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第2話(3)

敵軍上陸(3)
 敵駆逐艦や小艦艇がピケットラインをはっている。真っ黒い影が白い船首波をたてて、横切る。遠く、近く、照明弾が上がり、忍び寄る魚雷艇をぼんやりと映し出す。

 隊員たちは艇にへばりつき、前方を見つめ、身じろぎもしない。口の中はからからだ。

 波に隠れ、うまくピケットラインを抜けた。前方1キロ先に黒々とした大型の輸送船が停泊して、その周りを多数の舟艇が取り囲んでいる。それらの背後には多数の船が見える。上陸地点の明るさを背景として、敵船は黒くはっきりと識別できた。

 魚雷艇隊は各隊に別れ、攻撃態勢に入った。突然、照明弾が上がり、あたりが昼間のように明るくなった。

「全速前進!」
「魚雷戦用意!」

 エンジンが轟音をたてる。船体が大きく持ち上がる。
魚雷艇は海面をはねながら疾走する。
砲弾や機銃弾があたり一面に炸裂する。
輸送船の黒い影が、みるみる近づく。
対空砲火があらぬ方向に火を噴き始めた。

「テー!」 
久保田艇長は発射の信号を送ると同時に、刀を振り下ろすように手を振った。
2本の魚雷が発射管の大きく開いた口から飛び出した。

     
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