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第一回目はここからです。
「お日様、どうか私を連れて行って。」
「おまえはよだかだな。なるほど辛かろう、
今夜星に頼んでごらん。」
野原の草の上に落ち夢を見ていたよだかでした。
一本の若いススキの葉から露が滴った
冷たい物が顔にポトンと落ちた時、
目を覚ましたよだかでした。
もうすっかり暗くなり、
青黒い夜空には一面の星が瞬いていました。
よだかは、空へ舞い上がりました。
今夜も山焼けの火は真っ赤です。
よだかは、その火のかすかな照りと、
冷たい星明かりの中を飛び回りました。
それからもう一度息を整えて、大きく羽を伸ばして、
大きく大きく冷たい夜空を旋回しました。
そして
思いきって西の空のあの美しいオリオンの星の方に、
直っすぐに飛びながら叫びました。
「お星さん。
西の青白いお星さん。
どうか私をあなたの所へ連れて行ってください。
焼けて命を落としてもかまいません。」
オリオンは勇ましい歌をうたい続けていて、
よだかをまったく相手にしませんでした。
よだかは泣きそうになって、よろよろと落ちて、
そしてやっと踏み留まり、
もう一度一人で夜空を飛び回りました。
その後は、
南の大犬座の方へ直つすぐに飛びながら叫びました。
「お星さん。
南の青いお星さん。
どうか私をあなたの所へ連れて行って下さい。
焼けて命を落としてもかまいません。」
大犬は青や紫や黄色で美しく瞬きながらよだかに、
言いました。
「バカを言うでない。
お前はたかが鳥ではないか。
お前の羽でここまで来るには、億年兆年かかるよ。」
とそっぽを向きました。
よだかはがっかりして、よろよろ落ちて、
それからまた2回大きく飛び回りました。
それからまた思いきって
北の大熊座の方へ真っ直ぐに飛びながら叫びました。
「北の青いお星さま、
あなたの所へどうぞ私を連れて行ってください。」
大熊座は静かに言いました。
「余計なことを考えるものではない。
少し頭を冷やしてきなさい。
そういう時は、
氷山の浮いている海の中へ飛び込むか、
近くに海がなかったら、
氷を浮かべたコップの水の 中へ飛び込むのが一番だ。」
よだかはがっかりして、よろよろ落ちて、それからまた、
4回空を大きく飛び回りました。
星になりたいと
永遠に夜空に輝く綺麗な星になりたいと願った
よだかだったのでした。