「砂防ダム」でフツーに使いましょう!!(笑)


「良好な自然景観」の理屈も、別な方法を考えましょう!(笑)




施工協議会に行ってきました

2013-05-21 23:16:53 | 土木技術について

本日は、以前(H23)に設計しました「道路災害復旧」工事の施工協議に行ってきました。


(背面に写っている山の崩壊はまったくの無関係です・・・)

この現場は、大雨により山斜面が崩壊し、道路を塞いで「通行止め」となった現場です。
僕の知っている限り、すでに3回、同じように崩壊し「通行止め」となっていて、
「斜面崩壊」→「通行止め」の常習箇所でした。


  (崩壊し道路啓開した後の写真です・・・いまから2年弱前です)


   (崩壊した渓流はこんな感じでした・・・テープの位置に谷止工を造ります)




崩壊素因は以下のとおりです。
 ・ 斜面上部に土砂供給源となっている大きな崩壊斜面が存在する
 ・ その斜面下端から豊富な湧水が噴出している
 ・ 湧水で斜面が渓流化し崩積土の堆積・流下を常時、繰り返している
こんな感じなので、当然、
風雨・長雨、地震が誘因となり、一気に土石流化して道路へ・・・
ってな、典型的な土砂災害パターンですね。


(土砂供給源となっている問題箇所。マルの位置から湧水が湧き出て渓流を形成しています)


対策工として、
「谷止工」と「前庭保護工(流路工)」を設置し、斜面上部からの「流砂留め」
および「流水の導水および整水」を行います。





尚、この道路災害復旧については、
 ① 「斜面上部の土砂供給および湧水の処理が先決である」
 ② 「堆積土がスベル可能性があるため斜面上部から対策しないと危険」
と提案したものの、
「復旧事業の主体が道路管理から外れる」という理由で却下され、
斜面下方からの施工となってしまいました・・・
(常に上流からの土砂流下を気にしなければならない、危険な工事になってしまいました)
さて、
今日の施工協議会では以下の点を協議しました。
 ・ 築造構造物(設計)の構造確認と設計概要(なぜそのような設計にしたか)の説明
 ・ 斜面切土掘削と仮設工法(切土補強土や水替工など)の確認
 ・ 測量および用地範囲の確認と「丁張り」を掛ける位置の確認
 ・ 実施(施工)工程の確認とそれに対する施工時留意点および段階確認時期の確認
                             そのほか雑談、etc・・・・

  (驚愕!!!切土斜面上にバックホウの0.45が上ってる!!!すげー!!)


  (まさに命がけ!!経験豊富な熟練オペさんでないと絶対できない熟練技です!!)


ところで、
施工協議会には2パターンあります。

ひとつは「協力して、いいもの造っていきましょうよ!!」ってチームになる場合、
もうひとつは「施工業者と設計コンサルタントとの言い合いになってしまう」 場合です。

僕はもちろん前者になるように協力しますよ!!!
・・・・でも・・・
そんな僕でも、
口論になって、ケンカになって、口も利かなくなって、相談もなくなって・・・
ってなこともありましたね。

僕はやっぱり、机上論だけで「理論武装した設計」ではなく、
「現場と直結した設計」を目指すべきと考えています。
そう考えると、
やっぱり「設計・施工一括発注方式(デザインビルト方式)」が効率的ではないでしょうか・・・

この現場についても、
施工状況について、随時、レポートしていきます!(笑)


施工現場を視察しました

2013-05-14 22:44:24 | 土木技術について

ぜんぜん暇じゃないんですが、
昨日の午後、
思い立つように
フラっと施工中の現場状況を抜き打ちで視察にいきました(笑)

(この現場の詳細は ↓ こちらを参照願います)
http://pub.ne.jp/kendo/?entry_id=4835642
2013.4.7の本ブログ記事「かたちになる(2)」より



現在は、「張コンクリート擁壁」の(フーチング)基礎工が終わり、
擁壁(張部)を築造している最中です。


(河川は「瀬替え」「仮締切」で流路切り替えし仮設道路兼用。計画位置は水衝部です)


   (クローラ限定の仮設道路を計画しました(笑)


    (バケット打設状況)

道路と河床の高低差が16mありますのでポンプ車が使えず、、
現在、コンクリート打設は「バケット打設」です。
ですから、打設リフトは現在わずか⊿h=1.0m/日!!
ポンプ車が届く高さまでは、ジッと辛抱の施工が続きます(笑)

そんなこんなを
監督と雑談・談笑を交えながら、設計と施工状況について話をします。

そこで、
以下の設計について「ありゃりゃ、そらマズカッタナ」っていう
貴重なアドバイスをもらいました(笑)
それは・・・
「残存型枠を使用した鉄筋コンクリート擁壁の築造」です!!!(笑)
(フツー、あんまりやらねーわな(笑)


監督の言い分は次のとおり・・・
監督:「残存型枠、取り付け金具と鉄筋で設置しづらいんですよね・・・」
    「無筋ならわかるんだけど、壁が薄すぎて手がはいらないんですよ・・・」
    「コンクリートも薄いから、転圧も念入りにやらないとジャンカになっちゃうしさ・・・」

僕: ・・・正直、「やっぱりな~」ですが・・・(笑)

僕としては、
非出水期(11月~4月、片付けを含め5月)までの河川開放を目論んだため、
「とにかく16mの張コン擁壁築造のスピードアップを図るんだ!!」などと考えて
型枠脱型をはじめとした「手間を省く」算段でしたが・・・
思いっきり裏目でした(笑)
(まあ、擬石模様の「景観への配慮」も理由のひとつなんですがね・・・)



       (標準断面図です。「地震時慣性力」をロックボルトで抑えます)


残存型枠を使用することで当然、構造強度も下がります。
張コン擁壁は標準厚さt=60cmですが、残存型枠の厚さt=4cm×2=8cm
を差し引きますからコンクリート有効高d=52cmとなります。
さらに、鉄筋かぶりを10cmとするとコンクリート有効高d=42cm・・・
コンクリート厚が薄くなれば、コンクリート曲げ応力度(躯体強度)も比例して下がりますからね(笑)

ちなみに、
強度低下は想定済みです(当たり前ですが・・・(笑)
擁壁背面の土圧は先行施工したロックボルト(切土補強土)で抑えてありますので、
設計荷重としては地震時慣性力(および輪荷重)だけの「風化防止の張コン」扱いです。
ですから、
設計計算上は大した強度もいらないのですが・・・
※コンクリート有効高d=42cmしかなくても
  鉄筋はD16@250(配力金はその1/6のD13)

でも、
なにを言いたいか・・・というと、
「施工しにくい=手間がかかる」わ、
「強度は下がる」わ、
「割高」だわ、
「残存なんてやらなきゃよかった・・・失敗!」です(笑)

やっぱ、薄い鉄筋コンクリート壁に「残存型枠」はやめましょう(笑)
 
以下、理由をまとめます。
 ・ 「型枠脱型」以上に設置手間がかかり「スピードアップ」にはなりませんよ
 ・ ジャンカの発生など、品質管理も大変ですよ
 ・ コンクリート擁壁の躯体強度も下がりますよ
 ・ 設置手間と材料で、トータル的に割高ですよ



  (コンクリート転圧状況・・・バイブレータでしっかりとねっ)

いやー、
やっぱり現場っておもしろいですね(笑)
会社に居るより「エキサイティング!」です(笑)

監督 :「またなにかあったら相談しますから、教えてくださいね。」
僕   :「もちろんOKです!そのかわり、また現場を見させてください。ヨロシクね!」
と告げて、
つまらねー会社に思いっきり遠回りして帰りましたとさ(笑)

つづく・・・



急傾斜地崩壊対策工法の矛盾

2013-05-09 23:58:17 | 土木技術について

先日、訪れた「もりのくに」の第2駐車場でのこと・・・
子どものスケートボードに乗りながら山側を眺めると、
「急傾斜地崩壊対策事業」によって築造された待受け擁壁が見えました。

「ほう、どこも同じようなこと、やってるんだな・・・」


※擁壁の上の斜面をみてください、土砂捕捉ポケット確保のため斜面を切り取っています・・・


「急傾斜地崩壊対策工法」の設計手法は、簡単にいうと
全国のガケ崩れ(浅層崩壊)のさまざまな被災事例を数年間にわたって蓄積し、
その数ある事例を分析・解析し「指針化」したものです。


その荷重および設計条件を以下に列記する。
 ① 土砂が斜面を滑り落ちるときの崩壊土砂流「衝撃力」に耐えること
 ② 崩壊した土砂量「崩壊土砂量」を捕捉すること
 ③ 擁壁背面に高く堆積した捕捉土砂の土圧に耐えること
 ④ 当然ですが擁壁背面にかかる土圧に耐えられること


(僕が以前、設計した対策工です。同じこと、やってますね(汗)

これらの荷重および設計条件をクリア―するために、
さまざまな計算や検討を繰り返します。
そのなかで、特に重要な条件が「②土砂捕捉」です。

崩壊土砂を民家側へ流出させないように、擁壁背面にポケットを作って
捕捉空間を造るのですが・・・
僕も、「急傾斜対策事業」に携わり、同じような設計をし同じような対策工を遂行し
現在、完成・供用開始している物件もあります。

間違いじゃないし、安定計算上は安全率を満たして「大丈夫」と認められています。
しかし・・・・・
ある程度、いろいろ経験すると、
これが「いかがなものか・・・」と矛盾を感じるんです。

だって、考えてみてください、
今現在、安定している斜面の下端(カウンターウエイト)を切取ってしまうんですから・・・
崩壊を誘発しかねない、明らかに人為的な「崩壊誘発要因」であると考えます。
もちろん、
切土した斜面は、「安定勾配による切土+簡易吹付け法枠(抑制工)」または
「ロックボルト(抑止工)による補強土」で補強・整正するんですが・・・

自然は、人間の勝手な「数字遊び」の計算なんかですべて治められるようなものではない!
と確信していますので、次回、「急傾斜地崩壊対策事業」を設計する際は、
そんなことも考えつつ、
「僕の家の裏山を崩れないようにして、家族を守るんだ!」という意気込みで、
計画・設計することを誓います!!!(笑)



INSEM工法を使用した砂防ダムが完成しました

2013-05-01 23:15:20 | 土木技術について

平成23年度にボクが設計担当した砂防ダムが完成いたしました。
(以前、現場見学会を開催した模様はこちら・・・)
http://pub.ne.jp/kendo/?entry_id=5102975

では、ここで当施設の設計概要について再度、おさらいします。

この砂防ダムは、
現地発生土砂(残土)にセメントを混ぜてカチコチにし堤体にする、
「INSEM工法」という新技術工法で設計いたしました。
以下、設計概要を明記する。

1.設計概要
1) 事業目的
 当事業は、
 平成23年7月の台風で発生した、上流域の山腹崩壊による土砂流出
 (推定V=30,000m3)を抑え、堆積している土砂を少しでも
 除去または有効利用することを目的とした砂防事業である。


上流域で山腹斜面の深層崩壊が発生し推定V=30,000m3の土砂が流出しました。
下流域には、農村・集落があり、降雨による土石流化が懸念されており、
一刻も早い対策が必要であった。

2) 現況および設計条件
 計画・設計にあたって、以下の設計条件を確認した。
 ・ 降雨毎に漫然と流出する推定V=30,000m3崩壊土砂の除去
 ・ 計画ダム位置までのアクセス道路(農道)が狭小・蛇行して大型車通行が困難
 ・ 最寄りのコンクリートプラント運搬距離が片道18.5km、
   市街地のDID区間を往来しなければならない
 ・ 大型車往来による騒音・振動・排気ガスの地域環境への配慮と安全確保

 したがって、
 これらの条件から、流出する崩壊土砂を堤体に代え、
 ヤード内施工で大型車の往来を最小限とできる砂防ソイルセメント「INSEM」 に着目した。

2.設計諸元
1) 流域面積(A)、  計画流出土砂量(Ve)、  流出流木量(Vw)    
  A=0.27km2    Vd=8,567m3、     Vw=291m3  ※現地調査より
               
2) 施設の能力                          
 透過型ダムの計画捕捉量(Vd)6,019m3
 (うち土砂捕捉5,728m3、流木補足291m3)
 
3) 施設詳細         
① INSEM-SBウォール工法
?堰堤(目標強度レベルⅢ=3.0~6.0N/mm2)
  堤高H=9.0(13.8)m、堤長L=62.5m、ソイルセメント量V=3,043m3(本堤工)
  ※コンクリート堰堤を計画した場合V=2,578m3であった
? 

              (ダムの長さは、堤長L=62.5mあります)

  
 (天端幅W=3.14m、堤高H=9mですが、袖部天端まではH=13.8mあります)  

② 地盤改良工
  (目標強度レベルⅡ=1.5~3.0N/mm2)
 堤体の地盤は河川堆積帯が分布していたため、同様のINSEM工法で改良しました。  
     ソイルセメント量V=520m3
  

とまあ、
長々とつまらない、自慢げなウンチクはこのくらいにして、
当ブログのシリーズ第2弾! 「劇的ビフォーアフター」をご覧ください(笑)

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                            (ビフォー)
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                            (アフター)
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   (上流域の谷止工です)         (ビフォー)
                              ↓

                            (アフター)
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以後、砂防ダムの完成形をご覧ください。


     (右岸側より正面を望む。正面は景観(見た目)を考慮し化粧パネルを使用しました)

  
(これは施工中の写真です。
中詰め材は土砂とセメントを撹拌混合した「ソイルセメント=INSEM」です)


           (砂防ダムの天端です・・・高くて足がすくみます・・・)


(これは施工中の写真です。左岸側の斜面を削り、袖を突っ込みます)


          (ダムの上流側は、軽量鋼矢板を型枠として築造します。
              この軽量鋼矢板で土石流の衝撃を受け止めます)

  
(同じく施工中の写真です。軽量鋼矢板を型枠にして築造しているのがわかります)


                  (ダムの上流側より下流を望む)


        (ダムの鋼製スリット部です。この枠で、土石流や流木を受け止めます)



(完成した証です。ダムの天端に埋め込まれたプレート)


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この砂防ダムができたことで下流域の農村・集落は、
「土石流災害」の恐怖から解放されました。

世間では、
「公共事業は悪」「税金の無駄遣い」という偏見が未だあります。
土木は「ガラが悪い」「悪いことする」、「天下りの温床」というイメージが未だあります。

しかし、
当ダム事業のように、
「災害から人々の財産や命を守る」ことができるのも「公共事業=土木」であります。
そして、
生活の「利便性」や「安全性」を向上させるのも土木であります。
他方、
商売繁盛につながる道路や都市を「創造」するのも土木であります。

このように、
みなさんに必要とされる公共事業は、
いつも
「みなさんに喜んでいただける」土木なんです。
「ヒトを助けられる仕事」であると信じています。
ですから、
僕は、これからも誇りを持って、「土木人」として生きていくことでしょう!

ps・・・
自分の子供に土木を天職として薦めるか・・・というと「NO!」ですが・・・(笑)





通学児童の安全確保について

2013-04-25 09:39:13 | 土木技術について

先日、ニュースを見て「なんで~?」って思うことが・・・
平成24年4月23日朝に発生した京都府亀岡市の府道の悲惨な事故、
昨日で1年が経ちましたが、抜本的な改善対策がなされていないらしいです。

  
(1年経った現在でも、現場道路は「グリーンベルト」と「青い路側帯」を描いただけのようです・・・)

僕も、自分の命なんかよりも大事な「3人の愛する子供」を持つ親として、
不運にも被害者となってしまったご家族に同情せざるを得ません。

そこで今回は、「通学児童の安全確保」について
府道の現状を踏まえたうえで「これからどう対処すべきか」を
土木に携わる者として、私見を述べてみたいと思います。

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まずは、現況分析と設計条件の確認です。
(事故当時の道路状況)
 ・ 沿道は住宅地で、車がやっとすれ違うことができるほどの道幅だった
 ・ 並走する国道9号の抜け道となっていたため、交通量は多かった
 ・ 事故当時は一方通行規制で制限速度V=40km/hだった
 ・ 防護柵や縁石などで分離された「歩道」または「歩行空間」はなかった

さらに、
現況をみて設計条件を想定すると、
 ・ 道路は中央線のない1車線で「車がやっとすれ違うことができるほどの道幅」から、
   車道幅員は2.25m×2=4.5m、路肩幅は1.0mとすると、全幅W<7.0m
 ・ 沿道は住宅地で道路への出入りあり、また、道路拡幅は困難である
 ・ 生活道路であることから終日「一方通行」などの規制は難しい
 ・ 周辺の土地利用・地形状況から迂回路の選定は困難である

では、
事故を機に、京都府(市)の行政は何をしたか・・・
(事故後の行政の対応策)
 ・ 事故現場を迂回する通学路に変更した
 ・ 歩行者の通行部分を塗装で色分けする「グリーンベルト」を施工した
 ・ 制限速度を時速40キロから時速30キロに引き下げた
 ・ 通学路のガードレール設置などをこれから実施する



そのほか、
当該路線への「通学時間帯の通行禁止(車両通行止め)」を提案したが、
周辺地域住民の反対多数で棄却されたとか・・・

ところで、「なぜ改善されていないのか」を問われれば、
小学校やPTA・父兄の「児童の安全最優先!」な言い分と、
「それはわかるが、生活利便性や現状も維持したい!」沿道・周辺住民、近隣企業の
言い分が食い違って、「どうすればよいか」をそれぞれの弁士(議員)が未だ
「右往左往」して決めかねている状況なのであろうと推測します。

まあ、そんなことはさておき、
ここで、
上記の条件で、「自分の子供を交通事故から守る」道路改良を
「僕だったら」どう提案し設計するか考えてみましょう。

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(考えられる対策)
①歩車分離
  歩車分離には、「縁石」「防護柵」など物理的な分離と、「ペイント」「区画線」など
  視覚的な分離があるが、今回のケースを考えれば「物理的な分離」が対策案となるであろう。
  尚、路線バスなどの車両が交互通行できない=「車両通行規制」が必須となる。


  (視覚的な障害物設置も効果的です)

②通行車輛速度の抑制
  速度抑制デバイスには、「クランク」「シケイン」などの「ボンエルフ」のほか、
  「ハンプ」「狭さく」が考えられますが、
  道路幅員に限りがありますからクルマを左右に振る「ボンエルフ」は不適合となります。

  
     (ボンエルフの一般図)           (ハンプは人工的な「段差」です)

    (区画線によるシケイン)       (段差ハンプと道幅を局所的に狭くする「狭さく」です)

③通過交通の抑制
  混雑する「並走する国道9号の抜け道」であることから、「ボラード」や「交通規制」による「通過交通の排除」
  が考えられますが、上記「通行止め反対」の住民意見により不可。

④歩道(歩行空間)の拡幅
  限られた道路幅員では、電柱や看板の移設など「障害物除去」による歩行空間の拡幅が考えられます。


(電柱は通学児童をドライバーの視野から隠し、子供を車道へと追い出します)

これらの対策案より、「実施可能な対策工」を導いてみましょう。
 ①歩車分離・・・OK
 ②通行車輛速度の抑制・・・OK
 ③通過交通の抑制・・・NG
 ④歩道(歩行空間)の拡幅・・・NG

したがって、これらさまざまな条件を踏まえると、
 ・ 「防護柵」または「歩車道境界ブロック」による物理的歩車分離


 ・ 「ハンプ」「段差舗装」「リブ付き区画線」など速度抑制デバイスの設置


 ・ 一登下校時間帯の方通行や進入禁止など時間帯指定「通行規制」の実施

 ・ 「電柱移設(地中化)」「看板移設」など障害物の除去



が、「実施可能な対策」となると考えます。
(行政の考えそうな、一般的な対策しか出てきませんでスイマセン・・・)

他方、
このような「地域を改善する道路事業」こそ、
「PI(パブリックインボルブメント)」や「ワークショップ」による道路改良設計
を実施すべきですね!!

 ※ PIとは・・・
   「施策の立案や事業の計画・実施などの課程で、関係する住民や利用者などに情報を公開した上で、
   広く意見をお聞きし、それらに反映する」ことを言います。
 ※ ワークショップとは・・・
   住民が中心になって地域の課題を解決しようとする場合に、
   地域にかかわるさまざまな立場の人々が自ら参加して、
   地域社会の課題を解決するための改善計画を立てたり、進めていく共同作業のことを言います。

  
 (さまざまな立場のヒトが1つのテーブルで改善策を提案し、意見をワークシートにまとめます)

正直、僕としては、
なんとか「通過交通の排除策」の「時間帯通行規制の実施」が
早期発現可能で、効果「大」であると考えますが、
その弊害が外の通学路線で発生することになりますので・・・難しいですね。

みなさんなら、どう考えますか?



朝の通勤時、通学児童に列をみながら考えてみてください・・・

では、このへんで、
僕の「通学児童の安全確保について」に関する見解を終わります。
ご静聴、誠にありがとうございました(笑)








地すべり対策

2013-04-24 08:25:09 | 土木技術について

昨日の明朝、浜松市天竜区で大規模な「地すべり」が発生いたしました。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐(記事引用)‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
23日午前4時20分ごろ、浜松市天竜区春野町の茶畑で地滑りが起きているのを静岡県が確認した。県によると、午前6時40分ごろまでに3回崩落した。けが人はいないという。県によると、地滑りの規模は幅約70メートル、高さ約80メートル、崩れた土砂は4万立方メートル程度と推定される。川に土砂が流入している。浜松市によると、茶畑では3月下旬にひび割れが見つかり、21日になって急激に幅が広がった。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐(記事終わり)‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

  

コトの始まりは、想像するに、
3月中旬に農家のオバちゃんが「あれっ!畑に線ヒビが入ってる二・・・」
「おとうちゃん、なんかわからんが、スグにお役所に電話せにゃいかんだ二・・・!」
ってところでしょうか・・・。
そして、
静岡県土木技術職員と土質調査コンサル職員が現場に急行・・・となり、
早急に、「避難勧告」→「ボーリング調査&孔内傾斜計の設置」・・・となったと思います。

しかし・・・・
時すでに遅し。「地べた」は動き出して(滑動して)おり、打つ手なし・・・
技術職員たちができることといえば、
観測してスベリを予測し、「崩壊予測」と「今後の復旧方針の検討」をしながら
状況を見守る(観測)だけ・・・
と、まあ、こんな感じではないでしょうか・・・
そこで今回は、
「地すべり」対策について、私見を述べてみます。
(具体的な設計、やったことねーけど・・・(笑)

まず、上の写真より、現場を確認し見解を述べます。
(現場の土地利用条件)
・ 天端は茶畑、斜面法尻は河川で水衝部(河川カーブ位置)
・ 斜面高さH=80m、斜面長L=150m、斜面勾配はθ=1:1.59(32.2°)
・ 崩落斜面周囲には広葉樹帯があった形跡(植林杉との地類界あり)
・ 崩壊斜面上部は広葉樹が多く植生している
(崩壊状況)
・ 赤茶けた土砂層=崩積土が確認できる(水道=スベリ面となりうる)
・ 露頭した岩層も見られるが風化した頁岩(泥岩)であろう
・ 崩壊深DP=15~20.0m、またはそれ以上(?)
・ 風化頁岩とともにごっそり崩壊した、いわゆる「深層崩壊」ではなかろうか?

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次に、要因を考えます。
要因には、地形的要因=「素因」と、地すべりの引き金になる「誘因」があります。
(素因)
・ 斜面勾配はθ=1:1.59(32.2°)で「急傾斜危険区域」にも当てはまります
・ 写真を診る限り、集水凹地形(谷地形)ではなさそうです・・・
・ 土砂および頁岩の混在する斜面であろう
・ 赤茶けた土砂層(崩積土層)を診ると湿潤(湿り気)している模様・・・
・・地下水、湧水、地表面(茶畑)からの通水・浸入水があったと推測します
(誘因)
・ 降雨、茶畑への散水などによる地表水の浸透、地下水圧の上昇・・・まとまった雨があったのかな?
・ 斜面法尻(カウンターウエイト)の亡失・・・以前から河川洗掘があったのかな?
・ 上載荷重の増大・・・こりゃ考えられない
・ 地震、人為的誘因(掘削やトンネルなど)・・・こりゃ考えられない

とまあ、
一般的には、こんな感じで考えるのでしょうか・・・。

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では、ここからは「もしもの世界」に入ります(笑)
もし、僕が「崩壊前」に現場に呼ばれて、県の土木統括主幹や住民に
「とにかく、たのむからこの状況をなんとかしてくれだに~!!」と懇願されたら・・・
を想像してみます(笑)

(考えられる応急復旧)
 ① 斜面上部の荷重を軽減する「排土工」



 ② 地下水圧を軽減する「水抜き横ボーリング」



 ③ スベリ(移動土塊)を串刺しにして留める「杭工」



 ④ すべってる法尻を押える「押え盛土」



てなところでしょうか・・・・
では、これらについて、考えてみます・・・「んっ???」

しかし、そのまえに考えてみてください。
「テンションクラックが時系列的にひどくなっている」=「地すべりは滑動中」であり、
人為的な行為により「地すべりの誘発・進行」は間違いありません。
対策どころか、近寄ることも「不可能」であると考えます
(笑)
したがって、
期待していただいた「皆様」には申し訳ありませんが、
僕は「それは無理!!!」と答えることでしょう(笑)

まあ、それは現実として、
では、「活動中でなかったら・・・」として応急対策工を順次考えてみます。

 ① 斜面上部の荷重を軽減する「排土工」・・・「OK」
   農家のオバちゃんが「いい二」っていえば可能ですが・・・
   地すべり天端での作業で危険、景観、自然環境など、
   今後の土地利用に難点が発生することは承知願います。
 ② 地下水圧を軽減する「水抜き横ボーリング」・・・「OK」
   「地すべり状況を確認しながら」の作業で施工可能であるが、
   水脈の位置特定がむずかしい。「集水井」を設置する場合は
   掘削・振動を伴うので誘発に注意する
 ③ スベリ(移動土塊)を串刺しにして留める「杭工」
   深層崩壊の場合はスベリが深いため、より大型な杭「シャフト工」となる可能性が高い。
   「地すべりの誘発」のほか、調達にも時間を要するため施工困難であると考えます
 ④ すべってる法尻を押える「押え盛土」
   法尻は、「流々とながれる河川」ですので無理です

次に、「本復旧を考えてくれダニ」とお願いされました・・・どうしましょ?
でも、本復旧も状況に応じて、さまざまな対策が考えられます。
その状況とは・・・
 (1) 天端の茶畑はすべてあきらめ、広大に用地買収できる場合(環境破壊を覚悟し「排土」する)
 (2) オバちゃんが「お茶はまだやるから、茶畑はできるだけ残しておくれダニ」という場合(排土なし)
 (3) 周辺状況は無視して、なんでもいいからとにかくもう再発しないようにする場合

条件によって、いろいろな対策工がありますので、代表的なヤツを挙げます(笑)

「深層崩壊」で考えられる本復旧
 ① 斜面上部の荷重を軽減する「排土工」・・・自然環境が変わっちゃいますよ(お勧めできません)
 ② 地表からの浸透水、通水を防ぐ遮水工および排水路整備
 ③ 地下水圧を軽減する「水抜き横ボーリング」「集水井 」
 ④ スベリ(移動土塊)を串刺しにして留める「シャフト工」
 ⑤ スベリ土塊を引き止める「グランドアンカー工」※初期緊張力は50~60%とすべし 
 ⑥ すべってる法尻を押える「押え盛土」・・・河川洗掘を防ぐ「護岸整備」

てなところでしょうか・・・・


(横ボーリングと集水井などの標準断断図(イメージ)です) 


   (集水井の内部はこんな感じ)


(シャフト工は巨大な棒で大きなスベリを串刺しにするため規模がでかい工事になります)

 
(グランドアンカーはアンカー長が長くなるし抑止力が大きくなる傾向があります・・・お金が高い) 

「結論」
「地すべり」に関する教訓・・・
 ・ 地震・大雨などの「誘因」で発生するので対象箇所を明確にしておくこと(ハザードマップ作成)
 ・ 主な「誘因」は「水」ですから、斜面防水・水抜き排水施設を設けて「予防する」
 ・ 動き出したらとまらない(とめられない)ので近隣に道路など「モノを造らない」
 ・ 土地も時間もお金も、たくさんかかりますので復旧放棄し「迂回」「移転」も視野に入れる



                                     ―以上―

PS・・・・

ところで、今後の方策として、現実的なお話を・・・
崩落した翌日の今日は、よろしくないことに雨です・・・
水の影響で、さらに範囲は拡大するでしょう・・・
しかし、
「落ちるべきものは落ちる」自然の摂理にまかせて、
その斜面の性質に合った「安定勾配」となることを待ちましょう。
まだいまの状況は「現況安全率」はfs=0.95(いや、もっと低いかも)です。
そのまま追加崩壊を見守り、
「現況安全率fs=1.05」くらいになるまでそっとしておきましょう。
いま何かするのは「無駄!!」と考えます・・・・

とまあ、このへんで、
具体的な地すべり設計、やったことねーけど、
僕の「地すべり」に関する見解を終わります。
ご静聴、誠にありがとうございました(笑)
                                       




シャッター通りを考える

2013-04-18 01:56:30 | 土木技術について

先日、わが町の「港祭り」が開催されているとの情報を得たので、
家族で行ってみることに・・・

駐車場を懸念して、徒歩で港まで歩くことにし、
昔は映画館もあった、わが町の旧メインストリートへ・・・
そこで見た光景は・・・

土木業界における、「市街地活性化策」のセオリー通りに整備したのに、
「シャッター通り」化した、寂れた町の風景でした・・・



では、「市街地活性化策」のセオリー通りとは・・・
「人間を重視した道路整備」がなされていること
「歩いて周れるまちづくり・にぎわいの創出」がなされていること
「公共交通の発展(交通弱者への配慮)」がなされていること
が、土木ができる地域活性化の主な課題と整備内容です。

土木業界が貢献できる課題解決の方策内容として、
 ① 「人間を重視した道路整備」=「歩行者の安全・安心」=交通安全
 ② 「歩いて周れるまちづくり・にぎわいの創出」
     =「道路空間の有効利用と歩行空間の確保」=歩道・空間整備

 ③ 「公共交通の発展(交通弱者への配慮)」
     =「移動のシームレス化」=バリアフリー・バスの定時性確保

といったところでしょうか・・・

これらを考慮しながら、まず、栄えていたとき(過去)の現況写真を見てみましよう。

  
(昭和50年代後期のものと思われます)


(昭和30~40年代のものと思われます・・・もっと古いかな)

(昔の光景の着眼点)
・アーケードで全天候型、歩行者天国で安全性抜群だった
・アーケード出入り口周辺にはバス停があった
・周辺道路は狭隘な港町特有の細街路ばかりだった
・バリアフリーなんて言葉もなかったし、当時は高齢者が少なかった
したがって、
‘①、②、③のすべてを満たしている・・・ことは決してなかったです・・・
・・・「んっ!!!」
市街地活性化において「重大な事項」を思い出しました!!!
それは、
「ここでしか買えないものが、ここにはたくさんあった!!!」
「ここまでチャリで○○時間かけて買い物にきた!!」


では次に、現代の、整備された同じ通りをみてみましょう・・・

  

(いまの光景の着眼点)
・日時指定で歩行者天国となる、歩道(歩行空間)が整備されている
・電柱地中化が推進されている、景観に配慮がなされている
・近隣には契約駐車場が多数あり、アーケード出入り口周辺にはバス停がある
・歩道の段差解消などバリアフリー化の配慮がなされている
・クランクなど、車両速度抑制デバイスが整備されている
したがって、
①、②、③は十分満たしていることになります。
そう、
ある程度、抽出した「課題」は解決されているんです!
でも・・・・
「シャッター通り」になっちゃている現状があります。

なぜか・・・
そして、「重大な事項」・・・
「ここでしか買えないものは、ここにはない!!!」のです!



結論!
「シャッター通り」はなぜ発生するのか・・・

それは、「インフラ未整備」をはじめ、モータリゼーション(クルマ)の発達,
市街の分散(スプロール化)と大型商業施設化、高齢化社会などが
もちろん根底にあります。

しかし、一番の理由は、
「そこに行く理由がない」=「魅力不足」=「ヒトが集まってこない」
ということではないでしょうか?

どんなに辺鄙なところでも、未舗装なところでも、
「満員御礼」、「ご近所迷惑」となっているお店があります。
そして、
そこに、またあらたな商売が生まれ、ヒトが集まってくる・・・
集団になる・・・にぎわい・・・名所化・・・地域が活性化する・・・

実際のところ、なにも整備しなくても、流行るとこは勝手に賑わうものです。


「シャッター通り」とは、そんな地域の評価・結果だと考えます・・・