かなぶち鍼灸調体堂の「先ずは只管打歩」なほぼ毎日譚

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認知症/アルツハイマー病に対するサプリメントの効果

2013年12月18日 | 米国補完代替医療研究センター公開文書
…という題の、米国国立補完代替医療研究センターのニュースレターを日本語化しました。
結論を言ってしまえば、「科学的に効くと断言できるサプリメントは無い」です。

そう言えば、先日は「G8認知症サミット」ってのも開催されていたなぁ、と思いつつ。

ご参考になれば幸いです。

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認知機能/認知症/アルツハイマー病に対するサプリメントの効果について
米国国立補完代替医療センター、Dec. 2013


 物忘れがひどくなったかどうか不安に思うことが、アルツハイマー病の初期徴候であるのは広く知られている。特に高齢者はこの点を心配に思いがちである。そのような方から、サプリメントの服用について質問される機会も多いだろう。というのも現在、様々な商品が記憶の増強/脳機能の改善を謳って販売されているからである。

 本稿では、認知機能/認知症/アルツハイマー病を対象に研究が進められている幾つかのサプリメントについて、その科学的事実を紹介する。また、ここで紹介する以外のサプリメントについても、認知機能の低下/アルツハイマー病に対する効果の有無が調べられている。更に、音楽療法/心的イメージ療法といった心身療法は、認知症に関連する幾つかの兆候への対処法として有効であることが示されているが、それらがケア提供者の受けるストレスの軽減に有効かどうかも調査が進められている。

(1)イチョウ葉エキス(Ginko)


【研究結果】

・米国国立補完代替医療センターと国立加齢研究所が資金を提供し、その特徴が解っているイチョウ葉エキス製品(EGb-761)を対象に大規模な臨床試験(「記憶/学習に対するイチョウ葉エキスの評価」)が実施された。その方法は、

被験者               :75歳以上のボランティア3,000名以上
摂取したイチョウ葉エキスの量:240mg/日
追跡調査期間          :平均で約6年間

であった。
 その結果、EGb-761は高齢者の認知症/アルツハイマー病の兆候を改善する効果は見られなかった。また、試験結果を精査した所、イチョウ葉エキスは認知機能の低下/血圧の低下/高血圧の改善などに対し有効ではなかった。

・国立加齢研究所が資金提供した小規模の試験で、記憶の増強に対するイチョウ葉エキスの効果が調べられた。その方法は、
被験者 :60歳以上の健常者200名
イチョウ葉エキスの摂取期間 :6週間
であった。
 その結果、記憶力の増強効果は認められなかった。

【安全性】

・イチョウ葉エキスの副作用としては、頭痛/吐き気/胃腸機能の不調/下痢/倦怠感/アレルギー反応の皮膚への表出等が挙げられる。また、より重篤なアレルギー反応も報告されている。

・イチョウ葉エキスが出血傾向を促進する可能性があるというデータも報告されている。なので、抗凝固剤を服用している人/出血障害を有する人/手術・歯科治療を受ける予定がある人などは、イチョウ葉エキスを服用する際は事前にかかりつけ医に相談することが望ましい。

・生の銀杏(イチョウの種子)は「イチョウ毒(”ginkgotoxin”)」という物質を大量に含有している。このイチョウ毒は、時として重篤な副作用を惹き起こす可能性がある。また、焼いたものも安全とは言い切れない。標準的なイチョウ葉抽出物から製造されたサプリメントにはこのイチョウ毒は殆ど含まれていないので、適量を経口摂取する分には問題無いと思われる。

(2)ω-3脂肪酸

【研究結果】

・現時点では、魚油のサプリメントがアルツハイマー病の治療に有効かどうか結論付けるだけの研究結果は得られていない。

【安全性】

・適量摂取を守っている限り、ω-3脂肪酸は成人にとって安全である。米国食品医薬品局(FDA)は魚油を原材料としたω-3サプリメントについて「一般的に安全であると認められる」と結論づけている。

・幾つかの種の魚から高濃度の水銀/殺菌剤/PCBが検出されたことを理由に、魚油を原材料としたサプリメントの安全性に対し疑問を呈する意見も見られる。しかしながら、魚油を原材料としたサプリメントからこれらの物質は検出されていない。

・魚油を原材料としたサプリメントを摂取した場合、軽度の胃腸の不調/下痢/胸焼け/消化不良/腹部膨満感が発生する可能性はある。

・魚油を大量に摂取した場合、特定の医薬品(抗凝血剤/高血圧治療薬など)と相互に反応する可能性がある。

(3)ビタミンB群

【研究結果】

・50歳以上の成人を対象とした短期間の臨床試験では、ビタミンB群の摂取で認知機能が改善するという結果は見られなかった。なお、この試験で調査対象となったのはビタミンB12/B6/葉酸であった。

【安全性】

・ビタミンB群の過剰摂取は健康上に何らかの問題を惹き起こす。更に、ビタミンB6は特定の医薬品と反応する。例えば、抗生物質シクロセリン(”cycloserine”)や 抗けいれん薬等は血中ビタミンB6濃度を下げる効果がある。また、ビタミンB12はメトホルミン/プロトンポンプ阻害薬/抗生物質クロラムフェニコール/H2受容体拮抗剤等と反応する可能性がある。

(4)朝鮮人参

【研究結果】

・朝鮮人参の効果/効能を決定的に支持する研究結果は無い

【安全性】

・推奨量を短期間摂取する分については、朝鮮人参は安全である。ただ、長期間摂取した場合については、副作用が発生する可能性が複数の研究結果で報告されている。

・朝鮮人参の服用により、血糖値が下がる可能性が示唆されている。これは糖尿病患者においてやや顕著である。従って、糖尿病患者が朝鮮人参を服用する際(特に血糖値を下げる薬を服用している場合)には注意が必要である。

・朝鮮人参の服用による代表的な副作用は頭痛/睡眠障害/胃腸の不調などである。

・朝鮮人参はアレルギー反応を惹き起こす可能性がある。

・朝鮮人参の服用により、乳房の圧痛/生理不順/高血圧などが発生するという報告もある。ただ、それらの研究で用いられたサプリメント製品の成分は分析されていないので、真の原因は不明である。

(5)ビタミンE

【研究結果】

・2012年に発表されたコクランレビューによると、ビタミンEがアルツハイマー病/軽度の認知機能低下に対し何らかの効果/効能があると認めるに足る臨床試験結果は報告されていない。

【安全性】

・食品を通じビタミンEを摂取することによる副作用の発生は認められていない。しかしながら動物実験では、α-トコフェノールを大量に摂取した場合、大出血/血液の凝固阻害が発生する可能性が認められた。また試験管レベルの実験では、ビタミンEの大量投与によって血小板の凝集が阻害された。

・最近報告された、「セレンとビタミンEの抗癌作用について」という臨床試験の結果によると、ビタミンEの服用(400 IU/日)によって前立腺がんの発生率が増大する可能性が示唆された。なお、追試は現在継続中である。

・ビタミンEのサプリメントは基本的に、幾つかの医薬品(抗凝固剤/抗凝集剤/シンバスタチン/ナイアシン)や化学療法/放射線療法と拮抗する可能性がある。

(6)ブドウ種子抽出物


【研究結果】

・ブドウ種子抽出物が認知機能低下/アルツハイマー病の予防/治療に有効かどうか結論付けるだけの科学的証拠は得られていない。

【安全性】

・経口摂取する限り、ブドウ種子抽出物は一般的に安全である。臨床試験の結果からは、8週間迄の服用は安全と認められる。

・これまで報告されている副作用としては、頭皮の乾燥・痒み/倦怠感/頭痛/高血圧/蕁麻疹/消化不良/吐き気等がある。

・ブドウ種子抽出物と他の医薬品/サプリメントとの相互作用については余り調べられていない。

(7)クルクミン


【研究結果】

・アルツハイマー病に対するクルクミンの効果/効能は立証されていない。

【安全性】

・クルクミンは、成人が服用する分には安全であると考えられている。但し、大量服用または長期間の服用により、消化不良/吐き気/下痢が発生する可能性が指摘されている。

・動物実験では、クルクミンを極めて大量に服用した場合、肝臓障害が発生することが確認された。人間については、クルクミンの服用による肝臓障害例は報告されていない。

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