唯物論者

唯物論の再構築

プロレタリアート独裁

2010-11-28 21:24:49 | 失敗した共産主義

 マルクス/エンゲルスの想定した労働者独裁は、暫定独裁である。
 この指摘自体は旧社労党の林紘義が行っているので、論旨はそちらを参考にしてもらえば良い。ただし結果的にレーニンは、ロシアに恒久独裁の収容所国家を作り出しただけ、という共産主義運動の痛恨のミスを犯し、人類の未来に巨大な禍根を残した。なおレーニンが独裁の期間を限定しなかったのは、早晩に世界革命が成立して独裁も自然消滅する、と彼が勘違いしていたことが考えられる。

 収容所国家を生み出したというレーニンの失敗は、彼が暴力革命に執着している段階ですでに準備されている。そして暴力革命への執着は、彼の議会蔑視と国家論の両方から帰結している。議会が国家主権と無関係の飾りであることと、国家が支配のための暴力装置であることが連携すれば、そこには暴力革命の必然性だけが残る。ただしこの必然性を証明するためには、議会が国家主権と無関係の飾りであることの露呈が必要である。例証として少し異なるが、チリのピノチェトによるクーデターのような形で露呈されるのでも良い。議会を通じた革命が暴力により阻止されたなら、暴力により革命を回復するしかない。その場合なら暴力革命の必然性が証明される。このような革命の文法を遵守した例は、フィリピンのアキノ革命やソ連崩壊時のエリツィン革命がある。しかしレーニンは、この手順を意図的に無視して議会を飛び越え、いきなり政権の暴力的奪取を行った。この暴力的奪取は、ほぼ無血で成功したが、そもそもレーニンのボリシェビキは、議会にあっても過半数に満たない少数派であった。正当性のないその後の政権には、暴力的支配だけが心の支えである。レーニンは天国への近道を進んだつもりだったかもしれないが、実は出口の無い無間地獄に飛込んだだけである。革命を維持するための内戦や粛清や餓死で、スターリン時代も含め、ロシアは国内で6600万人の犠牲者を出す破目になったのである。
(2010/11/28)

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