原子力発電で出る「核のごみ」の処分地選定で、佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長(67歳)は10日、第1段階となる「文献調査」を受け入れる考えを表明。文献調査の受け入れは全国で3例目で、原発が立地する自治体としては初めて。(NHK)
町長1期目の脇山氏は「文献調査をするという考えはない」と述べていたし、 今回も佐賀県の山口知事は「佐賀県として新たな負担を受け入れる考えはありません」とコメントした。
この問題をどう考えればいいのだろう。
一つは、2002年に核ゴミ処分場の文献調査公募から2020年に寿都町と神恵内村が、そして今回玄海町が決定したという事実である。文献調査から処分場決定まで20年の歳月を要する話で、調査に応じた自治体には20億円の国費があてがわれるのだという。5千人余りの玄海町に20億円だから、1人当たり40万円弱の金である。大金だがおおよそ2ヶ月分の生活費である。それっぽっちで町外からの移住者は激減し、流出者が増えるのではたまったものではない。
だからだろうか、文献調査が済んで次の段階に移行すると70億円が贈られることになっている。70÷20=3.5 ∴ 70×3.5=245 処分場に決定した暁には、おそらく245億円以上のお金が贈られるだろう。想像だが、桁数が一桁上がる気がする。それほどリスクのある事業なのである。
玄海町の予算は92億円というから、その22%に当たる20億円が付与される公算が大である。地理的にも処分場には向いていないと町長が発言していたし、知事も受け入れ拒否だから、20憶円のご褒美は丸々町民の暮らしに役立つことになる。町民も議員もそんなことは承知の上なのではないだろうか。だが、そのデメリットは町の衰退に直結するのではないかと危惧するばかりだ。
もう一つは、原発自治体としての正義である。多額の資金が投入され、雇用創出もあり、原発のメリットは町民には計り知れないものがあったのだろう。そういう恩恵を享けておいて、原発ごみは他の自治体へというのでは正義が通らないと町民が思ったのかもしれない。しかし、その恩恵が危険極まりない原発事故リスクを背負っていたことへの対価だとしたら、なんら恩恵でも何でもないことになる。
疑心暗鬼という言葉があるが、町長の腹積もりは別のところにあるのかもしれない。交渉の中で囁かれたであろう天の声である。『文献調査で黙って20億円貰っておけばいいんですよ。こんな地理的にも問題山積の場所で処分場なんてできやしません。心配には及びません。手を挙げてもらうことが20億円の対価なんですから』というような言葉に合点したのではないかと想像したくなる。
だがしかし、博打と一緒で20億円を手にしたら次は70億円に手を付けるのが人情である。3期目の対馬市長の20憶円に目もくれなかった潔さは、剣道の教えの賜物なんだろうか。