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至極当たり前?な理論

2005-03-12 01:17:28 | マネー&ポリティックス
「新株」差し止め仮処分、ライブドアの申請認める (読売新聞) - goo ニュース

こちらに今回の仮処分決定の本文、こちらにその要旨があるので、これと併せて読めば双方が
どのようなことを疎明したかなどがわかるかもしれません。

まず、一部の法律家が問題にした証券取引法上違反ではないかという、ライブドアの時間外取引での
株式取得については、簡単に言ってしまえば今の法律では問題ないのにこれが違法だとするのはおかしい
(例え法律が改正しても改正法の遡及効は発生しない)ということで、印象としてはこの問題へわざわざ
踏み込むことはしなかったといえるでしょう。そのため、実際に争われたのは新株予約権発行が商法違反かどうかという、
かなり純粋な問題だけを扱ったといえます。

次いで焦点は「有利発行」「著しく不公正な発行」かどうかという点に絞られます。まず予約権行使の価格が
「有利」(つまり市場価格などと比べて安い)とまでは言うことはできない(難しい計算は省略)ということで、
ニッポン放送が勝利したのはこの点だけでした。逆に言えば、証取法違反の点を含めたそれ以外の点で、
ニッポン放送は大きく失点をしたために負けたということだと思います。

次の焦点は「著しく不公正な発行」かどうか。これについては、多くの専門家が「そうではないか」と
声をそろえていた点ですが、これは「不公正」ということとなりました。要約すると、ニッポン放送が行おうとした
予約権の発行は今のグループ体制を守るためだけであって、それを前提とするならば、ライブドアが
ニッポン放送を傘下にした場合にニッポン放送の価値が明らかに下がる(毀損する)ことを証明できない限り、
予約権発行は許されない、としています。そしてニッポン放送の主張では価値が下がるとは思えない、
というのが裁判所の決定です。

ちなみに、ニッポン放送の命綱である「企業価値が毀損する」点では、"看板番組"(だったんだ)の
ナイター中継について、チームとの契約に「(ニッポン放送)の経営主体に変動があった場合、
各球団は放送権契約を解除できるものとする」というのがあり、ライブドア傘下になればこの条項を
引っ張り出されると主張したようです。しかし決定では「そんなことが実際起こるか明確ではない」と、
言ってしまえば一蹴した形です。そして本来どちらの会社が経営権を握れば企業価値が上がるかを
判断するのは株主なんだよと、当たり前なのだけどニッポン放送にとってはきつい一言をぶつけています。

この決定は、新株(予約権)を特定の第三者へ防衛的に与える場合には、「会社ひいては株主全体の
利益の保護という観点からその新株(予約権)発行を正当化する特段の事情」があれば、支配権を狙う株主が
現れた後であっても可能である、とも読むことができます。今後の保全異議やその他抗告などでひっくり返る
可能性もあるので、この部分が今後の敵対的な色彩を帯びた買収へそのまま適用されるかはわかりませんが、
ある程度一定の基準を示したという点では意義ある決定と言えるでしょう。その意味では、こうしたトラブルを
起こしてくれたニッポン放送とライブドアに感謝すべきなのかもしれません。


それにしても、「公開買い付け(TOB)」という言葉が入っているだけで、トビー・ホール(デビルレイズ)
プロフィールページへリンクが貼られているのは何とかならないのでしょうか。

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