「新旧Macのパフォーマンス」という題でブログを書いたのが2013年の5月であるから、丁度11年前になる。Macを使い続けて約35年になるが、今回ついに決断してWindows PCに乗り換えることにした。理由は二つある。一つは、⑴ 出来るだけ新しい高速のPCが必要になった事、二つ目は、⑵ 48GB以上の大容量メモリを積みたかった事、が理由である。
メモリに関しては、最近のAppleのM型Macはメモリの増設が出来ない。購入時にOptionで選べるが価格が66万以上になってしまい手が出ない。更に、ソフトを最新のものに変更すると総額で軽く100万を越える金額に跳ね上がり、個人で購入出来る範囲を凌駕する。Windowsならば、メモリが自由に増設出来る上、CPUとGPUも自由に選択出来る。その上、古いソフトが可成りの確率で動作することが分かっているので、遥かに格安で研究環境を整えられる。と、購入動機は以上の通りであるが、さすがに「鬼のように安定したMac OSX」を離れ、使った事のないWindowsに移行するのは勇気が必要だった。しかし、11年前と全く同じ理由、「背に腹は代えられない」、によってついに決行する事にした。
問題は何処のShopに相談するかである。30代のころに秋葉原のパーツショップを歩き回り、抵抗、コンデンサー、スイッチ類を買いあさった経験があり、秋葉原の片隅に「九十九電気」というみすぼらしいパーツショップがあった。この店の片隅にコンデンサーの容量計がおいてあり10万の値札がついていた。その値段では誰も買わなかったであろうが、人の良さそうな草履履きの親父(社長?)が出て来て5万でいいと言ってくれた。何故かは分からないが、私はこの親父がすっかり気に入った。多分同じタイプの人間だったのである。あのみすぼらしいパーツショップが現在の「TSUKUMO」に発展したのだから未来は予測しがたい。
動機はともあれ、TSUKUMOに組み立てを依頼した。cpuは最新のintel core i7 14700K、graphic boardは控えめのGeForce RTX3060 (12G)、メモリは16GBとしたが、すぐに64GBを追加して計80GBへと増設した。OSはWindows11である。さて新旧PCの性能比較は以下の通りである。
Mathematicaの数値計算に要した時間(秒):
program1 program2
iMac 2012 (core i7-3770S) 282 1282
Dynabook (core i5-8250U) 123 611
TSUKUMO (core i7-14700K) 74 341
速度は数値の逆数に比例するから、新PCは2012年iMacより4倍速い。cpuの世代間の差がはっきりと出た。ついでM1 Macとの比較をcinebenchで行った:
Single Multi GPU
M1 Max 113 791 4332
M1 Ultra 113 1635 5968
TSUKUMO (core i7-14700K) 129 1563 (64GB) 8156
129 1458 (80GB) 8156
SingleはTSUKUMOが若干速く、MultiはM1 UltraとTSUKUMOがほぼ同レベルである。GPUはTSUKUMOが断然優れているが、外付けのRTX3060 (12G)のせいであろう。TSUKUMOのMulti性能は、2スロットの空きを残した64GBの方が、4スロット全てを埋めた80BGよりも若干高い数値を示している。純粋に速さを求めるなら2スロット開けたままの方が良いという事であろう。しかし、一度64GBでMathematicaがクラッシュしているので、現在は80GBで運用している。
以上、速さという観点だけならばMac→Windowsの移行は成功であったが、Windowsは設定が面倒で「時間泥棒」である。研究に使う時間よりも設定に要する時間が何十倍も必要である。Windows11でようやくMac OSXのSpacesに対応する機能が取り入れられ便利になったが、細かな便利さで未だMacに遠く及ばない。タスクバーにQuick Draw GXの技術が是非欲しい。Macではどのウインドーからでも、どのアプリケーションが動作中であるかが一目で分かるのだ。高価で拡張性がないが「使い易く」「鬼のように安定した」Mac OS、と安価で拡張性が高く、速いが「使いずらく」「時間泥棒」のWindowsというのが移行後の心境である。