gooブログはじめました!

第2話(4)

アデン湾(4)

 夕方、アフリカ大陸とアラビア半島間のバル・エル・アンデブ海峡を通過する。
アフリカ大陸側は黄色の砂漠、アラビア半島側は赤茶けた岩山が海岸まで迫っている。
多くの船が行きかう。
この幅30キロの海峡を越えると、いよいよアデン湾だ。

 大きな太陽が姿を隠そうとしている。
空は白っぽくなり、水平線上に浮かぶ雲は黄金色やばら色に輝き、やがて紫色、灰色へと変化していく。

 やがて辺りは暗闇に包まれ、海賊の活動する夜になる。
岡部は夜当直につく。
今夜は快晴で、星々が大きく頭上にかぶさってくる。
黒い海面に月光が反射し、幻想的だ。

 船後方をサーチライトで照らしているが、波のため、小さな舟の発見は容易でない。
船尾甲板で見張り員の巡回しているのが、動く影でわかる。
本船の後部の乾舷は7mあり、攀じ登るのは容易でないと思われるが、実際、大型船もやられているのだ。

 左舷後方から、黒いスマートな船が近づいてくる。
自動衝突予防装置(ARPA)でチェックすると、日本の護衛艦“さみだれ”だ。
右舷後方2キロほどで、エスコートしてくれる。
無線は使えないので、光信号で謝意を伝える。

 ほっと一安心し、自動操舵で手持ちぶさたな、操舵手のマルコに話しかける。
「半年海の上じゃあ、家族が気がかりですね。」
「もう慣れていますよ。家族もうるさいのがいなくて、のびのびやっているでしょう。」

 「海賊に目を付けられないことを祈りましょう。」
「私は運の強いほうでね。」
「20年前の湾岸戦争直後、別のタンカーに乗っていて、イラク軍の浮遊機雷に船がぶつかりましてね、そいつが不発だったんで助かりました。」

 お互いの“ヒヤリ!”とした経験を話す。
また、アメリカ軍がイルカを訓練して、イルカにつけた水中カメラで機雷を探す話等々が続いた。

参考図:Wikipedia、“護衛艦さみだれ”
     
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「大西洋」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事