goo blog サービス終了のお知らせ 

ぼやきぼやかれ、ふりふられ。

映画や本や神社や展覧会。あとは日々のつれづれです。

芸術は人を癒す

2014-09-24 00:19:31 | 絵画・芸術・展覧会
「芸術は人を癒す」
って、語ったのは誰だったっけ?
ここ数日ぼんやりと考えていた答えを、ふと思い出した。

ルイス・ドメネク・イ・モンタネール

スペインを代表する建築家。

スペイン、バルセロナ、というと日本で有名なのは、アントニ・ガウディだけれど、当時ライバルと呼ばれたモンタネール(実際当時は、モンタネールの方が人気も知名度も上だったようですが…)の建築がまた、すばらしい。

バルセロナにある彼の建築した病院。
サンパウ病院。

ガウディの代表作、サグラダ・ファミリアから歩いてすぐのところにある病院。もちろん、現在も病院としてきちんと機能している。

「芸術は人を癒す」
まさにその思いをぶつけたかのような、建物。
病院とは思えないくらいの、芸術的空間。

私がかつて訪れたときは(病気ではなく観光で、だけれど)
少しも傷んでないカラダと
少しも傷んでないココロでしたが、
ほんの少しだけ溜まった疲れを癒して余りある感動だった。
待ち時間さえ幸せに感じるような、空間。
「癒す」という言葉は、まんざらでもなく、ゆっくりゆったりとした時間で満ちる。

くしくも、ライバルと詠われたガウディが、路面電車にひかれた時に運ばれたのはこのサンパウ病院。
身なりに気を使わなかった彼は浮浪者と間違われ、十分な治療を受けないままこの病院で亡くなったそうです。

「芸術は人を癒す」
あっけなくこの世を去った天才ガウディ。癒えることのない傷でひっそりと息絶えてゆく彼の心は、最期にすこしは癒されたのかしら?

モンタネールの芸術。
それはまさに人を癒す。
少なくとも、私の心を、癒す。

草間彌生 [水上の蛍] で感動。感動。

2014-09-08 00:19:00 | 絵画・芸術・展覧会
先日行った静岡県立美術館にて、同時開催していた収蔵品展。
[水辺のアート]
水をモチーフに取り入れた作品展ですが、これに乗じて、

草間彌生さんのインスタレーション作品

[水上の蛍]

が展示されていました。

これはラッキー。
展覧会HPなどでも特に取り上げられてなかったので、全く知らなかったのですが、このタイミングで体験できるとはヽ(´▽`)/
(展示作品一覧にはひっそりと載っていました)

[水上の蛍]
わからない方のために、2008年、静岡県立美術館に収蔵された当時の展覧会のリンク貼っておきます。
展覧会 2008年度 収蔵品展 特集 草間彌生 ≪水上の蛍≫ 静岡県立美術館|Shizuoka Prefectural Museum of Art

現在も巡回中の草間彌生さんの
【永遠の永遠の永遠】
こちらで展示されている
[魂の灯]
と同じシリーズの、光と水と鏡によるインスタレーション作品。

4×4×3メートル四方の一面鏡貼りの部屋。足元は鑑賞者の立つスペース(1×2メートル程の通路)を除き、水がはられていて、継ぎ目のない水鏡となっています。

[永遠の永遠の永遠] で[魂の灯]を観たときはさすがに長蛇の列で、狭い空間に10人づつくらいがひしめき合いながらの鑑賞でしたが(時間ごとの入れかえ制で体験する作品なんで)
この日は、平日のお昼時ということもあって(美術館自体も空いていたのですが) すんなりと
しかも…
たったひとりで草間ワールドを独占するという贅沢を味わいました(>ω<)/。

学芸員さんの指示で中に入ると外からそっと扉が閉められ、中は完全な闇。
その闇の中、天井から吊るされた無数の電球から放たれる小さな光が、鏡にうつり、どこまでもどこまでも無限の彼方まで続いてゆくのです。そしてその中にはもちろん、何人にも何人にも連なった私自身も映っていて、まるで時間さえ止まった異空間をさ迷うような感覚。

[魂の灯]では無限のLEDが使われていますが、[水上の蛍]ではまだ(こちらの方が古い作品なので)電球が使われているので、そのぶん柔らかくて暖かみのある光の共演となっています。

[魂の灯]が、宇宙をさ迷う光なら

[水上の蛍]は、タイトルの通り、さざ波ひとつない真っ暗な湖上を蛍と共に浮遊している感じ。

学芸員さんに「気をつけくださいね」…と言われた水床に足を踏み出したくなる衝動を、ぐーっとこらえながらユラユラした灯を見つめる時間でした。

「お疲れさま」
と外からそっと扉を開けられ、鑑賞は終了。

おそらく1分程の時間だと思うのですが…
時間の感覚もわからないような異次元の心地よさは
永遠のようでもあり、
一瞬のようでもありました。

この感動や感覚は、写真や映像ではきっと全然伝わらないと思います。
ましてや、わたしの駄文では尚更…(。-∀-)

今回、静岡県立美術館での展示は昨日で終了ですが、2~3年に一度は展示されるようなので、機会がある方は是非、実物を体験して欲しいですね。

【永遠の永遠の永遠】巡回展はまだ続いてるはずなので、そちらで[魂の灯]を鑑賞するのも良いと思います。(混んでるとは思いますが…)

余談ですが、あまりの感動に
カフェで休んだあと再びひとりで2度目の鑑賞をしちゃいました。

感動。感動。でした。

絵画の力を感じる。―アニマルワールド―美術のなかのどうぶつたち―展(静岡県立美術館)に行ってきました。

2014-09-06 23:23:00 | 絵画・芸術・展覧会

静岡県立美術館にて開催中の
【アニマルワールド―美術のなかのどうぶつたち―】
展に行ってきました。

そういえば動物って、当たり前に身近な存在だけれど…絵画の世界ではいろんなカタチで登場するよなぁ…。宗教的とか文化的とかでも。

そんな多様な背景に注目しつつ、江戸時代の作品を中心に一堂に展示した作品展みたいです。


正直、古い時代のいわゆる日本画と呼ばれるもの…まったく造詣のない私ですが(  ̄▽ ̄)
伊藤若冲の作品、特に[樹花鳥獣図屏風] をこの目で見てみたい!! と、思い足を運びました。[樹花鳥獣図屏風]は県立美術館所蔵で6曲1双の大きな作品。美術館のホームページやポイントカードにも使われています。

画面全体に方眼を整え、そのひとつひとつを塗りつぶしてゆく特異な技法。細やかな作業と鮮やかな彩色が強く印象に残ります。
モザイクのようであり、点描画法のようであり、そのどちらとも違う描き方。また、写実とは程遠い単純なラインで描かれた動物たちにとてつもない生命力と躍動感を感じるのも不思議でした。

この緻密で繊細な作業の証はやはり実物を見なくちゃ伝わらないなぁ…(*´∇`*) なんて思いつつ…その他の作品も堪能。

狩野派の作品や円山応挙など、私でも知っている作者の物も多く、わかりやすい解説も書かれているので 、十分楽しめました。

そういえば
窪田雪鷹 の [駱駝図](1823・文政6年)
という作品があって
表題の通りラクダの絵なんですが、その賛は、見せ物となるラクダを憐れむものでした。
(※賛っていうのは、絵の作者とは別の人物が作品に寄せたコメントで、絵の中に描きこまれ、これも合わせてひとつの作品とみなす文章です。)

1823年、江戸の後期。この頃から見せ物としての動物(動物園など)の歴史が始まってきたのですかね。

余談ですが最初に象を輸入したのは8代将軍、吉宗らしいですよ。鎖国中とはいえ、私たちが思ってる以上に様々な貿易がされていたんですよね。
…ん( -_・)? てことは、若冲のゾウの生き生きとした様は、実物を見て描いたのかな?
それとも、やはり仏教の資料とかを参考に描いたのかな?
そういえば、虎の画は、猫を参考にしていた…なんて話も聞くし…(*´∇`*)

など、とりとめのない事にまで思いを巡らしながら、お気に入りの作品を、ソファに座りボーッと眺める時間が大好きなのです。

最近、例えあまり知らないジャンルでも、いろんなジャンルの展覧会に行くようにしているのは、こういった様々な思いの巡り合わせや、思わぬ発見があったりするからです。

絵画には、純粋にその技法や色彩を楽しむだけでなく、時代時代を映すカガミのような力があることを、改めてかんじる一日でした。

[ゲルニカ] 私たちの未来は。

2014-06-24 21:56:53 | 絵画・芸術・展覧会

ドラえもんで描かれた夢の未来にぐんと近づいた現在(いま)
それでも私たち人間は止むことなく争いを続けてる。

かつて巨匠が感じた未来は、
悲しみと怒りと恐怖に満ちた
色彩のない日常だった。

それは、兵士の姿でも、銃や爆弾、戦車でもなく、ただ成すすべなく立ちつくす人々の姿。

そこにこそ
戦争のおそろしさや悲しみがみえる。
真の姿がある。

ゲルニカが描かれて約80年。
それでも私たち人間は止むことなく争いを続けてる。

私たちのこれからは、
どこへ向かう?
ドラえもんの未来?
ピカソの未来?

『巨匠の眼 川端康成と東山魁夷』展に行って来ました。

2014-05-29 14:11:00 | 絵画・芸術・展覧会


空き時間を利用して静岡市美術館で開催中の『巨匠の眼 川端康成と東山魁夷』展に行ってきました。
「巨匠の眼 川端康成と東山魁夷」|静岡市美術館

平日の昼時でしたが、開期終了間近ということもあってかとても賑わっており、そのうえ、課外授業の中学生のグループに出くわす…というアンラッキー(T^T)でしたが、あまり時間もなかった為、くじけず観て廻ることに(笑)

深い親交があったという二人の交流に焦点をあてながら、川端と東山の収集した作品および東山作品200点余を集めたこの作品展は、
川端や東山自身の言葉や、お互いへの言葉なども合わせて紹介されていて、二人の眼を通して作品を観る!!という楽しさも味わえるつくりに♪ヽ(´▽`)/


4つのセクションに分けられた展示はまず…
「第一章 文豪・川端康成」
と題された、川端自身の自画像でスタート。
文化勲章やノーベル賞メダル、墨書や当時の書斎の再現~と、まさに文豪としての川端が伝わるような展示。

「秋の野に」と題された屏風は、川端がノーベル賞受賞の夜につくった句を書にして東山に贈ったところ、東山が屏風に仕立て、裏に画を描いたものなんですって。金色に輝く夕映えの草原がとても美しい画でした。


展示は
「第二章 川端康成の眼」
へ。
そのコレクションの多岐にわたること三( ゜∀゜)土偶に始まり、漆塗り、ガラス、日本画、西洋画…と、独自の視点での収集がとても興味深かった。
目玉はやはり、国宝【十便十宜画冊】(池大雅「十便宜」・与謝蕪村「十宜図」)なのかな?
一茶の墨画や、渡辺華山、岸田劉生…などなど。

「おぉ…!」と思わずため息がでるような作品の数々にあって、ひと際私の眼をひいたのは
[雑草] [不知火]と題された2つの水彩画。草間彌生、無名時代の作品は、現在のようなエネルギーは全くなく、むしろ静と冷をかんじるモノ。これを見染め購入していた川端の眼にも感服です!


つづく
[第3章 川端文学世界]
では、タイトルの通り川端文学に関連した作品群が並びます。

芹沢けい介による装幀、
ふたりの出会いともなった東山による装幀や挿し絵とその原画…

川端康成の交友の広さが伺える書簡の数々。(谷崎潤一郎、菊池寛、安吾…などなど!!)
とりわけ、興味深かったのは、太宰治からの1936年の書簡。
「晩年」において、芥川賞を自らに与えてくれるよう懇願したその手紙は、4~5Mはあろうかと思われる長いながい書簡。

「死なずに生きとほして来たことだけでもほめてください…」
独特の筆跡と文体で、その人となりがうかがえるものでした。


そして
[第4章 東山魁夷の眼]
紀元前ギリシャのブロンズ、中国の陶器、香炉、日本画…と、こちらも様々なコレクションが並び、
つづいて
若い時代の東山のスケッチ~晩年の風景まで、色彩豊かな作品がずらりと並びます。

実は、東山魁夷の作品をちゃんと観るのは初めて。「あの、風景画の人ね…」くらいの知識しかなかったことが逆に良かったのか、余計なことを考えずただただ彼の世界に浸ることができました。

冬の景色(雪や氷)も、秋の枯れはじめた山も、青々と繁る夏も…透き通るような色彩で、温かくさわやかに、そして強ささえ感じられる。冬の景色でさえ温かさと柔らかさが伝わるような景色。
それはピカソの[ゲルニカ]や、ゴッホの[ひまわり]に感じるうち震えるような感動ではなく、静かに打ち寄せるさざ波のような…ゆったりとしておだやかな感動でした。

[北山初雪]
川端コレクションの作品ですが、
独特の造形美と、空気感まで伝わるような色彩は、いつまででも眺めていられる大作でした。


急がしく観てまわりましたが、
絵画と共に読書も好きな私にとっては、とても満足のいく作品展でした。
東山作品の魅力をもっとじょうずに伝えられたら…とも思いましたが、なかなか言葉では説明できない画家や作品ってものがあるのです…と久しぶりに感じました♪ヽ(´▽`)/


「私は生かされている
野の草と同じである。
路傍の小石とも同じである。
生かされているという宿命のなかで
せいいっぱい生きたいと思う。」
―東山魁夷―