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第4話(4)

膠着(4)

 桟橋に着いた。
目隠しをされ、日本人乗組員はランドクルーザーに押し込まれる。

 10分ほどのところで車から降り、建物の2階の一室に入った。
コンクリート床の殺風景な部屋だ。
裸電球が1つ、部屋の真ん中にぶら下がっている。

 5人はマットレスに腰掛ける。
見張りはドアの内側の椅子に、AK-47ライフルを持って座った。
ドアの外側にも1人いる。

 まんじりともせず、一夜を明かす。
ガラスのない窓から日が差し込み、潮の香が入ってくる。
トイレは近くにあり、小窓からのぞくと、青い海が近くに見える。

 昼、ヘリの飛ぶ音が遠くに聞こえる。
護衛艦が人質交渉に圧力をかけているのだ。
“早く助けてくれ!”

 拘束の日々は、岡部ら人質の体力と気力を奪っていく。
夜、裸電球の下、早々に横になるが、眼がさえて眠れない。

 「タン、タン!」
深夜、突然の銃撃音。
室内の見張りが、ビクッと立ち上がる。
岡部らは部屋の片隅に身体を寄せた。

 外の見張りが飛び込んできて、何かを叫ぶ。
移動しろ、ということらしい。
外に出ると、周りは叫び声と銃撃音にあふれている。
閃光が光り、曳光弾が走る。

 岡部らは、2人の見張りに前後を挟まれ、建物後方に急いだ。
“ダダッ”
前の男が倒れる。皆、横のくぼみに飛び込む。
後ろの男が立ち上がり、銃を構えた瞬間、曳光弾の矢が男を貫いた。

 銃を構えた男が走ってきた。シャツ姿の黒人だ。
どうやら、他の海賊グループの襲撃らしい。
慌てた様子で、5人を見逃し、銃火のほうに駆け去った。

 「逃げろ!」
船長の一言で、5人は背を丸めて海の方向には走りだした。

     
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