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第5話(3)

 水平線のかなた(3)

 3日目、幻影が現れるようになった。
水平線上に真っ白い帆が見え、こちらに近づいてくる。
しかし、途中でフッと消えてしまう。
 

  昼頃、また水平線上に帆が見えた。
また幻か、と思っていると、なかなか消えない。

 砂山に這い上がる。
確かに帆船だ。
立ち上がって手を振ろうとするが、足に力が入らない。
その内、帆船は水平線上に消えてしまった。

 次の日の朝、のどの渇きで気が狂いそうになり、海辺に出た。
浜辺に、何か大きなものが通った跡がある。
辿っていくと、少し砂浜がくぼんでいる。

 もしや、と思い、掘ってみると、
“アッタ! 海亀の卵だ!”
夢中で丸い卵を取り上げ、割って中身をのどに流し込む。
全身に電流が流れたような、醍醐味だ。

 スコールもザッと降ってきた。
袋に雨水をためる。

 全身の力が抜け、グッスリと寝込んでしまった。

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 何時間経ったのだろうか、頭を蹴られて目を覚ます。
そばに髭面の大男が立っていた。

 「お前は誰だ?」
“イングランドのドレーク隊の一員です。盗みの嫌疑を掛けられ、ここに置き去りにされました。”
「俺もイングランド人だ。ここに海亀の卵を取りに来たんだ。」
男の顔がほころんだ。

 男はエスパニョーラ島北東岸近くにあるトルトゥーガ島に住んでおり、野生化した牛や豚の肉を燻製にし、近くを通る船に売っている、という。

 「俺たちはスペイン人からバカーニア(燻製野郎)と呼ばれて、バカにされている。」
「そのうち、やつらの富を根こそぎ奪ってやるさ。」
「お前も俺たちの仲間に入れ。」

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 後に、トルトゥーガ島とジャマイカ島は、カリブ海における私掠船や海賊の根拠地となるのである。

        
     ――― 完 ―――


 参考図:「カリブ海の海賊」、ハワード・パイル、学研、1977
     
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