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[MLB短評]What's Baseball Classic?

2009-02-21 01:08:42 | MLB
日本を“ナメ”てる? WBCへ各国いぜん「温度差」(夕刊フジ) - goo ニュース

自分はそこら辺のスポーツ紙の記者なんかよりも長い間メジャーリーグを見ていると自負しています。
NFLやたまに見ているNBAなど他のアメリカのスポーツと合わせると、メジャースポーツだけでアメリカが
どんな国なのかが見えてくると思います。

そうした自分から見ると、日本のスポーツ紙が書くメジャースポーツに対してのシングルマインドな
記事には笑ってしまいます。その中の一つが夕刊フジのこの記事です。WBCに対してアメリカでは
興味を持たれていないというものです。そりゃあそうでしょう。大手メディアが揃う東海岸では、
この大会は行われませんので、テレビ的にも見栄えしないのは明らかです。

しかし、3年前を思い出してください。サブプライムローンのおかげでアメリカでは好景気でした。
それを支えていたのは、これといった担保もないのに家を購入できるようになり、アメリカ中でも
その人口が増えだしてきたヒスパニック系の人たちです。そしてWBCへの参加をいち早く希望したのは、
プエルトリコやドミニカなどの野球が盛んなラテン諸国です。あのキューバですらWBCの出場を
望んでいましたが、アメリカ政府から入国の許しを最後の最後までもらえず、あえなく不参加か、
というところでした。

当時WBCは「アメリカ人のアメリカ人によるアメリカ人のための大会」と日本では言われていましたが、
実のところは、しだいにアメリカ国内でマイノリティではなくなってきたヒスパニック系に対して
アピールする大会だったのではないかと思います。現に同じ年の夏、北部ミルウォーキーにある
ミラーパーク恒例のソーセージレースに、チョリソが加わったというニュースがありました。
トレード期限が迫る中、わざわざGMがこのことを発表したほどです。これはGMも記者会見で
話していたことなのですが、ミルウォーキーでもラテン系の住人が増えだしてきて、その人種に対し
アピールするために新メンバーを入れたのです。日本のメディアはメジャーリーグと言っても、
「アメリカ人の速球投手、パワーヒッター」という昔ながらのイメージか、最近の日本人選手しか
知らないので、アメリカの社会について知る由もありません。

もうひとつバカなことを書いているなと思ったのは、アジアのチーム以外は全体練習をほとんどせずに
本番へ望むという点です。こう書いています。

北中米の各国代表チーム、カナダ、プエルトリコ、ドミニカ、ベネズエラ、パナマなども
同様の短期間の直前合宿でWBCにのぞむ。


アメリカやカナダはそんなものかなと思いますが、一方、ヒスパニック諸国ではウィンターリーグが
行われており、冬でも野球をしている選手が多くいます。WBCに出場する選手がみんなそうかどうかは
必ずしも言い切れませんが(スター級の選手になればほぼ出場しないが)、彼らは練習どころか実戦を
行っています。そうでなくても、メジャーリーグで生き残るためにはオフでも必死なトレーニングを
行うことは必須条件です。そう考えれば、野球がもともと盛んではない中国は別にしても、冬に野球から
閉ざされるアジア諸国は練習時間を割く必要があるのではないでしょうか。同時に、練習の多さを
使命感の強さだという考えがまた短絡的にも見えてきます。

むしろ、あれこれと文句をつけて初回のWBCに対し最後まで出場を渋ったのは、他ならない日本でした。
しかし、WBC独特のルールに助けられ、またボブ・デビッドソンの誤審により愛国心を高められた日本が
初代のチャンピオンになり、メディアと広告代理店が思い上がっているように見えてきます。結局のところ、
日本メディアのメジャーリーグ、あるいはメジャースポーツへの見方そのものが最もクラシックです。


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