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[政治短評]国際公約、とは?

2011-11-05 11:09:20 | マネー&ポリティックス

【2011年11月1週】気になるニュースや話し合いたいテーマはこちらまで


この記事についての意見:


先日に続いて、またまた消費税の話になってしまいますが、どうしても看過できないことなのであえて書きます。

恐らく民主党は日本人が「国際」という言葉に弱いことを知っているのでしょう。そうでなければ前首相がサミットで脱原発を突然表明したり、現首相がG20に赴いてまで、日本の税制である消費税率を上げるなどという「国際公約」などしません。

野田首相、消費税10%を国際公約 解散にも言及(朝日新聞) - goo ニュース (2011/11/4)

財務大臣時代から消費税を上げる意向を示していた首相は、後に「国際公約というと少し飛躍がある」とも発言していますが、それは後の祭りです。もう日本では「10%=国際公約」という公式ができあがっています。

しかし翌日(5日)の日本の主要紙と呼ばれる新聞社の社説で(新宿にあるオリンパスの騒動をロンドンやニューヨーク経由で知るしかない日本に「主要紙」なるものは存在しないに等しいのだけど)、この問題を触れたのは産経新聞だけでした。ただしその内容は「公約の前に合意の努力を」という当たり障りのない内容です。要は党内及び野党に対して、そして国民に対して合意を取って下さい、というものです。消費税率を上げることも、それをG20で表明しようとすることも問題とはしていません。

消費税増税 公約の前に合意の努力を (産経新聞)

今回の「国際公約」の件は、単に消費税を絶対に上げると発表したことではなく、以下の点で大いに問題があるというべきです。

- ギリシャの債務問題や新たに出てきたイタリアの財政問題で混乱しているG20において、どの国も気に留めていない日本がどさくさに紛れて消費税率を上げると言うことで国際的な公約として箔を付けた。

今、世界の視線はギリシャの国会議事堂に注がれています。EUなどの財政救済策をあえて蹴ってまで「政治的な自由」を求めようとするギリシャに対して、他のEU諸国やアメリカはどうすべきか、中国をはじめとした新興国はヨーロッパを助けてくれるのか、これが今回のG20の焦点です。

かたや日本はそもそも出席していたことすら忘れられていることでしょう。そのさなかにわざわざ消費税という日本の国内税制の引き上げに触れることで、国内合意より強い(と考える)国際公約化としようとする魂胆が見えます。

- 日本は消費税率を10%にすることで国内の債務問題にケリをつけることができると国際的に表明してしまった

実はこのブログを書いている時点で、日本のメディア以外でこの問題を触れている海外メディアはありません(GoogleニュースUS版での検索調べ)。要は世界はギリシャに対しては変化を望みながらも、震災があっても改革も変化がない日本には変化を求めることどころか、とにかく関心がないのです。ただし世界は日本がギリシャやイタリア、スペインのような状況になるのを待っています。そのときには、かつて日本の首相が消費税率を上げると国際会議で主張しながら、このような結果になったと失敗例として取り上げることでしょう。

- 首相が国際会議の場で、日本国民に対して消費税率を10%にすることで現状の社会保障を維持できると錯覚させようとした。

これは先日書いたことと重なりますが、結局のところ現在の社会保障を維持したいのかどうかがわからないのです。仮にそうしたいのであれば、消費税率を10%で問題ないのかもわかりません。もしそれで問題が解決するのであれば、日本の消費税率はすでに10%になっていてもおかしくないのです。

誰もが高い税金を払いたくないとは強く思う反面、いつかは消費税率を上げなければ日本の財政は大変なことになると心のどこかで思っているはずです。しかしそもそも消費税10%の根拠も不明であるし、社会保障制度や年金制度をどうすべきかという議論すら全くない、選挙においても明確に政策を示さないのです。民主党も自民党もメディアも「10%」という数字がわかりやすいがゆえに、税率以上の問題を語ろうとしません。その理由は明確で、消費税を上げると言えば支持が下がるから、です。しかし消費税だけで議論を進めようとしているから日本は袋小路に入り込んでいるのであって、社会保障制度、年金制度その他それらに関わりが出る制度と議論が全くできないのです。民主党は野党時代、毎週日曜日のように年金制度を変えますと必死に説明していたのは何だったのでしょうか。

こうした議論の不作為が続く状況において、消費税率の引き上げがあまりにも気軽に国際公約となってしまったことは、公約の内容だけでなくその発表方法に関しても、大いに疑義があるべきというべきです。その上、これを問題だと捉えられないメディアも、はっきり言えば狂ってるとしか言えません。反民主党(?)の産経の社説(「主張」)も「消費税増税を対外的に約束した意気込みは大事」とまで書いているほどです。もはや何が問題なのかがわかっていない証拠です。その一方で、わかった顔をしているかのようにギリシャ情勢を伝えているのが今のメディアです。

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