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kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

七人の特命隊

2013年06月27日 | ★★★★★
マカロニ映画界と東京12チャンネルを代表する名監督、エンツォ・G・カステラッリ(監督の仕事ぶりと外見に敬意を表し、以下「親方」)。その親方の6本目のマカロニ・ウエスタンで、以前からソフト化の噂はあったが、ついにDVDで登場だ。

南北戦争中、ならず者のリーダー、クライド(チャック・コナーズ)は南軍から北軍の軍資金強奪を依頼される。ナイフ投げや殺し屋、怪力男、爆破のプロなど定番のメンバーを率いて任務に向かうクライドだが、胡散臭い南軍の情報将校リンチ大尉が同行することになる。そして、クライド自身も「任務終了後は全員殺して一人で戻れ」という密命を受けていた。

監督として30年以上のキャリアを持つ親方としては初期の作品だが、色々な面で親方らしさの萌芽をすでに見ることができる。

親方映画の一番の持ち味は、「主人公の宿命や皮肉な運命」ではないかと考えている。これは他のマカロニ映画人と一線を画している部分である。親方と一緒によく引き合いに出されるのがセルジオ・コルブッチだが、コルブッチ・マカロニの主人公を突き動かすのは「人間の業」である。コルブッチ映画の主人公は執念や欲望に翻弄されるにの対し、親方の映画の主人公には高潔な人間が多い。

おそらく、脚本家のティト・カルピの影響も大きいかと思われるが、実際、親方の映画で高く評価されてる「ケオマ」や「地獄のバスターズ」「空爆大作戦」「砂漠の戦士/黒いライオン」など主人公には戦う意思が無いにも関わらず、宿命か人生の巡り合わせか、時として命の恩人とまで殺しあわねばならない局面に追いやられてしまう。

本作の主人公は高潔さとは程遠そうだが、「全員殺して一人で戻れ」という命令を受けること自体、自らの発意ではないわけだから、「宿命」型の一バリエーションと言えるかも知れない。(とは言っても、その命令に深い意味はなさそうだし、クライドも命令の遂行に何の葛藤もないのだが。)

親方の映画作りの特徴の1つは凝った画づくりである。中でも得意技の1つがマットペインティングだ。被写体とカメラの間に設置したガラス板に背景画を描く手法で、オープニングの背景に連なる山々は見たとおりの「手描き」だ。「オニオン流れ者」でも油田はマットペインティングだったし、親方のビハインドシーンのスナップではガラス板の後ろで笑顔満面の親方が映っているものもある。

劇中、主戦場となる要塞も崖の上にマットペインティングで描かれているのだが、水をわざわざ崖の上まで運ばなくてはならない陣地など、給水を押さえられたら機能しなくなるので、実際の戦争ではほとんどありえない。史実にこだわることにこだわったレオーネや戦争経験のあるソリーマなどなら、おそらくあんな現実味の乏しい要塞など設定しなかったのではないか。(史実を無視するといった点では、第二次大戦中、ダンケルクの撤退にドイツ軍のスパイが紛れ込み、英国本土への潜入を図るという「空爆大作戦」の設定など特筆すべき素晴らしさだ。)

ところが、親方は何か凝ったことがやりたい監督なのだ。要塞はセットとして実在するものだが、その外観をあえてマットペインティングで崖の上に描かないと気が済まないのだ。きっと。

肉体派のアクションも親方の得意技である。本人がボクシングで鳴らしていたこともあり、マッチョなアクションとアクロバティックなスタントが大好きである。ジェンマのスタントがサーカス的であるのに対し、親方のスタントは全部力づくだ。銃を捨ててまで、殴り合い、取っ組み合いをしなければならない。後期の作品では、銃撃戦を含めたアクションシーンを(グダグダと)描くことばかりに腐心して、肝心のストーリーが全然展開しない作品もあるが、そういった傾向はすでに要塞での攻防戦に垣間見える。

親方のインタビューによれば、この映画の撮影時チャック・コナーズは腎臓に病気を抱えており、長時間の激しいアクションに耐えられなかったが、優秀なスタンドインのおかげで撮影できたのだという。確かに殴り合いのロングショットなどでは、明らかにチャック・コナーズと体型が違う。

床下から上階の敵を撃つ「垂直方向の銃撃戦」((C)クラレンス)も親方定番のアクションだが、本作でも鐘楼を巡るシーンで展開されている。このスタイルも「何か凝ったシーンを作りたい」という親方の信念ゆえだろうし、また親方自身が建築学科出ということで、立体的な構図が構成されるのだろう。

映画ごとに何か凝った仕掛けを盛り込みたいという姿勢があるからこそ、親方の映画は絶えず新鮮なのであり、1アイディアで光らせるというマカロニ映画の真髄が輝いているのだ。そして、その積み重ねの成果として「ビッグバイオレンス」の自動車大横転のような名場面が生み出されるのだと思う。「金はかけなくても、技術的に難しいことでなくても、とにかく何か凝った仕掛けことがしたい。」という親方のスタンスが作品に表れるこそ、ますます親方の映画が好きになるのだ。







題名:七人の特命隊
原題:AMMAZZALI TUTTI E TORNA SOLO
監督:エンツォ・G・カステラッリ
出演:チャック・コナーズ、フランク・ウォルフ
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