長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

芦原すなお著【ハート・オブ・スティール】

2019-11-22 22:18:15 | 本と雑誌

HEART OF STEEL
ネオ・ハード・ボイルド!
鋼の心を持つ女、探偵・里子の事件簿。
夫が謎の死に方をして、結局夫のあとをついで探偵業に入った、夫の死に疑問を持ち、それを追及したい意思もあり、やけそく的な気持ちもあった…。
夫が残した、メーカー不明の三十八口径のリボルバー(絶対に足はつかないといっていた)を、いざというときに持って挑むのである。
『雪のマズルカ』
「あなたが笹野里子先生ですか?」先生づけで呼ばれたのは初めてだ。
「依頼したい仕事があるんですが」「電話では受け付けないことにしています」
「は?」「依頼人と直接会って話をきいてからお受けするかどうか返事をします。面会の日時と場所は今相談に応じられます。よろしければ」
「意外と面倒なんですね」「お気に召さないのでしたら、どうぞ他にへ」
是非とも受けてもらいたいってことで、現れたのは滝本だった。
代理人で、運転手つきの高級車で迎えにきた…。
『氷の炎』
ある日、突然自宅に電話が入った。里子は無視しようと思ったが、結局とってしまった。
相手は四十代後半の男とおぼしぎ男だった。
里子は事務所にくるように命じて、男は承諾して、自宅に電話したことをわびた。
その男は、スターの村田青二だった。
愛人の凍野もえのことを調査して欲しい、「いったい何者なのか」…。
『アウト・オブ・ノーウェア』
二人の少年がいた。
日本の果てにある「施設」で暮らしていた。
「アウト・オブ・ノーウェア(どこからともなく)」やってきて、また「トゥ・ノーウェア(どくへともなく)」去っていった。
少年甲は頭がよくて邪悪だった。少年乙は力が強くて邪悪だった。
笹野里子のもとに、姉の高石ミナが何者かに殺害された。その犯人を突き止めてほしいとの依頼を、妹の高石ミノがしたが、それは警察の仕事と断るが、全然警察ではらちが明かないということだった。
それにひどい殺害状態で、その死体を見たとき、嘔吐してしまったらしい。
朋愛産業の網代(あじろ)和雄とつきあっていたとのことだったが…。
『ショウダウン』
笹野里子はある日、死んだ夫の幽霊か幻かがやってきた。
実は夫は探偵業をやっていたが、二年前乗っていた車が熱海の崖からダイブした。
助手席には女がいた。あるクラブのナンバーワン・ホステスだということだった。
二人の体内からは大量のアルコールが検出された。警察は事故だと結論を出した。
しかし里子は、夫はいいかげんな人間だったが、慎重にことを行っていたので、その死に方に疑問を持っていた。
夫は「君に自由になってほしい」「ぼくに会う前の君のように」と言い残し消えた。
その後、妙な依頼人が現れた。
その男も代理人だった。男の名は埼甲(さいこう)和男。
依頼人は国会議員で、近々に改造される内閣の重要なポストに就任することが内定しているらしい。
その議員の名は繁村丁次、里子も知る大物である。
反社会勢力の男と密会している写真を送られきたそうで、それを写したのが、里子の夫らしい…。

かなりハードボイルドな内容だが、時折芦原節が出て、プッと笑ってしまう場面もある。




近藤史恵著【みかんとひよどり】

2019-11-13 17:52:36 | 本と雑誌

腕はいいのに、うまくいかないシェフ×人との関わりを避け、自由に生きる猟師。
「一緒に過ごした時間は、互いの身体に宿っている」
肉を焼くことは、対話だ。
『タルトタタンの夢』の著者が贈るジビエミステリ。

第一章『夏の猪』
はじめたばかりの猟で遭難してしまった潮田亮二、35歳。
相棒の猟犬(ピリカ・イングシュポインター雌)と途方に暮れていたところ、無愛想な猟師で大男の大高重美に助けられる。
大高の相棒の犬マタベー(北海道犬・雄)が臭いで気づいてくれたらしい。
かねてからジビエ料理を出したいと考えていた潮田は、大高の仕留めた獲物を店で出せるよう交渉する。
しかし、あっさり断られてしまい…。
第二章『ヤマシギのロースト』
潮田のヤマシギのローストを食べた、澤山柊子(さわやましゅうこ)はもう一度食べようと訪れたが、その店は潰れていた。
チェーン店で働いていた潮田をスカウトして、京都の洛北にあるフレンチの店レストラン・マレーを任せた。
しかし、半年の間まだ黒字が出せていなかった…。
第三章『若猪のタルト』
大高からもらった猪の肩ロース肉を試作中、澤山オーナーがやってきたので、猪のタルトを出せると話した。
本日のメニューには載っていないので、正規のルートから入手した肉ではないので、店には出せないことを潮田は澤山に話す。
またヒヨドリ(これも大高からもらった)もあるので、三日くらい熟成させたら、こちらは店に出せる旨澤山に伝えた…。
第四章『小鴨のソテー・サル三ソース』
大高の家が放火にあって全焼してしまった。
それで大高は金がいるのでと、野禽を週一回マレーへ納品にくるようになった。
そんな中、嘗てパリの料理学校で一緒だった、風野がマレーを訪れた。
風野はなんと、有名な大阪にある「カレイドスコープ」のオーナーシェフだった…。
第五章『フロマージュ・ド・テット』
潮田は豚の顔を使ってフロマージュ・ド・テットを作ろうと考える。
このフランス料理は、豚の頭のいろんな部位をゼリー寄せのように固めたテリーヌである。
そのフロマージュ・ド・テットとワインを提げて、大高の住むアパートへ出向く。
澤山オーナーから紹介されたアパートだ。
第六章『猪のパテ』
澤山オーナーを大高の解体小屋まで潮田は連れてきた。
澤山は大高に設備としては完璧なので、何故営業許可書を申請しないのかと問いただすが、処理した肉を売るわけではないからと頑として譲ろうとはしなかった。
さて、怒涛のようなクリスマスも終えた頃、大高が珍しくも子猪の舌と頬肉と足を持ってきてくれた、おまけに肩ロースまで。
大高は年末年始は土木工事もないし、解体小屋で暮らすという。
大晦日になって、潮田も店を年末年始一週間店は休めとのオーナーの厳命なので、やることもなく、大高のいる解体小屋へ向かって行った、ピリカを連れて。
猪のフロマージュ・ド・テットと子猪のパテ・ド・カンパーニュと赤ワインを持参して訪れた…。
第七章『ぼたん鍋』
結局、大高の所に居続けしまった潮田は、毎朝夕罠の点検に付き合ったが、平素からの運動不足が祟り、肉体的にきつい状態だった。
大高の罠が誰かによって、わざと作動させられていたので、その後険しい顔になり無口にもなって黙々と罠の点検に急いでしまった。
まるで潮田の存在を忘れたかのように…。
第八章『雪男』
潮田は大晦日から、大高と一緒に過ごし、山を歩き、ストーブで煮炊きしている。夜は車の中で眠る。決して快適ではないはずなのに、どこか凝り固まった気持ちがほぐれていくような実感があった。
大高は帰りに、ライフルが盗まれたという原山という、ハンター仲間だった人の家に寄り道した…。
第九章『鹿レバーの赤ワイン醤油漬け』
明日は帰るという日、大高は小屋に戻ると昼寝をしたので、潮田も車に戻りひと眠りした。
目が覚めたら、あたりは雪化粧だった。
夕方の見廻りに出ると、小鹿がかかっていた。
小鹿を運び込んだら大高が残りの罠を点検にいっている間、潮田はデッキバンに残った。
その時軽トラックが真正面からぶつかろうしてきたが、潮田の顔を見て驚いて、急いでハンドルを切りデッキバンをかすめ逃走した…。
第十章『熊鍋』
ジビエ好きの澤山オーナーが、何故ジビエにこだわるのか分かった。
一時期体調を崩し、軽い鬱状態なっていた時、山の旅館で熊鍋が出されたのだそうだ。
食べているうちに体がポカポカして元気になってきて、それからジビエを出している店を探し、食べ歩いたら、どんどん体調がよくなったそうだ。
一週間後に大高がヒヨドリを持ってやってきた。
みかんをたっぷり食べたヒヨドリだった。
ドライブレコーダーに写っていた、軽トラックの男の顔は、大高は知らないそうだ。
警察も真剣に扱ってはくれないみたいで…。
第十一章『ヒヨドリのロースト・みかんのソース』
大高との連絡が取れなくなっていた。
潮田は大高が危険なことをしないか、心配でならなかった。
そんな中、澤山オーナーが次の定休日空いているかと聞かれ、潮田は空いていたのでそう答えたら、どこかえ連れていかれるようだった…。

夢を諦め、ひっそり生きる猟師。
自由奔放でジビエへの愛情を持つオーナー。
謎の趣味を持つ敏腕サービス係・大島若葉。
ふつうと少し違うけど自分に正直な人たちの中で、潮田は一歩ずつ変わっていく。
人生のゆるやかな変化を、きめ細やかに描く、大人の成長物語。



東直己著【英雄先生】

2019-11-05 17:51:51 | 本と雑誌

俺の人生は、馬糞臭え。高校教師てのは、こんなもんか?
NO FUTUREなへっぽこ教師が奇跡を起こす!?
もっと別な人生もあったはずだが、その芽を摘んでしまったのはおれ自身だ…。
ボクサーとしての夢が破れて地元の松江に戻った池田敦は、高校教師(松栄高校・母校)として退屈な日々を送っていた。
ある日、教え子の女子高生・小林暁美が失踪し、時を同じくして、東京から戻ってきた幼なじみの郡雅章(こおりまさあき)が変死体で発見される。
池田は教え子の暁美の行方を追跡することになるのだが、どうやらそこには新興宗教が絡んでいるようだ…。
やる気もなく、その上教え子のタマキとできている、ほとんど下半身で物事を考える、その上車の運転が苦手な、とんでもない不良教師が、とんでもない奴らと闘うはめになってしまう!
それと、文中では何故か北朝鮮の人間が休戦ラインを越え、韓国に難民としてどしどし逃げていることになっているし、金正日は行方をくらましているようだ。
その北朝鮮も話に絡んでくるから、ややこしいことになってしまうのだ…。
今の朝鮮半島情勢を考えると、どうも滑稽な気もするが…。