泉を聴く

徹底的に、個性にこだわります。銘々の個が、普遍に至ることを信じて。

キャピタリズム

2010-01-25 19:20:51 | 映画
 「キャピタリズム」とは、「資本主義」のこと。
 「資本」とは、「お金」のこと。
 自由競争や職業選択の自由が保障されるなど美化されるけど、要するに「お金主義」のこと。お金のない人は不幸になるということ。それを認める精神のこと。
 この映画を観ると、それがほんとによくわかる。
 1%の人たちがお金を信じられないくらい得て、手放そうとしない姿が。
 99%の人たちが、自由以前に、家を奪われ、職を取り上げられている姿が。
 マイケル・ムーア監督の映画は初めて観たけど、子どものような人だと思った。
 一体、お金はどこに行ったの? 僕らの税金は、僕の有限の時間は、一体誰の元へ?
 子どもなら、僕らだって子供だったはずなのに、純粋な質問の数々を、そのまま保険会社や銀行の頭取に、強制退去させられる住民に、教会の司祭に、政治家に、父に、また自分に向ける。インタビューや自ら考えたことを中心に映画は展開されていく。
 カメラは、どこまでも純粋です。なんの脚色もない。歪曲も操作もない。現実の鏡になっている。
 だから、ほんとに民衆の代弁者として、代理として、仕事している。好感が持てるし、ほんとは自分だってやれば得られる情報を、作品として提示してくれている。適切な料金で。
 アメリカという国は、要するに戦争勝利国でした。勝ったことで正しいとされ、富みを得て増やすことに罪悪感は覚えなかった。むしろお金持ちになることが称揚された。アメリカンドリームとはよく言ったものです。常に世界の一番でなくてはならなかった。プールつきの豪邸を持たなければならなかった。強迫観念のように。
 しかしそれは、洗脳であり、暗示でしかなかった。持てる者の自己弁護でしかなかった。
 負けなかったということ。痛い目に遭わなかったということ。
 人は誰だって進んで痛み苦しみを得たいとは思わない。快楽主義が根本にある。
 でも、それだけでは足りないのだ。想像が育まれないのだ。
 苦しいからこそ、何とか抜け出そうと必死で試行錯誤する。その中でしか、有益なものは生まれない。必要は、発明の母。
 負を認めるということ。
 傷口にお金を当てて、血が止まるでしょうか?
 映画の中に出てきた、あるワクチンを発明した人の言葉が忘れられない(誰だったか、は忘れてしまいました!)。「太陽には、特許があるかね?」
 まったくその通り。
 その精神を、忘れまい。
 民主主義であるということ。
 民が、一人ひとりの人間が、主人であるということ。
 一人の人間の声を聴き取るということ。
 怒ってもいいということ。

マイケル・ムーア監督/ショウゲート/2009/新宿武蔵野館

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3 コメント

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観てきました (えったん)
2010-01-28 10:45:34
昨日、きくたさんの解説?を読んで、その日のうちに観てきました。
おとついまでは「キャピタリズム」という映画は知らなかったし、マイケル・ムーア監督も、そういえば、そんな監督っていたよねぐらい・・・。

映画館はとても暖かで、足元なんてポッカポカで、つい居眠り。1/3は寝ていましたよたぶん。気持ちよかったあ(^^。
感想はといえば、すごいことを訴えているのはわかったけど、きくたさんの解説を読んでから行って、何よりの私。
映画以上に、私に、何かを訴えたのでしょう、きっと。
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勝ち続ける不幸 (きくた)
2010-01-28 20:39:22
「解説」ではありません。
「感想」です。たぶん。
「勝ち続ける不幸」というのを、今は感じています。
映画館って、落ち着きますよね。
CM、予告編は、僕もいつも寝ています。
返信する
確かに (えったん)
2010-01-28 21:02:57
「勝ち続ける不幸」ですか。
なるほど!
この一言に凝縮された感じ。
これがいいねぇ。
う~ん、確かに。
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