歩いて図書館に行ったんだ

「歩いていったんだ」
「えっ、ここからですか」

ずいぶん前に高齢者の集まりに行ったときのこと。90歳くらいとおぼしき、おばあちゃまが、そう おっしゃった。
紙芝居は図書館から借りる、などと雑談をしていた。失礼ながら、とてもしっかりと無駄のない話し方をするおばあちゃまでした。50とか60歳位の人と話をしているような気分でした。
「日銀の・・、あたりに、図書館があって・・、まだ 娘のころ、行ったら、門番がいて、この田舎ものがというように、じろりと睨んで、こわかった・・」
「県立図書館だよ、昔、日銀のあたりにあったんだて」と、隣のおじいさん。
「朝早く出て、歩いてあそこまで行ったんだ」

「へえ、すごいですね。口演童話とか、してましたか?」
「コウエン?」
「うん、巌谷小波とか。おはなししてました?」
「巌谷小波?ああ、していた」
「へえ、男の人でした?女の人でした?」「男だった」
「紙芝居してました?」「いや」「幻灯してました?」「いや」
あれこれ、もっと尋ねたかったけれど、
「図書館に歩いて行った」「門番がこわかった」と何度か繰り返された。

遠い記憶の中で、その当時の憧れが明るく光っているといった様子でした。

さっき、県立図書館で検索していて、寄居町の文字を見て思い出しました。訪問時のことをブログに書くのはいけないんだろうかと思いながらも、その方の人生の光のようなものを、少しだけ残しておこうと思います。
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