kebaneco日記

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自由学園明日館

2021年11月03日 | お友達&近所&散歩

小雨の日曜日の午後、フランク・ロイド・ライトの設計による明日館と、その弟子の遠藤新が設計した講堂を見てきた。



大教室前方


大教室後方の棚
 
前庭に面した、ホール南面の幾何学模様の窓。修理前の窓は上下2分割されていたものを、保存修理事業で竣工当時の形に戻した。この写真は2階のホールに向かって突き出したバルコニーから撮ったもので、幾何学模様の美しさがよくわかると思う。この部屋は毎朝の礼拝に使用されていたという。
 

ホールの柱と灯具、2階のバルコニー

各部屋をつなぐ廊下
 
4箇所ある庭に出るドア
 
出入り口ホールの天井の灯具
 
 
当時帝国ホテルの設計に携わっていた遠藤新に、羽仁もと子・吉一夫妻が自由学園の設計を相談したところ、フランク・ロイド・ライトに引き合わされ、夫妻の教育への思いに共感したライトが引き受けた、とされている。着工は1921年、今からちょうど100年前。その後中央棟と西教室棟が完成した1922年に、ライトは帝国ホテルとの折り合いが悪くなり帰国。残りは弟子の遠藤新に委ねられ、1925年に残っていた東教室棟が竣工したのだという。
 


遠藤新はその後も自由学園に関わり続け、講堂を1927年に設計している。昨日は東京文化財ウィークのイベントの一つ、「文化財の中で文化財を知る 豊島区の文化財展」が開催されていた。
 


ステージの上から見た講堂内部、両側の文化財の展示がある部分(ポスターの後ろに当たる写真両端)は少し高くなっている。この、中央の平土間、両脇の高土間に3分割して耐震性を高めた構造を、遠藤は魚の「三枚おろし」になぞらえていたという。お師匠さんのフランク・ロイド・ライトへ傾倒していただけではなく、オリジナリティで進化させた遠藤新の作品。
 

後方バルコニー部分の灯具、右奥がステージ

 
学生数が増えてホールが手狭になったために建てられたこの建物でも、幾何学模様の窓枠が印象的な空間を作っている。2017年に耐震工事を行い竣工当時の姿に戻された。その過程で発見された昭和初期のトイレ(西洋式)が、当時の生活がわかる空間として保存されている。
 
 
手狭になったからと建てた講堂ですら、コンパクトで温かく包まれる感じがする。
 
 
ここで再び明日館に戻って、食堂でお茶をいただく。食堂はホールの上にあり、そのまた奥にミニミュージアムがある。外から見ると、建物全体は2階建てとは思えないような低さというか威圧感の無さ。それがライトのプレーリーハウス様式の真骨頂と言われている。だから、食堂スペースがどこに?と思いつつ階段を上がってひらけたスペースに軽く驚かされる。
 
 
変化に富んだ窓からの採光が柔らかい、チャーミングな食堂



この建物は1997年に国の重要文化財に指定され、その後保存修理事業を行い、竣工当時の姿に復元されている。そして「建物は使ってこそ維持保存ができる」との考えから、使いつつ文化財価値を保存する「動態保存」のモデルとして運営されている。なので全てのドアや窓が現役で、耐震性を高めた建物は公開講座、コンサート、結婚式などにも使われている。東西ウィングにある教室は会議室として使われおり、この日も中に集まっている人たちがいた。また、ウェディングでの利用を考えているであろうカップルが、女性スタッフから説明を受ける姿も見た。
 


小さい椅子はライトのオリジナル、大きい方はその「動態保存」のために、利用者が使うためにオリジナルから新たに作られた。この食堂にある長テーブルは全て当時のものだという。ちょっとだけ、何十年も前に行った京大前の進々堂を思い出した。あそこはまだあの雰囲気を保っているのだろうか?こういう場所だと大きな声でおしゃべりするのは憚られるけど、当時の学生さんたちはどうだったのかなぁ?


明日館を背にして池袋駅方面に少し戻ると、角に婦人之友社ビルが立っている。羽仁夫妻が1903年に創刊した「家庭之友」はいまの「婦人之友」。窓枠を見ると、ここにもライトの影響を感じる。
 
 
自由学園自体は、生徒数増加で1934年にはすでに東久留米市に移転している。その後も卒業生の活動の拠点として明日館は使われてきたし、戦後戦災を逃れた明日館は自由学園生活学校の校舎としても使われたという。創立当初は女学校だったけれど、いまは幼稚園から大学部まで、中高は男子部と女子部もある学生総数800人の学園となっている。
 
 
大学時代の友人がここの卒業生だったので、存在自体は身近だった。でも豊島区に住んでいた時も今も、距離だけでいえばお散歩圏内であるにもかかわらず、一度も訪れたことがなかった。ただ重要文化財に指定されたのが1997年で、2017年に講堂の修理が終了したとあったので、今だから講堂にも入れたのかも。それに、行ってみようか?と出かけた今年が100年記念だったと知り「今日来てよかったねぇ」と帰宅した。
 

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
kebanecoさんへ (くりまんじゅう)
2021-11-03 18:22:37
フランク・ロイド・ライトは『美の壺』の窓がテーマのとき
彼の作品の傑作を見せてくれました。多分ここも入っていました。
素人が見た時 これで台風などの暴風雨にも大丈夫なのか?
と余計な心配をします。
とにかくおしゃれです。
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くりまんじゅうさま (keba)
2021-11-03 19:41:45
同じくフランク・ロイド・ライトが設計した、大谷石をふんだんに使ったヨドコウ迎賓館を彷彿とさせるような柱があったり、素敵でしたよ。

確かにホールの窓は大きいので心配になりますが、ひょっとしたらこの幾何学的に配置された窓枠で補強されているのかしらん?とも思いました。

壁も窓も天井も、全てが静かに中に居るものを包む、そんな暖かさを感じる空間でした。
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木の良さ (みどり)
2021-11-03 21:00:36
窓枠も木、テーブルや椅子も木、床ももちろん木。
それが何ともホッコリしますね。
今も現役というのも良いです(^^♪
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Unknown (toki-tsubone)
2021-11-03 21:04:02
ここ、好きな空間です。
すぐそばに小さいギャラリーがあるでしょ?
あそこでよく知人の版画家さんが個展をされるので何度か行きました。
自由学園のオリジナルのクッキーも美味しいし、子供のおもちゃ類も昭和っぽくて素朴で素敵です。
コロナ前は夜も週何日か開いて、ワインなども楽しめるってのもあったのですが
今はどうなのかな?
kebaさんの詳細な記事を読んだらまた行ってみたくなりました。
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みどりさま (keba)
2021-11-03 23:14:03
現役として使って保存する、というコンセプトで、見えないところで耐震強化や近代化を図っています。Wi-Fiも飛んでましたよ。
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toki-tsuboneさま (keba)
2021-11-03 23:16:38
ありました。こないだも刺繍の作家さんが展示していらっしゃいました。

食堂でコーヒーを飲んだら300円なのにパウンドケーキが一切れ(2種類から選べる)ついてきて、それがいずれも美味しかったです。

ワインはどうだろう?食堂は4時までだったかな?あたしたちはどっちかいうとギリギリセーフで入った組でした。

あの食堂で静かに読書、もいいかもと思いました。
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