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第3話(1)

捕らわれて(1)

 明け方に護衛艦は離れていった。
アデン湾2日目が始まる。

 昼当直。海がしけてきた。
白波が立ち、船は非常にゆっくりとしたローリング、ピッチングを繰り返す。
初乗船のときの、苦しかった船酔いの経験を思い出す。
遠いところを見ていれば問題ないのだが、うつむいて作業をすると、てきめんに酔ってしまうのだ。

 1日目と同じく、多くの船が行きかう。
“海賊は、どうやって襲撃するターゲットを選ぶのだろうか?”

 今は情報化の時代、ロイド情報局に料金を払えば、インターネットを通じ、船名、荷物、乗組員数、船速、乾舷高さなどの要目や、航行スケジュールなどを得られる、という。
後は、高速艇とGPS、小火器、肝っ玉さえあれば、海賊稼業は始められるわけだ。

 三色旗を掲げたフランスの艦艇が通り過ぎる。
フランスは、ソマリア海賊対策に積極的だ。

 2008年4月、フランスの豪華ヨットがソマリア沖でハイジャックされた。
交渉の末、身代金を払い、人質は釈放された。
しかし、フランス軍のヘリコプターは海賊を追跡、アジトを突き止めた。
サルコジ大統領の命令で、フランス軍コマンドがアジトを急襲、6人のメンバーを捕らえ、パリで裁判にかけた、ということだ。

 2日目の夜当直。
まだ、海にはうねりが残っている。風は強い。
今夜、護衛艦は100キロほど離れた海上で、他船をエスコートしている。
緊急の場合は、艦載の哨戒ヘリコプターSH-60Kが駆けつけてくれるはずだ。

 ウイングに立って後方を観察していると、波間に動くものを発見、双眼鏡でのぞくと、確かに舟だ。
後ろに船外機をつけ、数人が乗っている。
それが、斜め後方から接近してくる。

 「不審なボート発見!」
甲板の見張り員に伝える。
ボートはスピードを上げ、本船の後方200mほどを斜めに突っ切って、姿を消した。
     
     
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