脚本 『ちあき物語』

コマ割のところまでやりました。方言や細かい変更、その後の絵の作成は、ちあきの会の方々にやっていただきます。千秋の業績を残したいという趣旨ですので、説明文を多めに作りました。
作曲者については、いろいろな経緯があるようですが、アイデアが浮かぶときを「天使がおりる」などといいます。ですので、誰かのところに天女がきたのだなーという物語で楽しんでいただけたらと思います。

ひつじぐさ物語

1 90年ほど昔の話。新津の町に 花や歌の大好きな千秋という青年がいました。千秋は毎日、自分で育てた花を眺めながら暮らしておりました。
ある日のことです。
(ぬきながら)
「今年もよく咲いたなあ、なんてきれいなんだろう。おや、何か聞こえてくるぞ。」
庭の池にさく睡蓮を眺めていた千秋の耳に、心地よい声が聞こえてきました。

2 ♪ひつじぐさ・・歌う
(歌い終わったら3場面の千秋が見える半分までぬいて止める)
「おんや、どこのもんがうたってんだろね?」
千秋が声のするほうを見ると、

3  天女が一人、池に咲く睡蓮のそばで歌っていました。
「今のがん、教えてくんなせや」
千秋が頼むと、天女は何度も歌っておしえてくれました。そしてこう言ったのです。
「この歌は、花を愛する人にだけ 教えるのですよ」そういうなり、

4 天女は姿を消してしまいました。千秋はその後、いつもその歌を口ずさむようになりました。そしてまるで天女に教えられたかのように、美しい絵や歌を次々と作っていくようになったのです。

5 そんなある日、一人の男がやってきました。
「町の噂では、なんとも素晴らしい歌だそうだな。それを教えてくれ。」
千秋は教えてやり、庭に咲く花を一本渡して言いました。
「この花も、もらってくれるか」
ところが、

6 その帰り道、
「こんげな花なんか、なじょもなんね」男は花を投げ捨てました。

7 そのとたん、
「おっここ、どーしょば、歌わんねねっか」
歌をわすれてしまったのです。

8 次の日、一人の女がやってきて言いました。
「とても美しい歌を知っているそうですね。この美しい花は私にぴったりだと思いますよ。ぜひ、おしえてくださいな。」
千秋はその歌をおしえてやり、庭に咲く花を一本渡しました。女は歌を覚えての帰り道。
9 「こんげもんよか、もっと別のもんがこっても良いのに」
 花を投げ捨てました。そのとたん、

10 「・・・あれ、歌わんねねっかね」
歌をわすれてしまったのです。

11 そしたある日、旅人がやってきて、千秋にいいました。
「私は遠い 滋賀の国から来たものです。船をこぐ男たちが皆、疲れ果てて動けないでいます。
歌で元気づけたいので、その歌を教えてください。かわりにこのひつじ草という真っ白な花をさしあげましょう。」「どうぞ聞いてください。皆さんの力になるのなら。その花、ありがたくいただいておきましょう。大切にそだてます。」
千秋はひつじ草を受け取り、快く歌を教えてやりました。旅人は何度もお礼をいい、西に向って帰っていきました。そして、
(抜きながら)
その旅人は、滋賀の琵琶湖のほとりにその歌を持ち帰りました。舟をこぐ男たちはたちまち元気を取り戻し、その歌はまたたくまに若者に広がり、こんな言葉で歌われました。

12 ♪ 琵琶湖周航のうた

13 冬の寒いある日のことです。かの天女があらわれてこう言いました。
「とても良いことをしましたね。わたしはあまつの国からの使者です。あまつの国は遠い遠いところにあります。あなたをお迎えに参りました。私と一緒に行きましょう。」

14 千秋と天女は手を取り合い、青く澄み切った冬の空高く昇っていきました。その後、千秋の姿を見た人はだれもいなかった、ということです。

15 ひつじ草の花咲く夏の日。花たちはおしゃべりをしています。
「千秋さんは今どこにいるのかな。たくさん絵や歌を作ったそうだけど、人間たちはおぼえているのかな。特にあの歌は、何年か前に、歌手がうたってみんなが知るようになったよね。」
「え、ぼくは知らないよ」
「大丈夫だよ、君はまだつぼみだから、これからゆっくり覚えればいいよ。いつも花が開くときに歌い、夕方には、忘れないように花びらを閉じているのだからね。」
こうして、ひつじ草は昼にだけひらく花として、新津の町にいつまでも咲き続け、これからも町の人たちを楽しませることでしょう。また、新津と琵琶湖のほとりでは、人々がその歌を歌っていつまでも幸せに暮らしたということです。




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