雲が流れ去り、太陽の光が差し込んできて、濃い青色の海を照らす。
船外機の音が遠く聞こえる。
海賊達が探し回っているのだろう。
幸い、波が高く、見通しはきかない。
もう、護衛艦は離れてしまったのだろうか。
じりじりしながら待っていると、ヘリの爆音。
数百m上空を、港目指して飛行してきた。
「よし、合図だ!」
ガソリンをかけた衣類に火をつけ、手に持って振り回す。
「助けてくれ!」
聞こえるはずもないが、叫ぶ。
船外機の音が近づいてきた。海賊も引き寄せたのだ。
「南無三!」
間一髪、ヘリは気づいてくれた。
ぐっと降下してきて、ボートの周りを旋回する。
ヘリが吹き降ろす風で、海面が白く泡立つ。
5人を確認すると、ヘリは飛び上がり、接近してくる海賊のボートに向かった。
威嚇のため、接近してくるボートの前方に、機銃弾を発射する。
そのボートは、方向を変えようとして横波を受け、危うく転覆しそうになった。
海賊たちは、分がないと思ったのか、引き返して行く。
「助かった!!」
皆、抱き合って喜ぶ。
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岡部らは、護衛艦上で状況説明をした後、シャワーを浴び、浴槽に浸かった。
船長:「どうだい、また船に乗るかい?」
岡部:(一呼吸おいて)「もちろん、乗ります!」
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交渉の末、“武蔵丸”とフィリピン人乗組員は、相場より安い身代金で、無事釈放された。
――― 完 ―――
参考図:Wikipedia、“ヘリコプターSH-60K”
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