酔いどれ烏の夢物語

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酔いどれ烏の夢物語 君の居ない夏

2023-05-14 15:18:10 | ポエム

    

   君の居ない夏

何気なく見渡した風景の空の彼方

雲のもっとその上に君は居た

あの日別れたままの少し寂しそうな笑顔

この目に焼き付いて離れない君の顔

多分このままずっと僕の中で

生き続けるのだろう

 

気まぐれに吹く風は潮の香がする

水平線の向こうで君が笑う

僕の心に沢山の思い出と後悔を残して

君は独り旅立ったあの日を忘れない

君と二人で過ごした日々は

僕と共に生きて行く

 

春の嵐が通り過ぎて初夏が訪れた

一緒に苦しみを背負いたかった

君のか細い手を離したくは無かった

君を独りで逝かせたく無かった

最後まで君は笑っていた

僕に生きろと言い残して

 

暑い夏がやって来たとても暑い夏

何事も無かったように時は流れ

悲しみは薄らいでいくのだろうか

君の居ない人生を生きて行く

寂しくても頑張ってみるよ

いつか君に逢える時まで

 

 

 

 

 

 

 


酔いどれ烏の夢物語 僕と悪魔

2023-05-13 11:49:56 | ポエム

      

     僕と悪魔

昼下がりの公園 何時もの風景

休日の何気ない日常 そこにいる人々

楽しそうな家族連れ 微笑ましい姿

けれどその笑顔の向こうには

いくつもの苦しみと悲しみがあったのだろう

皆それを乗り越えて 逞しく生きる

かつて僕は僕のすべてを拒絶した

悲しみ 辛さ 息苦しさすべてを

目を閉じて 耳を塞いで 絶望を受け入れた

果てに望んだのは 静かな暗闇

時が止まり 何もない空間の彷徨い人

 

救われたかった 逃れたかった

そんな愚かな僕の前に 君が現れた

僕が僕を必要としない そんな世界

そこに君が現れてこう言った

辛かったんだね 苦しかったんだね君は

今はただ眠るといい 何も考えず

君の身体と心が休息をとれるよう

目を閉じ 今は 眠るといいんだ

何かが消え 僕の中で 何かが弾け飛んだ

あの夏の日の午後 光の中で

僕の心が 解放されていくそんな気がした

 

目を覚ましたのは 優しい風の中

いい香りがしていた ここはどこだろう

天国というところか? そんな筈はない

僕は自ら死を望んだ愚か者だ

そんな僕が天国になど行けるはずもない

ふと見渡すとそこに 笑顔の君が居た

やあ気が付いた?ゆっくり眠れたかい

君は 誰? 僕は彼に尋ねた

君にとっては 天使かな それとも悪魔かな

僕は君を助け 生かそうとする奴

そうかやはり 簡単には救われないのか

 

彼は何も訊かず ただこう言った

一緒に生きてみないか これからの人生

僕が君の手を引くから 新しい人生を

新しい人生なんてあるのだろうか

君は本当にこんな僕と一緒に生きてくれるの

ぐっすり眠れたなら 次は食べる事

なぜか心がとても軽くなった気がする

僕は 彼に 甘えてばかりだ

それすらも 容認して 受け入れてくれる

悪魔なら良かった 僕の魂ごと

喰らいつくす 悪魔だったら良かったのに

 

彼の事は知っていた 有名だったから

見た目も性格も良く 人気があった

誰からも信頼される そんな彼がなぜ

日陰に咲く雑草のような僕を

こうして助けて守ってくれるのか解らない

でも訊くのは怖かった 本当のことを

そして僕は名前以外をすべて捨てた

新しい 人生を 生きると決めた

彼は僕に 嘘を言わない だから彼を信じる

たとえ彼が悪魔でも 信徒になろう

こうして今 彼が僕を愛してくれるなら

 

 

 

 

 

 

 

 


酔いどれ烏の夢物語 初夏の風

2023-05-07 14:19:17 | ポエム

      

      初夏の風

ベンチで本を読んでいた 初夏の風が気持ちいい日

遠くで誰かが僕を見ていた 誰だろう知らない顔だ

僕は見ていないふりをして 本に目を戻した

やがて彼は近づいて来て 真澄ちゃんだよね と言った

僕は顔を上げて彼の顔を見た やっぱり知らない奴だ

僕を真澄ちゃんと呼ぶのは高校時代の悪友たちだけだ

だがこの大学に進学したのは僕一人の筈

どうして僕の名前を知っているの と尋ねると

二年前くらいからライブハウスに出てたよね 

女の子達が騒ぐから見に行った事があるんだ

 

確かにそんな時期もあった 四人でバンドを組んで

僕はいい意味でも悪い意味でも目立っていた

祖父がロシア人のせいか 僕の容姿は他人と違う

所謂クオーターなのだが 一番祖父の血を色濃く受け継いだ

そのせいか肌は白く 目の色も明るい茶色だ

子供の時から女の子によく間違えられる

名前も女の子にも付けられる名前だからか

けれど僕は祖父がつけてくれたこの名前が好きだ

使っていたギターも祖父のお下がりだ

僕が高三になる直前に他界してしまったが

 

それで僕に何か用? 僕は率直に尋ねた

実は昨日君を見かけて 人違いかとも思ったんだけど

それはそうだろうあの頃 どうせならもっと目立とう

という友達に誘われて 髪を伸ばし化粧までしていた

大学に入ったら絶対バンドを組みたいと思ってたんだ

メンバーは大体揃ったけど 肝心のボーカルが居ない

君はギターも上手いけど 歌も良かった

それに君が入ってくれたらバンドも華やかになる

華やかね だっていい曲作っても聞いてもらえなきゃ

考えておいてくれ 他のメンバーに紹介するから

 

彼はそう言って立ち去った 風がかさかさと葉を揺らした

そういえばアイツらも 大学でまたバンドを組んだらしい

今度はどんなバンドなんだろう ふと思った

祖父が死んでいろんな事があったから 忘れていたな

僕は目立つのは嫌いじゃない 歌うのも好きだ

彼の集めたメンバーに会ってから決めようかな

名前聞いて無かった まあいいか

僕は本を閉じベンチを立った 風が頬を撫でる

また何かを始めるのには良い季節だと思った

 


酔いどれ烏の夢物語 死神

2023-05-04 00:40:36 | 日記

      

      

        死神

 

汝よ、そなたは何故に美しい瞳で見る

澄んだ瞳 薄紅の唇 栗色の柔らかな髪

汝よ、そなたは何故に私の邪魔をする

ただ美しく 美しく いればいいものを

そう言って彼は 女性の腕を掴み

持っていた大鎌を彼女の首にかけた

小さな芝居小屋で 僕は彼を知った

死神が命を奪いに行った家で

娘に恋をしてしまうという話だ

 

汝よ、その罪深い男を庇うな

その唇で 慈悲を 私に求めるな

汝よ、そなたの父親は罪深い

彼のセリフが 僕の心を 掴んでしまった

艶めいた黒髪 青白い肌

僕は彼に殺されても良い

いや彼に殺されたいのだ

別に死にたい訳では無い

只、死ぬ時は彼の手で死にたいと

 

呆れた、一目で恋に陥るなんて

後輩に頼まれて買ったチケット

まさか、そこで恋に堕ちるなんて

舞台後、声を掛けたのは 彼の方だった

あれから僕の中に 彼が居る

死神を演じた彼がいる

普段では 虫も殺さぬ様な彼が

舞台では どんな狂人にもなれる

ああ、芝居とは恐ろしい

 

彼は今、僕の家に居候している

お金が無い訳じゃ無い

彼が、一緒に居たいだけなんだと

二人で暮らす 楽しい日々を

僕は楽しんでいる 彼もまた

あの日思った彼への想い

叶えてはいけない想い

でも僕は何故か願ってしまう

この人の手で殺されたいと