かなぶち鍼灸調体堂の「先ずは只管打歩」なほぼ毎日譚

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線維筋痛症に対する補完代替医療について

2014年06月26日 | 米国補完代替医療研究センター公開文書
…という、米国補完代替医療センターの文書を日本語化しました。
原本はこちらです。

線維筋痛症の原因が不明である以上、治療も対処療法にならざるを得ないのは仕方ありません。
また、鍼治療については、どうしても対照群の設定が困難なので、科学的にその是非を結論付けるのはまず無理です。ただ、筋肉の柔軟性低下≒硬化に対しては、原理的に効果があると考えます。

線維筋痛症に対する補完代替医療について
NCCAM Clinical Digest, June 2014


 線維筋痛症とはよく見られる、慢性疾患である。症状面での特徴は、
・広範囲に及ぶ痛み
・筋肉の柔軟性低下
・疲労感
を始め、多岐に渡る。それらの症状により、日常生活を営むのが困難となる例も見られる。米国の成人では500万人が線維筋痛症を患っていると推測される。その内の80~90%は女性であるが、勿論男性/子供もなり得る。その場合、他の症状が併発している例が多い。線維筋痛症の原因は不明であるが、幾つかの要因が重なっていると考えられている。研究者達は最近、中枢神経系に於ける痛覚の処理の異常に注目している。

 線維筋痛症の診断/治療は困難である。米国リューマチ学会が、最新の診断基準を公表している。治療は個人の状態に合わせて行われる場合が多いが、代表的な治療方法は投薬治療/運動療法/筋力強化トレーニング/認知行動療法/体操療法/マッサージ/鍼等である。

 本稿では、補完代替医療に属する幾つかの治療方法について、その科学的情報をまとめた。

 一般的には、線維筋痛症に対する補完代替医療の研究は予備的なレベルに留まっていると考えられている。しかしながら最近では、太極拳/気功/ヨガ/マッサージ療法/鍼等が、線維筋痛症の症状を緩和する可能性を示唆する臨床研究結果が報告され始めている。

(1)体操療法(太極拳/気功/ヨガなど)


【有効性について】

・2013年に発表されたシステムレビュー/メタ分析では、7つの個別の臨床試験結果(被験者数:362名)を解析している。その結果、太極拳/気功/ヨガといった体操療法等が、睡眠障害/疲労感/抑うつ感等の穏やかな改善に有効な可能性があるとした。また、睡眠障害に対しては、試験終了後3~6ヶ月間に於いても効果があるとしている。ただ、これらの結果が科学的に正しいと結論付けるには、より質の高い/大規模な臨床試験が必要であるとしている。

・2010年に発表された、米国補完代替医療センター(NCCAM)が資金提供を行った研究結果では、線維筋痛症に対する、太極拳と(健康教育+ストレッチング)の効果を12週間に渡り調査した。その結果、太極拳を実践したグループで痛み/睡眠障害/抑うつ状態等の症状が有意に改善されている事が明らかとなった。そしてその効果は、試験終了後24週間に渡り維持された。より大規模な試験(これもNCCAMが資金を提供している)は、現在進行中である。

【安全性について】

・太極拳/気功に関しては、一般的には安全であると考えられている。しかしながら、妊娠中の女性/ヘルニア患者/関節に痛みがある人/腰痛症の人/骨折している人/重度の骨粗鬆症患者等は、かかりつけ医の指示に従うべきである。

・ヨガも、適切な指導者の指示の下で行う限りは安全であると考えられている。しかしながら、高血圧症/緑内障/坐骨神経痛/妊娠中の人等は、幾つかのポーズは避けた方が良い。

(2)マッサージ

【有効性について】

・2010年に発表されたシステムレビューでは、様々な方式のマッサージについて行われた6つの小規模臨床試験のデータを検討している。その結果として、マッサージは線維筋痛症に対し穏やかな/短期間の効果があるとしている。しかしながら同時に、全ての実験について、その方法に問題があるともしている。なので、線維筋痛症に対しマッサージが安全かつ有効な治療方法であるかどうかを判断するには、よりきちんとした臨床試験が必要であると結論付けている。

【安全性について】

・専門教育を受けた/経験の長い施術者が行う限り、マッサージは危険性が少ないとされている。しかしながら、特定の健康状態の人に対しては注意が必要である。

(3)鍼

【有効性について】


・2013年に発表されたコクランレビューでは、線維筋痛症に対する鍼治療の効果について、9つの臨床試験結果を纏めている。その結果、何も治療をしない/標準的な治療を行う場合に比べ、鍼治療によって痛みの緩和/筋緊張の緩和については穏やかな改善が見られるとしている。一方、疲労感/睡眠障害については、対照群(偽薬ならぬ偽鍼治療)と効果が余り変わらないとしている。但し、実験規模の小ささ/鍼治療の不均質性を理由に、それらの結果を強力に支持することは難しいともしている。

・2010年に発表されたシステムレビューでは、線維筋痛症に対する鍼治療の効果について調べた7つのランダム化臨床試験(被験者数:385名)のデータをまとめている。その結果、鍼治療には限定的な鎮痛効果があると報告している。しかしここでも、上記の効果は対照群(同じく偽鍼治療)と明確に区別することは出来ないとしている。そして、線維筋痛症に対する治療方法として鍼治療は推奨出来ないと結論付けている。

【安全性について】

・一般的に鍼治療は、経験の長い施術者が殺菌済みの鍼を用いて施術を行う限りは安全であると考えられている。鍼治療に関する医療事故は殆ど報告されていない。

・鍼治療による重大な副作用は極めて稀であるが、感染症/器官の損傷が発生する例がある。

・鍼治療に伴う副作用は、痛みを伴う筋骨格系の疾患(線維筋痛症/変形性関節症等)に対して為される標準的な薬物療法(抗炎症剤の使用/ステロイド剤の注射等)に比べると少ない。
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