絵本の表現構造

『絵本の事典』中川素子・吉田新一・石井光恵・佐藤博一/編集(朝倉書店)を借りているところです。
事典と聞いてちょっと腰が引けていましたが、なんとか読んでいる最中です。お目当ては「絵本の表現構造」でした。これを先に読んで自分なりに表にまとめてみました。間違っているかもしれないけど、表にすると比べて見易いです。作品例は、日本で出版されていないと思われるものは入れませんでした。これから色々な絵本を、このジャンルわけの中に入れて楽しみたいと思っています。
紙芝居と関係ないじゃないかと思われるかも知れませんが、絵本も紙芝居も絵語りであり、物語や自分の構想を絵にする時は、同じように、しかも無意識にいろんな構造を選択するのだということはわかります。普通の民話紙芝居は線構造ですし、クイズ紙芝居は点構造で、例えば3択ものだとA-BCDの並列型を自然に選択していました。

もう一つ、自分の強い思いがあります。それは「プログラムを作る」というスキルです。これはあとで別に書かせてもらいますが、今まで「作品に格差をつけて(主たるもの・従たるもの)、主たるものが引き立つように並べるのだ」、とか、「時系列に逆らわないように並べるのだ」と習い、それと違うようにすると「勉強しない困ったボランティア」と言われたからです。
 前者は「線構造」、そういうやり方をせずに、あらゆるものを対等に個性をそのまま認め、あいまいなことを楽しむような並べ方は点構造のうちのポリフォニー構造だ、ということがわかりました。だからまるで、五味太郎や長新太に向かって「勉強しない困った作家」と言っているような、今の指導方法をなんとか見直して欲しいと思うからです。
 私は、図書館が盛んに「ステップアップ」をボランティアに強いるのにも反対意見を持っています。プログラムを作ることによって人間に主従をつける感覚をもたせ、階段式に人間を差別するステップアップよりも、それぞれが学んで行った結果として能力が増える「スキルアップ」に転換して欲しいとの思いです。それぞれが個性を発揮し、響きあう、ポリフォニー構造のおはなし会が、子どもに受け入れられやすく民主主義に向かう道ではないかと思えるのです。

フォントを小さくしても右側が切れてしまうので同じサイズで出します。

絵本の表現構造 『絵本の事典』中川素子他/編 (朝倉書店)2011より

構造名

内容

バリエーション

作品例

 

構造

 

線(直線)

構造

 

 

 

時間の流れや心情の変化を長く連続する線として捉える。主に時間軸に沿ったもの

単一線構造

分解線構造(軸が途中で入れ替わる)

複数線構造(複数登場し軸を辿る)

複数線中央集結構造

『はなをくんくん』、『どんどんどんどん』

 

 

展開構造

同上。主に空間軸に沿ったもの

横軸縦軸展開構造

奥行軸展開構造

絵巻絵本、蛇腹本

トレーシングペーパー使い

円環構造

同上。始まりと終わりを見出せない無限のループを描く

『あかいふうせん』『木のうた』

 

構造

 

 

点の

並列構造

 

登場人物などが時間を辿るものとしてでなく、そこに存在する点として描かれる。

事物を並列して挙げる

AAAA並列
ABAB並列

ABCD並列

認識絵本に多い。『鳥の巣いろいろ』『わたし』『たねのずかん』

点の

集合構造

絵本の1ページ1ページが一つの事物を表し、それらが全て集まって大きな事物になる。

数少ない

対位法

構造

登場人物・事物などがそれぞれ独立し個性を発揮しながら一つの世界を現す。他分野で創作する立場からこの構造をとっている作品は多い。未決定性が面白さにつながる。

登場人物・事物などが2つ。A対B構造

 

内容対位法

 

『なみにきをつけてシャーリー』、

冊数対位法

『ぼくのすきなやりかた』『わたしのすきなやりかた』

ポリフォニー構造

登場人物・事物などが複数。ABCD独立混在

内容ポリフォニー

『ぼくがラーメンたべてるとき』

冊数ポリフォニー

干支セトラシリーズ

複数構造の組み合わせ

本それぞれが複数構造の組み合わせとして存在する場合もある。見る人の解釈によっても違った構造として考えられる。

 

※ 絵本に線構造が一番多く見られるのは、今までの物語や絵本が主に西洋を中心として生まれたためではないだろうか。時にキリスト教文化においては思考そのものが終末と救済という終点へ向かって限られた線分の中で線的な動きと収斂を見せるからではないかと思われる。

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