長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

北森鴻著【ぶぶ漬け伝説の謎】

2010-10-17 12:55:48 | 本と雑誌

Bubu

【支那そば館の謎】の続編である。
本著者の小説をよく読む者だけに解る、パロディ満載の裏(マイナー)京都ミステリー。
主人公有馬次郎(アルマジロ)は、嘗て広域窃盗犯として闇に生きた男だが、今は大悲閣の寺男として慎ましい日々を送る身である。
しかし何故かいつも不可解な事件に巻き込まれてしまい、降りかかる火の粉を払うべく、「僕」から「俺」にモードを切り替え、度々山を下りるはめになる。
ご住職の心眼や、嘗て闇の仲間であった、Kon's Barマスターのカズさんの力も得て、謎解明に乗り出すのだ。
そこへ、みやこ新聞文化部の自称エース記者折原けいと、大悲閣に居候を決め込んでいるバカミススチャラカ作家のムンちゃんこと水森堅が、夫婦漫才よろしくじゃれ合い、加えて京都府警の不良債権こと碇屋警部の冴え渡る無責任迷推理が、百鬼夜行のごとく繚乱するのであった・・。

《狐狸夢》うどんの東京と京都(狐と狸)の違いが、何故かバカミススチャラカ作家の感傷旅行(センチメンタルジャーニー)を呼ぶ?
《ぶぶ漬け伝説の謎》有名な京のぶぶ漬け伝説の裏には驚愕の真実が潜み、殺人を呼んでしまう?
《悪縁断ち》悪縁断ちで有名な安井金毘羅宮、そこに浪費癖断ちと吝嗇癖断ちの正反対の願掛けをされた男は、死神を呼んだ?
《冬の刺客》みたらし団子の五つある団子のうち、先端の大きな団子を串ごと切ると、刺客を呼ぶことになる?
《興ざめた馬を見よ》名画から抜け出る駿馬伝説を呼び覚ましたのは、邪な人の心?
《白味噌伝説の謎》洛中人たる矜持でもある甘たらい白味噌が、暮の錦市場にグリコ・森永事件の悪夢を呼び起こす?

京らしい美味しそうな食べ物もいっぱい出てくるが、噺の中に登場する北野白梅町の寿司割烹・十兵衛や先斗町のKon's Barは、実在の店がモデルなのだろうか?
常に物語の中心にあるお寺の大悲閣は実在し、嵐山に行った折に訪れたことがある。
松尾芭蕉が「花の山二町のぼれば 大悲閣」と、キャッチコピーみたいな句に読んでいる。
渡月橋の西、保津川を右手に上流へ20分ほど散歩道を歩き、だんたん狭くなる路のやがてどん詰まりに料理旅館が見えてくる手前を左に入ると、参道となる石段となり九十九折にえっちらおっちら登ってやっと山門に辿り着く、本堂もないちょっとショボイお寺。
秀吉から家康の世にかけて、豪商として隆盛を極めた角倉了以が、終焉(つい)の庵とした古刹。
安置されている角倉了以像は、なかなかの逸品で見ものである。
御本尊とする観世音菩薩像も由緒が古い。
そんなことより、ここからの京洛を一望する絶景は、眞息を呑むほどに美しい。
春に山桜、晩夏洛北の夜を彩る眼前に燃ゆ五山の送り火、金羅錦秋の候の紅葉、冬には比叡颪に耐え忍ぶ一幅の水墨画と化す。
これで拝観料四百円とは安い!しかし辿り着くまでの道中は少々きつい。
本堂再建の悲願に是非ともご協力を、檀家がいない寺のこととて拝観料と御喜捨のみが頼り。
行楽によい時候とあいなりまする由、嵐山ご来訪の折には是非ともお立ち寄り賜りたく、希い上げ奉りまする・・・って、なんでウチが宣伝してんのよ!
寺に訪れた者だけに解る憐憫の情のなせる業か・・・・?
ところで大悲閣近くの千鳥が渕沿いの散歩路に、お酒とおつまみを売る、可愛いいあばぁちゃんの小店があったけど、今もあのおばぁちゃん元気かな?脚が悪いようだったけど・・・。
参照http://arasaga.cool.ne.jp/daihikaku/daihikaku.htm
北森鴻公式サイトはhttp://kitamori.nobody.jp/suikou.htm


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