新潟市の小学校での「菌」問題を思う

新潟市の小学校での「菌」問題が大きく報道されています。保護者は「そんないじめがあったなんて」と口々に言っています。でも、場面が違えば、結構同じようなことを、大人がしているのです。私は実際に、場面が違いますが、いじめの現場にいました。これがこのブログを10年も書き続けた大きな理由です。

読み聞かせボランティア講座などでは、おはなし会の本を選ぶ時に「みんなで話し合う」ことがいいと当たり前のように言われることがあったはずです。今もボランティア交流会で「みんなで話し合って」という方々は多いです。そういうやり方を全否定する訳ではありませんが、私にはこれがかなり危ない方法だと思えてならないのです。理由は、「みんなで話し合って」の次に来る言葉は「決める」と皆さんおっしゃいますが、現実には「悪いところを見つけて排除する」からです。

たいてい、団体にはベテランと新人がいて、ベテランの中でもちょっと声の大きい(いろんな意味で)人がいるのです。
たくさん講座(ステップアップ)を受けたとか、たくさん絵本を知っているとか、それはそれでいいのですが、どうしてもその人が何か主導権を握って新人がそれに従うという構図ができてしまいます。おまけに図書館が「ノウハウをベテランから新人に伝えましょう」というようなことを指導したりする。特定の見方や切り口が、新人に絶対的な見方として教育されてしまうことが多いのです。

 そういう上下関係のある現場では、みんなで話し合った結果、本の悪いところを指摘して、何だかお勉強したような気分になることがあります。けれどそれは実は「悪い」のでなく、違う切り口で見ると面白さでもあるのです。けれど集団催眠のようになって、それになかなか気づかない。いつの間にか「悪いこと探し」に快感を覚えるようになる。そして、そういった本を提案する人を、みんなが「変な本を持ってくる人」と思うようになります。私などは「紙芝居やってるから見方が変なんでしょ」などといわれました。そのうち「変な本だけ避けて」と、何の違和感もなく口に出して言うようになります。ボランティア交流会でも耳にしたことがありました。いじめる方も病んでいるということですね。

 私は、実はそれは表現差別だと思うのです。差別はいじめにつながるのです。「あの子は変な子だから付き合わないようにね」と言っている親と同じようなものです。「紙芝居やってるから」は「福島から来たから」と同じようなスタンスで語られる言葉だと感じています。こんなことは新潟だけであってほしいのですが。

 そういった問題をクリアするために、絵本の表現構造で考えるといいと、私はずっと提唱しています。「えほんのせかいこどものせかい」という入門書で「どろんこハリー」を紹介し、一直線に物語が進んでいく、そういうのが読み聞かせにいいのだと教えますが、そういう本は「構造」と言います。それ以外は、別に悪い本ではなく「点構造」「ポリフォニー構造」です。それぞれが違う特徴を持っています。
 プログラムのつくり方もそうです。季節の始まりから時系列に沿って、というやり方は「線構造」的なプログラミングです。それ以外に、アトランダムに本を並べるというのは「点構造」「ポリフォニー構造」です。つくり方が違うのです。図書館は、まだ、そのことを新人に教えようという気がない様子です。
 昔は「絵本の表現構造」などわかっていなくて、仕方のないことだったかもしれませんが、2014年ころには「絵本の事典」が出版されて、今の研究が誰でもわかるようになってきました。今や 自分と違う意見や見方をする人を排除するような、そんなボランティアはかなり恥ずかしいはず。そんな人間を育てる教育は、あってはなりません。

 もう一つ、絵の問題です。漫画的な絵はだめだと、ボランティア自身がそういう感覚になることがあります。でも、今を生きる子どもを見てください。まず、子どもは線画で書き始めます。だから、線画は子ども自身が持つ文化なのです。子どもの目線に立って、ということが大切ならば、線画(漫画)も差別の対象にしてはなりません。

 確かに、本で子どもの心を育てたい、と思う向きもあるでしょう。人間の本能として「良いもの」に向かうこともあるでしょう。そうであればなおのこと、「人それぞれ 良いものは違ってあたりまえだ」という平和主義に向かって本を利用し、子どもの心を育てたらどうでしょうか。表現差別を辞めることが良いものに向かうことになると私は思うのです。
 
 



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