亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

とにかくイチャイチャハロウィン小説版(92)

2018-04-16 13:08:23 | とにかくイチャイチャハロウィン小説版
「美月先生。お帰りなさい。」

学園長が笑顔で美月を迎えた。
産前の半年、産後の一年半の産休が明けて
美月が復職したのである。

「保育園、危うく入れなくなるところ
だったんですけど!」

のっけから美月はご立腹である。

美月は亮と結婚したときから、子どもができたら
産休を取ることと保育園を利用することで
働き続ける契約に調えたのである。

「ごめんね、双子だってことが伝わってなくてさ。」

「伝わってなくて、じゃなくて!
伝えてなくて、でしょっ?!」

美月がこんな些細な言い回しに
態度を尖らせるのには、深くはないが
重大なる事情があったのである。

有り体に言って学園長のミスである。
双子だといい忘れた。
事務のスタッフも男児一名の申請を
処理し審査し許可され備品を手配し
受け入れ体制整えたところで
「双子」という衝撃の事実が明らかになる。
それは産休が明けるひと月前に、美月が双子を連れて
学園に挨拶に訪れたことから発覚した。

これが一週間前であればアウトであっただろう。
野田先生も千手観音のようになってありとあらゆる
手を尽くしてくれ、最悪保健室で預かると約束まで
してくれたのだった。

「あの時、野田先生が確認を奨めてくれなければ
スルーしてたと思うんですよね。」

「ああ。さすが真知子ちゃんだよね。」

「鼻の下を伸ばすんじゃない。」

「ごめんなさい。今月の保育料は無料にするから。
許して下さい。」

「今後何かあれば、保育料無料で
私の機嫌は直るかもしれません。」

学園長は悲しそうな顔をした。
美月はフルタイム正規職員復帰なので
保育園は朝8時から夜7時までの延長ができる
上限ギリギリプランである。
これが双子だから×2である。
ひと月、二桁を越える費用が掛かるのだ。
福利厚生で美月の負担は半額なのだが
どちらにしても全額を学園側が出すというのは
痛い出費である。

「それが嫌なら、もうミスしないでください。」

「ごもっともで。」

美月は時計を見た。
もうすぐ一時間目が始まる。

「授業、行って参ります。」

「お願いします。」




昼休み。美月は落ち着きなく、初等部の校舎の前を
うろうろしていた。
初等部の隣は保育園なのだ。
何しろ保育園初日、双子の息子がこんなに長時間
自分から離れて他人の中で過ごすのも
初めてのことである。

様子を見に行きたいが、変に里心はつけたくないし
昼休みに毎回会いに行けるとも限らない。
何よりこれは、自分側の子離れ訓練でもあるのだ。
我慢しよう。我慢だよ。ああ、当然だろう。
美月はスマホの画像フォルダを開く。
中には渉と卓の笑顔や泣き顔、寝顔が溢れている。

「くそう。可愛いいいいいいいっ!」

可愛さ余ってなんとやらだ。

「この悪魔たちめ。どれほど母にダメージを
与えたら気が済むんだ。帰ったらお仕置きだ。
苦しいくらいに抱っこしてやるからな。」

ちゅーだって嫌ってほどしてやる。
お風呂上がりにお尻触って触って揉んで揉んで
おちんちんだってちょんちょりんとしてやるからな。

「うぬう。」

美月はやっと立ち直って、中学の敷地へと足を向けた。
予鈴が鳴ったからである。









美月は産休に入る前、二年生を教えていた。
二年以上に渡る産休中に美月の教え子は全員
卒業していったので、復職した今日からの
生徒たちは全員美月を知らないのである。

まだ担任は持たない美月は
一年生と二年生の理科を教える。
浅く広くのつき合いとなるが、今の美月には
有難い働き方だ。
今までは担任を持ち、教科担任として
同学年の生徒たちも教えながら
一人一人の生活面にも気を配るという
面倒の見方にやりがいを感じていた。
将来に関わる進路にもアドバイスを与える
担任教師という立場は、責任も重大だったが
無事に生徒たちを送り出すときの喜びはひとしおだ。

自分の子どもにはまだまだ手がかかり
自分自身も子離れ出来ていないような
ていたらくだ。担任を持つのは無理であろう。

美月は五時間目の授業へと向かう。
一年生だ。今、一年生は植物の成り立ちなどを
学習している。自分の専門分野でもあり
気合いが入るが、同時に心配でもあった。

「今日から皆に理科を教えていきます
長内美月といいます。よろしくね。」

普通のクラスなら、このあとすんなり授業に
入れるのだが、このクラスは少し雰囲気が違う。

「旦那さんには毎日血を吸われてるんですかあ?」

「あれ、すげえ感じちゃうってマジですかあ?」

一年生にしては体格のいい男子が数名。
制服を着崩して、椅子からだらしなく
足を放り出して座っている。

彼らは美月の旦那が吸血鬼だと知り
面白がってヤジを飛ばす。
授業妨害、セクハラと二重の問題行動に
どう対処しようかと思うが、復職したばかりで
授業のリズムをくずしたくなかった。
無視した。

「俺たち質問してんすけどぉ。」

「なんで教えてくんないんすかあ?」

中でも、しつこかったのは
髪をオールバックにして耳と鼻にピアスをしている
男子生徒である。
だがついこの間まで「児童」というカテゴリーに
入れられていた彼の顔立ちは幼く、皮肉にもその
髪形が子どもっぽさを強調する結果になっている。

樋口光紀。

なるほど、要注意一覧にあった名前だ。

美月は無視を決め込んだ。

「セックスは週何回してるんですかあ?」

「吸血鬼と子ども作るくらいだから
毎日してんじゃね?」

「好きな体位はなんですかあ。」

美月は平然と授業を進めた。



チャイムがなり、授業が終わる。
いささか疲れたが無事に終えられてよかった。
美月は拳を握りしめて深呼吸をした。

教室を出ると、後ろから声がした。
無視され続けたのが我慢できなかったのか
樋口が今にもキレそうな危うい笑顔で
美月のあとからついて歩いてきた。

「俺の質問、ひとつも答えてもらってねえんだけど。」

「授業内容には関係なかったので。」

美月は努めてそっけなく、冷静に話す。

「けっ。淫乱女が子どもにもの教えよう
ってんだからお笑い草だよな。」

彼には美月が堪らなく気に入らないようだ。
なぜ、こんなに突っかかってくるのか
不自然さを感じた。

「吸血鬼の旦那はセックス上手かよ。」

「学校で話す内容ではないね。」

「どの面下げて教師やってんだよ!」

どうにも樋口はヴァンパイアと夫婦になった人間
という美月がどうにも気に食わぬようだった。
不愉快そうに顔を歪めている。

「カウンセリング、予約とってやるから。
保健室に行きなさい。わかった?」

これ以上やりあっても仕方がないと
美月は野田先生にパスすることにした。

そしてあとから意外な事情がわかってくる。









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