長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

近藤史恵著【賢者はベンチで思索する】

2010-10-13 13:44:52 | 本と雑誌

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七瀬久里子は服飾関係の専門学校を卒業してデザイナーを目指したが、希望の職にはつけず、脈絡も無くファミレス『ロンド』でウエイトレスのバイトする毎日。
その『ロンド』が暇な時間帯に、いつも同じ席でコーヒー1杯で長時間ねばる老人がいる。
老人は国枝といい不思議な人物だった。
呆けているというが、久里子にはそう思えなかった。
確かに『ロンド』で見る国枝老人は、呆けいるとも見える。
だが久里子の家の近所の公園で、ベンチに泰然と座っている国枝老人は、何故か別人のようだった。
さて久里子の家でひょんなことから、アンと名づけた雑種犬を飼うことになった。
実は久里子の弟の信は二浪中だった。
予備校にも通わず、殆ど自室から出ずパソコンゲームに耽っている。
食事も自室でとり、引きこもりと表現したほうがよい状況だった。
両親は信に対して、腫れ物にでも触るように接していた。
久里子も口を利くことがなかった。
久里子は信を恐れていたのだ。
犬でも飼えば信の心境に変化がでるかもとの、両親の切ない思いだったのだが・・。
ある日久里子はアンを散歩させていると、最近外で飼っている犬が毒入りの食べ物を食べさせられる、そんな被害にあっていることを聞かされる。
そして翌早朝、信が外出するのに気付く。またその翌朝も・・・。
アンの散歩がてら信の後を追った久里子は、近所の公園でブロックで頭を割られた犬の死体を見つけてしまう・・・。
偶然国枝老人も公園に来ていて、久里子に的確な支持をした。
交番に届け出た久里子。
それから数日後アンを散歩させていた久里子は、公園のベンチに座る国枝老人を見つける。
国枝老人と久里子が話し込んでいた隙に、アンがなにかを口にしてしまう。
突然嘔吐し倒れ震えるアン。
久里子は国枝老人の指示で、タクシーに乗って動物病院にアンを運ぶ。
医師は同じようなことが二度あったという。
どうやらナメクジを殺す殺虫剤を埋め込まれた、パンやチーズを公園で食べたようだ。
幸い胃洗浄し一命を取り留めたアンは、しかし入院することとなった。
アンの嘔吐したものからも、やはりナメクジ駆除剤が検出された。
交番に届け出た久里子は、この一月半で同様の届け出が八件もあったことを知る・・・。
国枝老人と久里子とワンコロが遭遇する、中短編三連作のミステリ。
肩が凝らないミステリで、それでいて切れもいい。
近藤史恵ホームページhttp://fumie-k.txt-nifty.com/


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