長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

宮部みゆき著【火車(かしゃ】

2019-10-01 11:35:50 | 本と雑誌

本作品は平成四年七月双葉社により刊行されたものを、平成十年二月一日に新潮文庫が文庫化して発行致しました。
火車(かしゃ)とは、火がもえている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄に運ぶという。火のくるま。
さて、ケチな強盗犯が隠し持っていた改造拳銃を、そいつがついうっかり撃ってしまった為、逮捕に向かっていた本庁の刑事の本間駿介(ほんましゅんすけ)が膝を撃ち抜かれて、現在休職中である。
その本間に、今は亡き妻の千鶴子(ちづこ・交通事故死だった)の従兄の息子である、栗坂和也(くりさかかずや)が訪ねてきた。
彼の婚約者である、関根彰子(せきねしょうこ)が突然失踪したので、捜し出して欲しいとの依頼…。
しかし、本間は休職中で、警察手帳も刑事部屋に預けてある状態で、警察権を発動しての捜査は出来ない。
その旨を断った上、依頼を引き受けた。
どうやら、関根彰子は過去に自己破産をしていたらしい、その事を和也が追及したら、彼女は青ざめ、その直後に行方をくらましたようで、しかも徹底的に足取りを消していたのだ…。
彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?
彰子は和也に「これには色々深い事情があって、すぐには話せない、だから少し時間をください!」といっていたのだが…。
本間はさすがに当初は休職中の影響を受け、刑事としての勘が鈍っていたのだが、次第に目覚めてきて、ボロ傘を杖代わりにして脚を引きずりながらも、執拗に調査を続けてゆくが…。
とてつもない犯罪が隠されている事に気付き、これは栗坂和也一人の問題ではないと判断し、単独で強行調査を続ける。
実は水商売に染まった、蓮っ葉な化粧も服装も派手な彰子が180度変貌を遂げ、今井事務機という会社で事務の仕事をしていたのだが、そこには新城喬子(しんじょうきょうこ)という謎の女性が、浮き上がってきたのであった…。
同僚の碇貞夫(いかりさだお)刑事や、同じマンションの1階に住む、現在主夫業を生業にしている井坂恒男(いさかつねお・実は本間の部屋のハウスキーパーもしてもらっている)とその妻久恵(ひさえ)の協力を得ながら、あっちこっちを移動して調査を続行し、真相に迫ってゆくし、犯罪者と目される人物をジワジワと追い詰めてゆくのであった…。
しかし一人息子の智(さとる・実は養子で、義理の息子ではあるが、その事は関係なしに実の父子として接している)が、脚の悪い父親が出歩く事に心配をしている。
まだランドセル背負う小学生だ、母親を失って、今度は父親まで失うことに恐怖しているのだ。
一方の本間は、暇を持て余してしまっていた所で、調査に出かける事によって、元気を取り戻しつつあったのである。
さて調査が進むにつれ、その裏には、カード社会の犠牲者ともいうべき自己破産者や、無理なローンを組みマイホームの購入をした者の、ローン地獄の凄惨な人生が隠されていたのだ…。
時代は昭和の末頃から平成の初期で、まだ過剰な融資を法律で取り締まる以前の話になる。
それに過払い金として、現在弁護士事務所や司法書士事務所が、競って取り返すようにCMをしているのが、当時年利25%~35%と高金利で、これは利息制限法と改正出資法のはざまに落ち込んで、「悪い事であるがいちいち咎めていられない」という、いわゆるグレーゾーンのなかにある金利であった。
この金利が、借りている側の痛切な負担となっていた。
利息が利息を生んで借入金が嵩んでゆくのだった
次第にサラ金パニックという時代になってゆくのである。
ただ昭和五十八年十一月にサラ金規制法が施行されて、貸金業者は暴力的な取り立てをする事が出来なくなった。
しかし、貸金業者は法律の網をくぐって、陰湿な方法で取り立てに出てきたのだ…。
まぁ現在では、最高裁判所の判決により、確か年利20%までにと制限されているのだと思う。
まるで、本間という男目線で展開してゆく、かなり骨太の作品で、みゆき節もそうなく、彼女としては、実に珍しい作品である。
松本清張の「点と線」を読んでいるような、展開にスピード感はないが、ひしと迫る緊迫感があった。
また今を時めくベストセラー作家の東野圭吾に、大阪弁での会話のレクチャーを受けたり、弁護士宇都宮健児氏に、クレジット・サラ金問題について有益な話を聞かせてもらい、作家高村薫に地理不案内の大阪での取材にみゆきに同行してもらったり、コンピューター関連の素朴な質問に答えてもらった井上夢人等の助けを受け、やっとこ完成した作品。
山本周五郎賞に輝いた極上で名作の、本格的社会派ミステリーである。
是非未読の方は、一度読んでみて欲しいと思います♪
実は、私もカードの多重債務地獄に陥った経験がありますが、もう金利が下げられている時代であったので、生活がぎりぎりの状態でありながら、三件の会社の借金は完全に返済が終わっています。
最盛期は返済金が、月に6万円を支払わなくてはならない時期もありましたが、もう終結しています♪
カードローン地獄って、本当に恐ろしいですよ、簡単に金が手に入るシステムだから。
もっと以前なら、私もどうなっていたか…。
今は総て返済が終わっているので、再びカード発行を申請しても、恐らくやってもらえるのではないかと思うんのですが、もうクレジットのカードには恐怖心があるので、持ってはいません、完全に現金主義で通しています。
ただ国がキャッシュレスを推進しているので、この先現金主義を貫くのは困難状態になる予感がありますが…。
それでは、国がカード破産を増長している事になりはしないか、心配ですね…。
国策としては、いかがなものか?
安倍晋三総理に、この「火車」を読んで欲しいですね。
お金をチャージするタイプのカードは、現金主義と同等なので、私としては推奨しますのですが、なんでもかでもクレジットカード決済は、感心しませんね♪
私は金欠の状態の時、業務用のスーパー等で安い食材を買って、自炊をしていました。
まったく、つましい生活でしたが、知恵が付いてそれなりに、なんとか生活が出来ていました。
今考えると爪に火を点すような、そんな生活だったかも知れませんが、実にいい経験にはなりました。


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