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第2話(2)

敵軍上陸(2)
 ニュージョージア島西端の水路は狭い。しかも珊瑚礁が連なっている。珊瑚礁に座礁したら一巻の終わりだ。暗闇の中を、岩のたてる白い波の付近を避け、ゆっくりと前進する。

 突然、スコールが起こり、驟雨で何も見えなくなる。数分後、これまた突然雨がやみ、月がでて、あたりは白々と明るくなった。隊長艇から「島影に退避」の信号が送られ、各艇はマングローブに覆われた入江を探し、もぐりこむ。

遠くにぼんやりと明るくなっている島が見える。敵軍が上陸したレンドバ島だ。大胆にも灯りをつけて揚陸作業や工事をしているのだ。時々ドン、ドンという砲声が聞こえる。海上には敵艦艇のたてる白波がチラッ、チラッと見える。

 魚雷艇隊は「待機」となった。張り詰めた緊張の解けた隊員たちは、各艇で見張り員を除き、装具に寄りかかり、ひそひそと無駄話を始めた。空には満天の星、天の川の真中には、4星で十字をなす南十字星がひときわ美しく輝いていた。

 久保田艇長の艇では、機関砲座のそばで、砲員の日下部上水が同じ砲員の小松二水に話かけた。
「おい学生、おめえ何でこんな南の果てまで来ることになっちまったんだ?」
「成り行きですね。学生のとき、短波ラジオでむこうの音楽を聴いていたのが、ばれたんですよ。」
「それで?」
「警察に捕まってさんざん殴られた末、刑務所に入るか、軍隊に入るか、というわけです。」
「俺もバクチの出入で警察のご厄介になったとき、同じことを言われたよ。」
「でもまあ、そのおかげで南十字星が見られましたよ。」
「ケッ、俺は彼女の顔が見たいよ。」

     
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