脚本『青山のきつね』

手作り紙芝居 『青山のきつね』
脚本 

むかし、新潟の青山に、きつねの五平が住んでいたって。
今日もいい天気でうつらうつら、五平が昼寝をしていると、
《 半分抜く 》シャーッ
「おや、雨かあ」

②  
「あっ、おしっこだ。こら、だれだ・・・とうべえだな」
「いや、こりゃ すまんかったな」
近くの村のとうべえさんのおしっこが五平にかかっちゃったんだと。
五平はじろりと とうべえをにらむと、ずっと先のほうへ行って、

③     
「よーし、みてみろ。こうやって、と」
石の地蔵を背負い、オオバコの草をつかんで、
「コンココ、コンコ、コンパッ・・・

④     
「・・パッ」
あかちゃんを背負った女の人に変身して、すたすたあるきだしたんだと。
「こいつ、化けたな」
とうべえさんは木の陰からそっと見ています。
ところが そんなこと、五平はお見通し。
「よし、よし、とうべえのやつ、ついてくるぞ。」
そうして、とある、一軒の家に入っていきました。

⑤            
「いまきたよ」
「おお、ようきた、ようきた。子どもも大きくなって」
中から、家の人の声が聞こえてきます。
さあて、とうべえさんは おおあわて。

⑥                
「もし、皆の衆。この女はきつねですぞ。だまされちゃあなりませんぞ。
こら、おまえはさっきの狐だろ。とんでもないやつだ。さあ、しっぽだせ」
とうべえさんは 家の人たちと一緒に、女の人をしばって、いろりの煙をあてました。
「こん、こん、こん。 く、くるしい」
女の人は死んでしまいました。・・・・けれど さあたいへん、しっぽなんかでません。
「変だなあ」

⑦                          
「こらあ、うちの大事な娘をどうしてくれる。」
家の人たちはかんかんにおこって、とうべえさんをお役所へつきだしました。
「ひえっ、かんべんしてくれ。うーん」
とうべえさんは 裁きにあって死んじゃったんだって。
《 抜きながら 》
さあて、それからどれくらいたったか、とうべえさんのたましいが ふわふわとさまよっています。

⑧        
「ここはどこだあ」
きれいな ハスが咲く池につきました。
ゴーン
お寺の鐘の音も聞こえてきて、夢見心地のとうべえさん。
「きっと、ばちがあたって あの世に来てしまったんだなあ。お釈迦様はどこかなあ。ハスの上に乗れば極楽にいけるか。さあて、どれにのろうか。あ、あれにしよう。」
とうべえさん、ひとつ足をふみだして、ハスの葉のうえにのろうとした、そのとたん。

⑨        
バッチャン
「ひえ、つめてえ。極楽の池はつめてえな。たすけてくれ。死んじまうよお。や、もう死んでたか。
・・・おや、なにか騒がしいぞ」
よくみると、周りに大勢の人が取り囲んでいます。
「おーい。そんなとこでなにしてんだあ。あっはっは」
「さては、おまえ、狐にだまされたな。ここは ごくらくじゃなくて、寺町の池だぞう。」
「あーっ、あの狐のせいだな。おれは生きていたのか」

⑩         
そのころ、青山では 五平狐が、
「さあて、家に帰るとするか。今日はおもしろかったな、こーん、こん、こーん こん」
赤い鳥居がならぶ青山稲荷にかえっていきましたとさ。       どっとはれ
 参考文献      『北越奇談』野島出版・ 『新潟古老雑話』雪書房・『新潟県伝説集成・下越編』恒文社・ 『新潟市の伝説』新潟市  
制作   平成18年10月   脚本・絵 / 石倉恵子・佐藤義二
                   / 新潟かみしばいクラブ
                  脚本は語りやすいように変えて結構です。
              彩色   /

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