kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

フォース・カインド

2010年01月07日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:1月6日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版700円。さすがにプロダクションノートなどは書きようがなかったのか、日本人のテキストだらけ。しかし、これがオカルト派と反オカルト派の双方が執筆するという珍しいスタイルで、なかなか面白い。

【以下、バリバリにネタバレ】

SFともホラーともサスペンスとも位置づけしづらい、ユニークな作品。

いきなり、ミラ・ジョヴォヴィッチが「実際に起こった出来事のビデオ映像とそれを元にした再現ドラマで構成しています。」と宣言する。

こういった構成は「世界まる見えテレビ」などテレビでよく使われる手法だが、エセ・ドキュメンタリーではないので、映画的なカメラワークや切り返しでも不自然ではない。

アラスカ州のド田舎、ノームで似たような原因で不眠を訴える患者が続出し、ミラ・ジョヴォヴィッチの演じる心理学者は催眠療法で原因を探ろうとする。患者を録画したビデオには信じられない光景が残され、ついには主人公の幼い娘が何者かにアブダクションされてしまう・・・。

眠れない、夜中に目が覚めるというなら、原因はさておき、睡眠導入剤の処方がまず第一歩だと思うのだが、催眠療法で原因を根っこから断ち切ろうとする。(連続する患者に共通の原因を探ろうとするのだが、そもそも患者に「他に似た症状の患者がいます。」などとは言ってはいけない。それだけで患者側にバイアスがかかってしまうだろう。)

「なぜエイリアンに誘拐されたと思うのか?」という本では、催眠療法の危うさを指摘しているのだが、この映画の展開は、まさしくそのものなのだ。

不可思議な現象の証拠が、映像が乱れたビデオ映像だけで、他の目撃証言やその日の自然状況など、傍証の調査を誰も行おうとしない。

さらに、ビデオにはシュメール語らしきうなり声が断片的に残されているのだが、これが「空耳アワー」レベル。うなり声が日本語と言っても通じるんじゃないかい?

そもそも、ワタシが世のアブダクション証言を信じていないのだから、どんな証拠が出てきてもツッコんでしまうんだろうけど。

主演はジュリアン・ムーアの方がピッタリなんだろうけど、「フォーガットン」で同じような役をしているし、彼女だと却って演技が上手いような気がする。ミラ・ジョヴォビッチのいささかオーバーな演技の方が、そこはかとない嘘くささを出す映画の演出に合っているよね。(笑)

新聞広告でこの映画を信じますか、信じませんかという観客アンケートがあり、結果はほぼ半々だったのだが、この設問がクセものだよな。
「「実際の映像」として使われる映像もニセモノで、映画全体がフィクションだと思いますか?」と「「実際の映像」は現実に起こった出来事であるとして、「アブダクション」説を唱えるゲイルを信じますか?」とでは、全然設問の意味が異なるじゃないか?

そんな観点から見れば、この映画にツッコミを入れながら観ることは、メディア論とか推論法とかの教材として使えると思う。そういった意味では、面白い作品だ。
題名:フォース・カインド
原題:THE 4TH KIND
監督:オラトゥンデ・オスンサンミ
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、ウィル・パットン、イライアス・コーディーズ

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