上小田井ステーション マンション長期修繕委員会

長期修繕委員長日記 管理員室電話FAX:052-505-8998

◆頼りは住民の自助努力◆<2004.12.15/毎日新聞掲載より>

2005-05-27 | マンション関連ニュース
マンションの耐震診断★マンションやアパートなどの共同住宅について、耐震診断など災害対策が進まない。自治体は、木造住宅を対象に耐震診断、補強工事に補助金制度を設けているが、マンションなど非木造住宅にはなく、住民の自助努力にゆだねられている。

阪神大震災では、被災後の建て替えを巡り訴訟が起こされるなど、いろいろなトラブルが起きた。教訓を生かすためにも事前に手を打つことが必要だ。マンションについて現状をみた。

★補助制度はなく

国の03年度住宅土地統計調査によると、愛知県の共同住宅は111万7800件で全住宅の約44%を占める。岐阜、三重両県は14万3300件、11万9800件で、それぞれ20%前後。圧倒的に数が多い愛知の共同住宅は98年度調査より14万件近く増えている。結婚した団塊ジュニア世代の住居確保の需要に対応したものだという。

しかし、非木造のマンション、アパートを対象とした耐震診断や耐震補強について、自治体の補助制度はほとんどない。「阪神大震災の例をみても、住宅被害は木造が大きな部分を占めている。マンションなど非木造住宅を意識していないわけではないが、まずは木造の改修を優先した」と愛知県建築指導課。岐阜県も同様だ。

★分譲合意形成難しく

三重県は今年度からマンションも含めた非木造等建築物の耐震診断補助制度を導入し、6月から鈴鹿市が最初に窓口を聞いた。81年の建築基準法改正以前の建物が対象で、延べ床面積500平方メートル以上40万円、以下で30万円を上限に耐震診断費用を補助する。要診断の対象建築物は五百数十件あり、同市防災安全課は「補強をして建物の被害が軽く、住める状態が維持できれば、復旧も早いし仮設住宅の建設も少なくて済む」と力説する。だが11月末現在、申請がない。

★費用負担大きく

「費用が大きく、住民の合意形成が難しい」と、全国2688管理組合で構成する全国マンション管理組合連合会(本部・京都市)の谷垣千秋事務局長(54)は、分譲マンションの問題点を指摘する。★耐震診断に修繕積立金を使えば通常の修繕が出来なくなり、結局臨時徴収となる。購入ローンが残っていれば二重支出となり負担は更に重くなる。個々の経済状態が絡むため、住民の合意形成も難しくなる。

★補強実施ならば区分所有法に基づき区分所有者の4分の3以上の同意が必要

という。谷垣事務局長は「マンション管理適正化法で、マンションは社会資本に位置づけられた。国は補助だけでなく低コストでできる工法開発を支援することが必要だ」と話す。

名古屋市では全住宅中60%が共同住宅で、人口が集中する都市部での比重は一層高い。1階が駐車場や店舗、事業所などがあり、壁が少ない構造のマンションの地震への弱さは、専門家が指摘済みのところだ。愛知県建築指導課は「今後どう対策を取るか、考えねばならないと思う」と話している。

築年数多いほど被害大阪神大震災
阪神大震災のマンション被害は、不動産情報会社「カンテイ」(東京都品川区)が神戸、西宮など8市で5261棟を調べている。致命的損傷を受けた「大破」83棟(全体の1.6%)、大規模な補強・補修を要する「中破」108棟(2.1%)、相当の補修を要する「小破」、353棟(6.7%)、「軽微か被害なし」4717棟(89.7%)で多くのマンションが大きな被害を免れたことが分かる。うち大破した83棟を建築年別にみると、70年まで31棟、71~80年42棟、81年以降10棟で、建築時期の古いマンションほど大きな被害を受けている。

被災マンションの建て替え、補修をめぐっては住民間の話し合いで結論が出ず10年近く持ち越していたり、訴訟に発展するなどの問題が起きた。また建設時より容積率が少なくなり、建て替えでは全区分所有者分の部屋の確保が難しくなったマンションもあった。

★補強工事は1年以上、保留
★低い住民の関心、費用もネック

住民合意が重要裾される分譲マンション。名古屋市港区のエスポア東海橋(名古屋市港区)管理組合=磯野孝雄代表理事(59)=は、03年に耐震診断を実施するなど、耐震対策を進めている。同管理組合の取り組みを紹介する。

エスポア東海橋は2棟(A棟15階、B棟9階)に207戸が入る。建物は81年9月に完成したが、設計は耐震基準の古い旧建築基準法に基づいている。

同組合は3年前がら避難訓練など防災対策に積極的に取り組んでおり、磯野さんらは「マンションの弱点を知っておくべきだ」と耐震診断を03年4月の管理組合総会に提案し、同マンションの建設業者に依頼。費用は診断に基づく補強対策案の提案も含め約300万円。修繕積立金から拠出する提案で、住民から反対はなかった。
結果は同年7月に出た。旧耐震基準に適合したが新耐震基準では、A棟が中間階、B棟が中~上層階の耐震性に「×」印がついた。対策案は、建物の側面に補強フレームを新設するもので1億2000万円かかる。
結果はすぐに全戸配布し、診断結果への感想、補強をどうするかアンケートを取った。回収率は30%で、回答者の4割強が「補強工事をすべきだ」と答えた。しかし、複数業者から補強プランを取る必要性や管理組合予算内での実行など意見も出た。回答率の低さに関心の薄さも見え、現在補強工事を組合議題にあげることを保留している。

保留の理由は他にもある。磯野さんは「費用が一番の難点」という。同マンションは現在60歳以上の住民が3割おり、5年もすれば半数に達する。補強工事の場合、臨時徴収する必要があるが、年収が減る住民にこれ以上の支出を求めるのは難しい。築20年を超えているだけにそのほかの修繕も多く、03年4月に修繕積立金も引き上げたばかりだ。住民間の合意形成はますます難しい。

だが手をこまねいていては住民の安全は確保できない。今春20年以上かけて47項目の修繕を計画し、その中でエレベーターを耐震化し、共用部に耐震保険(5年で掛け金約320万円)をかけた。後は補強工事をどう扱うか。磯野さんは「1年以上保留しているが、紀伊半島沖地震(9月)や新潟県中越地震で、意識が変わってきた。そろそろ特別委員会を設けて補強対策を考えてみたい」と話している。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿