長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

鮎川哲也著【ペトロフ事件】

2019-06-19 18:15:05 | 本と雑誌

本格推理小説の大御所(第一人者)であった著者が、最初に発表した長編ミステリーであり、初の時刻表トリック。
そして鬼貫(おにつら)警部が初登場する。
場所はまだ戦争の始まる前の満州辺り。
巨額の財産を狙った殺人か?
旧満州、大連近郊でロシア人富豪イワン・ペトロフが撃ち殺される事件が起きた。
容疑者は三人の甥、アントン、ニコライ、アレクサンドルとその恋人たち。
しかし、彼らには一人残らず堅牢なアリバイがあった!
鬼貫警部は得意のロシア語をあやつり、粘り強く捜査する。
…はたして満鉄の時刻表は何を語るのか?
ということなのだが、最終的に鬼貫警部によって、予想外の犯人が炙り出される…。
私は時刻表トリックは、あまり好みではないのだが、この小説は時刻表がなくとも実に分かりやすかった。
この作品については、紆余曲折があって、刊行が遅れたらしい。
従ってこの著者の、作家デビューが遅れたらしい…。
なかなかレトロな本格推理小説で、いささかノスタルジックにもなる。
今は亡き著者自身が綴った回顧録も掲載されていて、なかなか本編読後も楽しめた。
その回顧録の中に、「ペトロフ事件」はまだまだ稚拙なところがある、というような意味の言葉が述べられているが、確かにそんな部分もあるのだが、私はそれもひとつの風味となっていて、よいのではないかと思う。
なんせ、鮎川哲也がいなければ、本格推理小説はこの日本から消えていたといっても、まったく過言ではないと思うのである。
それだけではなく、後進の多くの作家たちに、多大な影響を与えているのであった…。

東野圭吾著【危険なビーナス】

2019-06-11 22:31:22 | 本と雑誌

さてこの作品は、著者自身が「真相を知ったひとは、どんな顔をするだろう」と語っている。
獣医師になっている手島伯朗は、ある日弟の矢神明人の妻・楓から電話を受けた。
明人が結婚していたことも知らなかった.
実は弟の明人とはここ暫く交流がないし、禎子という母親は同じだが、父親は違うので姓も違うのだった。
しかし、その楓の話によると、明人は失踪したのだというのだ。
矢神家とは縁を切っている伯朗は、それについて「自分に出来ることはない」と思ったのだが、楓に強引に押し切られ、結局矢神家と関わるはめになる。
矢神家の財産相続に巻き込まれるが、結局伯朗は蚊帳の外って存在、ただ母親禎子(事故か他殺かよく分からない死に方をしていた)の遺品があるのでって、無理やり親族会議に出席させられる。
矢神家の親族は、一癖も二癖もある人間ばかりだった。
特に勇磨は子供の時から、いけ好かない存在であった…。
それに、明人の失踪について、楓はこの親族たちが絡んでいると思っているようだった。
そして伯朗は、行動を共にする楓に、だんだん惹かれていくのである。
なんせ美人の上、スタイルも抜群ときている。
伯朗はそんなジレンマを抱えながらも、いつしか楓をなんとか守ろうと思うようになっていた…。
但し、真相は思いもよらないものだったのである(^^♪ だからこれ以上詳しい解説はやめておくことにする。
この小説は文句なく面白い!果たして楓は『危険なビーナス』なのか?
謎はそれだけではない、売れない画家だった伯朗の父親手島一清が脳腫瘍に侵されながら、最後に書いて、未完に終わった不思議な絵が紛失していた。
そして伯朗の母禎子が、一清亡き後再婚した矢神康治(明人の父である)が極秘に医学研究していた資料も紛失している…。
この二つが、重要な鍵となるのだが…。


赤川次郎著【鼠、恋路の闇を照らす】

2019-06-05 20:03:15 | 本と雑誌

赤川次郎が時代小説に挑戦した、鼠小僧治郎吉シリーズ、早もう第11弾になる。
その内どれだけ読めているのか、正直分からない。
昼間は通称〈甘酒屋〉と呼ばれる遊び人だが、夜は天下の大泥棒。
捕えられれば死罪になる、実に危うい渡世を渡っているのだった。
何故か別嬪の妹・小袖がいる。鼠小僧治郎吉に妹がいるなんざぁ、今まで聞いたこたぁねぇがの。
赤川次郎ならではの、登場人物の構成か?
その小袖は小太刀の達人、道場では誰も小袖には勝てない、呑気な道場主はそんな小袖を師範代にし、自らは気楽な温泉旅行三昧。
治郎吉も時々小袖を用心棒代わりにしている。
その小袖に惚れているのが、旗本の子息・米原広之進、小袖が師範代を務める道場に通っている。
これで利口な猫が出たら、江戸時代の『三毛猫ホームズ』になってしまうが、『トムとジェリー』じゃぁあるめいし、〈鼠〉の話に猫が出るのはご法度だってぇの!
ところで実は治郎吉は、仙田良安先生の診療所の女医・千草先生だけには、色々なやっかいごとをお願いしているので、まったくもって頭が上がらないのである。ひょとしたら治郎吉は千草先生に惚れている?
さて今回は表題を含む六つの話。恋する男女の駆け込み寺は、江戸を騒がす大泥棒!?
弱きを助け、強きから「盗む」

壱、山登り中の〈鼠〉一行。そこには三千両を抱え江戸から逃げる盗賊たちがいた。『鼠、ご来光を拝む』
弐、差出人を偽った恋文が江戸を騒がせる。評判の色男の不審な動きとの関係は!?『鼠、恋文を代筆する』
参、小さな兄妹を残し逢引をする母親。彼女は浪人風の男から命を狙われていて。 『鼠、隣の客の子守唄』
肆、放火犯による火事現場にて、屋根にいた〈鼠〉は火消を手伝うことに。    『鼠、空っ風に吹かれる』
伍、大店の娘を助けた徳山は、御礼に歓待を受ける。彼の妻子には魔の手が忍び寄り。
『鼠、恋路の闇を照らす』
陸、突然広之進を斬り付けた女、心中相手に裏切られ死んだ姉の仇討ちと言うのだが。
『鼠、心中二子山の噂話』

懸命に生きる町人の幸せを守るため、今宵も〈鼠〉は江戸を駆け巡る。

五連発で短編の小説をアップしたのだけれども、別に意図的なことではない、長編に倦んだってわけでもない、偶々そうなってしまったことなんす(^^♪次は長編小説を読む予定ですよ♪