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田園都市の風景から

筑後地方を中心とした情報や、昭和時代の生活の記憶、その時々に思うことなどを綴っていきます。

善導寺で久留米絣新作展

2023年03月19日 | 日々の出来事

 大本山善導寺で久留米絣の新作展がありました。

 コロナ禍もあって、新作展は久し振りです。例年は展示場などで開催されていますが、今年はお寺での展示会です。善導寺は浄土宗で鎌倉時代の創建。筑紫箏の賢順がいた寺で、筝曲発祥の地ともいわれます。左手が本堂、木に隠れていますがすぐ右が書院。いずれも国の重要文化財です。

 会場の書院内部。ここに上がるのは初めてです。展示されているのは重要無形文化財としての絣。手くびり、天然藍による染め、投げ杼の手織り織機によることが文化財の三要件で、それぞれに技術の伝承者がいます。

 この日は、明治期の布団地や旧作の着物仕立ても展示されていました。

 奥にある着尺の反物が新作です。

 久留米絣はもともとは日常着です。いまは作品としてのデザインが重要視されています。以前、工房を見学した時、機械織りの絣もデザインで売れ行きが違うと聞きました。文化財としての絣を少し紹介します。

 左「あじさい」 右「七宝」

 左「花信虫声」

 右側の作品です。「雨にあじさい」 人間国宝だった松枝玉記氏の作です。

 以前は文化財の要件を構成する技術の代表者が保持者として認定されていました。いまは技術の保持者会が団体として認定されています。絣の制作はくくり、染め、織りの工程を分業でしますが、一人で行う場合もあります。

 「清日」

 こちらは新作です。

 「氷華」

 「悠悠」  左の肖像画は久留米絣の考案者である井上伝です。

 「明滅」 これは技術保持者ではなく研修生の作品。私も20年前に買った機械織りの、同じ小柄のシャツを持っています。基本的なデザインなのでしょう。

 右下の写真はタデ藍、その左が藍を熟成した蒅(すくも)。染料の原料になります。左上に染めた織り糸が並べられています。染めの回数によって「甕覗き」から「濃紺」まで色の濃い薄いがあり、絣デザインの濃淡を表現できます。

 絵台です。下絵から緯(よこ)糸用の絵糸に墨付けして図案を写し取ります。織り糸と一緒にして、墨付けしたところをアラソウでくくり、藍染めします。絵糸はガイド糸で、後で抜き取ります。絵台の登場によって、絵絣が織れるようになりました。

 廊下には明治期に織られた布団地が展示されていました。

 この日展示されていたのは、いずれも鯉に翁の意匠です。絣は昔は布団地としても織られていて、婚礼布団は吉祥の絵柄が多いです。

 高砂の松と翁媼を描いた布団地。明治末期の作品で、作者名がわかっている珍しい例だそうです。先染めで、しかも経糸、緯糸ともに絣で、さらに色のグラデーションまで。これだけの絵絣を織り上げるのは、素人目にも熟練を要する大変な作業だとわかります。久留米絣の最高傑作といわれています。

 私は文化財の絣には手が出ません。持っているのは化学染料に機械織りのシャツですが、いい風合いで肌触りも良く気に入っています。子どものころは、農家の主婦は絣のモンペが作業着でもあり普段着でもあったような記憶があります。

 参道を戻ります。街灯の天女は誰でしょうか。両側には塔頭や寺院関係の幼稚園などが並んでいます。久留米で塔頭のある寺は珍しい。

 門前に廃業した蔵元の店があります。埃をかぶったショーウインドウ。酒の銘柄が蔵元の名前でした。

 三日前は小学校に通っていた孫娘の卒業式でした。式が終わって、家内の仏前に報告しに来てくれました。久し振りだからと食事に誘ったら、卒業祝いで友達とファミレスに行く約束をしているのだそうです。もう中学生になるので、子ども達だけでも良いのでしょう。最近はこういう、つれない返事が多くなりました。

 

 

 

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