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第5話(2)

 水平線のかなた(2)

 ダニエルとジェームスはボートに乗せられ、大洋のまっただ中の小さな砂州に置き去りにされた。

 「ダン、悪く思うな。これも運命だ。」
僅かばかりの水とビスケットの入った袋が、砂州に投げられる。

 ダニエルは今の状況が現実のものとは思えず、呆然と小さくなっていく帆船を見つめていた。

 太陽が中天に達し、海面と砂浜からの照り返しで、耐えがたい暑さになった。
ジミーは、まだ痛さにうめいている。
「全て、お前のせいだ、ちくしょう。」

 僅かな糧食を2つに分け、ダニエルは砂山の反対側に移った。
体力の消耗を避けるため、砂山に穴を掘り、日陰を作った。
目の前に、茫洋たる海が広がる。
頭がボンヤリして、考えがまとまらない。

 “1ビンの水では3日と持たないだろう。”
“ジミーが襲ってくるかもしれない、流木を拾ってこよう ----------------”

 猛烈な、のどの渇きに襲われる。
少しの水では、砕いたビスケットも、のどを通らない。

 ようやく太陽が沈んだ。
熱にうなされていたジミーが、這いずりよってくる。
「水、水をくれ -----------------」
流木で追い払った。

 寒さと恐怖で眠れない。
うとうとしたと思ったら、真っ赤な太陽が水平線上に顔を出し始めた。

 辺りを見回すと、ジミーの姿が見えない。
満ちてきた潮にさらわれたのか、海水を飲みに海中に入って溺れたのか。

 ダニエルは砂浜に腰を下ろし、ボンヤリと水平線を見つめていた。
“誰に知られることなく、ここで骨になるのか ------------”
“まあ、ウエールズの田舎で腹を空かしながら、一生を終えるよりいいか。”
”おもしろい体験もしたし ------------------”


“そうだ、ドレーク隊を捜索しているスペイン船が通るかもしれないぞ!”
砂山の一番高いところに、白いシャツの切れ端を結びつけた流木を立てた。

 参考図:増田義郎著「図説 海賊」、河出書房新社、2006
     
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