亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

美月と亮 アラフォー編④

2017-07-31 14:54:33 | 美月と亮 アラフォー編(2009)
頭の中で亮を殴り始めた。

でも、三発目で吐き気がして挫けた。

亮はきっと殴り返さないから。

避けないだろうし。

痛そう、だし。

だって青あざ作って、口が切れたり
した顔で会社行けないし。


「あら。旦那さん
どうしちゃったの??」

なんてお隣の奥さんに言われたら。

どうすんのよ。





怒りが自然に収まった後は、
どっと不安が押し寄せる。

「若い子に、鼻の下伸ばして
付いてくんだなあ。」

「きっと。好みのトランジスタグラマー
なんだよね。」

「あたし。ぜんぜんわかんなかった。」

「そうだよね。こんな男みたいな女房じゃさあ。
やさしくしてあげてないし。」

「なんか。つらい。あいつ、どうして
何にもなかったようにできるんだろう。」

「何にもしなかったからって、
下心あったんでしょ。」

「直樹に止められなかったら。
どうなってたの。」

「もう。一緒に、居られないよ。」

あたしは自分をどこに置いとけば
いいかわかんなくなって
うちが自分の家じゃない気がしてきた。

「あれ?どうしたの。かあさん。」

「あ。渉。」

息子がダイニングに来るということは。

「あれ?もうこんな時間??」

「え?なんにもしてねえの??」

卓もやってきて
双子ブーイングが始まった。

「うえええええ!!ごめんって!
すぐ作るからアア!!」

「飯は死活問題だぞう!!」

なんだかうれしかった。

あたしはこいつらの母親なんだ。

一緒に居ることをまだ求められてる。

たとえ飯を出すか出さないかだとしても。





「ただいまあ。」

亮は10時頃帰ってきた。

いつもよか二時間くらい遅い。

「おかえり。」

「いやあ。今日は残業でさ。
飯食ってる暇もなかったんだよ。」

「…大変だったね。なんか食べる?」

あたしは愕然とした。

こんな肝心な時に自分が愛して
一緒になった旦那が何を考えているのか、
全くわからないのだ。

「さんきゅ。」

でも知ってるはずだ。

あたしが、もう知ってるって。

だからいつもみたいに目を見ない。

でもすごくまずい状況に直面してる
恐怖感や、覚悟は見て取れない。

あたしがなんて言うと思ってるのかな。

何にも言ってほしくない?

そうはいかないのもわかってるはず。

このままのほうが楽なのかな。

知らない振り。知られてない振り。

「美月。」

亮がやさしく声をかけてきた。

あんまりやさしくて、同時に
抱いてくれた肩に、手のぬくもりが
あったかくて。

ただ悲しかった。

自分がすごくちっぽけな
無力なものになって。

誰もあたしを見てくれない。

気づいてさえくれない。

そんな気持ちになった。

「ごめんよ。美月。」

自分からこんなに惨めになった
あたしを救い上げてくれるのは
もう亮しか居なかった。

「でも、信じて。なんにもなかった。」

「とおる。」

「俺も、寂しかったんだ。ごめんな。
なんかお前に男と認めて欲しかった。
いつまでも、女のお前を愛してる男として
認めて欲しかったんだ。」

「とおる…うう。」

あたしは亮に抱きついておいおい泣いた。

何十年ぶりか。もしかすると赤ちゃんの時
以来かもしれない。

「愛してる。美月。大好きだよ。」

「バカ。バカるー!いや。いやだよ。
どこにもいっちゃやだ!!」

「ああ。俺はどこにもいかないよ。
死ぬまでお前と一緒だ。」


いつもはふたつ敷くふとんを、
その夜はひとつだけにした。

抱き合って眠った自分たちを、
後から思い出せばいい年こいてなあ。
と恥ずかしくもなる。

でも亮が居ないと、もう生きていけない。

愛した人の心が離れるなんて
考えただけで生きているのが辛くなる。

その夜は何度もあいつを掻き抱いて
たぐりよせた。

「いっちゃいや。」

「誓うよ。離れない。」








「ゆうべはかわいかった。」

翌朝、起こしもしないのに
早く起きた亮。満足そうだった。

「やっぱり充実した夜が
夫婦円満の秘訣だよなあ!!」

「朝っぱらからヘンなこと
大声で言わないでよ!!」

ちょっと調子に乗せちゃったみたい。

後悔先に立たずとはこのことだろうか。

いってきますのチュウも
しっかりと口にされてしまったし。

しばらくは続きそうな予感だ。


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