下町のモーツァルトといわれた放浪作曲家(雨田/ROLLY)が殺された事件を追う霧山。現場にはダイイングメッセージが残され、とうじは「男性の犯行の可能性」として捜査が進められましたが、いまは名の知れた作曲家として一年に一本のペースで自作曲を発表する「作曲家の女性」(冴島みどり/りょう)が、当時交際中であった「雨田への嫉妬」(あふれる才能を独り占めしたいと思った)から殺意をいだき引きこしたものでした。
時効警察 第9話「最終回ピアノの女王は14曲で死ぬ」
霧山/オダギリジョー 交通課警官・三日月しずか/麻生久美子 十文字刑事/豊原功補
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今週もコメディセンスが光るセリフのおうしゅうでドラマはニギヤカニ。視聴者にどれほど届いているかは不明ですが、深夜の眠気を吹き飛ばす迫力は充分。
「才能ある作曲家の遺作を狙っての殺意……」という結末はある程度は予想できたものの、「奇行作曲家」の、死に際の心境(心意気)が、未来を感じさせるものとなっています。
橋のうえから突き落とされた雨田の心境――。死のふちにたったとき、並の人間であれば無念を引き摺るのが順当といえそうですが、「奇行でならした」雨田は、とっさに二つのことを考えたようです。
①ひとつは、みどりに被害が及ばないようにすること。②自分が作った曲が発表されること。恋人であるみどりに殺されたものの、彼女に作品を預けることによって、「自分の分身」が生きつづけるとでも考えたのでしょうか……もちろんそれは一瞬のひらめきでしょうが、作者はその「閃光」をドラマの中に記しています。
その後、みどりは「雨田の遺作」を毎年一作ずつ(十四年で十四作品)、自分の曲として発表し評価を受けていました。しかし今年発表する予定の、「十五年番目の作品」は、前半部分しか存在しないため、後半はみどりが独力で曲を作ることになりました。どうやらそれはかんばしくない完成度のようでやはり発表は中止。そしてみどりは自分のホントウの才能に気がついて……という結末。事件の背後を見る霧山の「神通力」は、なるほどとうならせるものが。
全九話、すべが1話完結という連続ドラマは、細部のこだわりと笑いへの執着によって安定した視聴者層をつかむことに成功。毎回繰り広がられる霧山と犯罪者との対決は手に汗握るものに。時効によって捜査が終了しても、「故人の意思や遺恨は永遠に続く」というドラマのメッセージは深夜の空間に刑事ドラマらしからぬ「無常観」をとき放っていました。(ドラマの視点)
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