「かえるの日」後日メモ

豊島由香のブログです。2006年5月の「かえるの日」公演後から始めました。演劇のことや、日々の出来事などつづっています。

退職しました

2012年04月11日 | 日々のこと
写真は職場の皆さんにいただいたお花です。
3月に会社を辞めたのですが、もう公演やら他にもとにかくバタバタで、すぐさまに整理しないといけないことだけをとにかく済ませて失礼してしまっていたので、昨日あらためていろんな片づけや途中だったものを整理しに会社に行かせていただいたのでした。
電話が鳴ると、思わず受話器に手が伸びそうになりました。

★  ★  ★

社長と専務は、私が大学を出て就職した出版社で配属された部署の上司で(その後、その会社はなくなってしまったのだけど)、お二人がいまの会社をおこされてからしばらくしてお声がけいただき社員として働かせていただきました。その後一度退職して、派遣社員やホームヘルパーなどをしている時期もあったけれど、今度はアルバイトとして戻らせていただいて、だから合計すると13年程になります、ご一緒させていただきました。
長い間ほんとうにほんとうにお世話になりました。


私は今もめんどくさい人だと思うけど、その昔はさらにめんどくさくて、幼くて、おっちょこちょいで、しんきくさくて、頑固で、気が弱いのに怒りっぽいところもあって、非常識で、ずるいところがあって、気にしぃで……ええ、まだまだいくらでも言えますが、我ながら情けないかな実にうっとうしい人間だったと思います。
(だった…って厚かましい、過去形ちゃう、現在進行形やな。でもまだあきらめられんので、もうちょっとでもましにしてゆきたいと思っています。)

また、演劇がずっと好きで大事で、公演だとかなんだかんだと休ませてもらったり、そのうえ6年ほど前から、家の事情で堺の実家に毎週末帰ることになってから、さらに時間的にもいろいろ制約のある状態になりました。

そんな人間的にも状況的にもややこしい私が働くのを許してくれ、京都に居場所をくださいました。なにかあるごとに、私はこの職場に守っていただいて、助けていただいている、場所をいただいている、と思い知りました。どれほど感謝しているかわかりません。
最後の日、ご挨拶していたらぼとぼと涙が出て身体が震えました。


皆さま、とてもあたたかかった。
細かい作業がほとんどだし、勤務時間は静かな職場だったけど、それでも仕事を通じて交わすやりとりや、業務の間にかわす会話のなかにそれぞれがもっておられる仕事への思いや、またそれぞれが大事にされていることに触れさせていただいたり、いろんな形の優しさや、真剣さや、気遣いや、ユーモアや……、皆さまに出会い、ともに過ごさせていただくことができてありがたかったです。
また仕事でミスしてご迷惑をおかけしたり、ご無礼したり、不快にさせたり、そして、こちらも勝手に傷ついたり。そんなことももちろんあって、それでも机を並べて一緒にお仕事させていただく、その時間もとても大事に思いました。

★  ★  ★

させていただいていたのは編集業務の補助的なこと、デザイン、一般事務など。
さきの電話応対に始まり、原稿整理、テキスト入力、組版、校正、本の装丁や紙面デザイン、伝票起票などの事務、ときには発送作業など。


たとえば本の装丁。
いつも丁寧に指導していただきました。昨日整理していたら昔の没になった装丁案とかがわさわさ出てきて、これが、かなり不味い。我ながら引きまして、そら怒られるわ……って思いました。その頃は身の程知らずで、なんでそんなにこれがあかんの???ぐらいに思っていたように思います(それで捨てられなかったんだと思う)。私なりに勉強したくてデザインの学校に行ったり、色彩検定受けたりとか、でも身になっていなかったのに妙な根拠のない自信があったのやと思う。
著者の方の思い、本の内容の表現と、読まれる方々へのアピールと配慮と、会社としての姿勢というか方向性というか、その理解やバランスの上に成り立つ表現が私には難しかった。そんな私などを使うのは手のかかることだったと思います。
そうして悩みながら本屋さんに行くとたくさんの素敵な顔をした書籍がいて、だからその書籍の奥の見知らぬ方がたにもたくさん教えていただきました。御礼の言いようがないけど、たくさんお世話になりました。
その繰り返しの中で少しずつお仕事を学ばせていただいたように思います。そうして装丁のお仕事を通して出会わせていただいた世界はとても豊かでした。正直なところ、残念ながら半人前のままで終わることになりましたが。


また、仏教書の出版社で、原稿入力や校正などしながら、講義やご法話を聞かせていただいている気持ちで、私自身は企画のメインの担当編集者になることはなかったので、余り著者の方々とお会いしてお話しできる機会はなかったけれど、それでもその文章を通していろんなことを教えていただいたように思います。そんなことが日常でふっと出てきて、あー、いつの間にかたくさんのこと栄養をいただいているんやなぁ、と思いました。これからは、ちゃんと積極的に自分で読んでいかな読めなくなっちゃうから、ちゃんとした読者になってゆきたいと思います。


あと、電話応対。
社内の皆さんの電話で話されている対応の仕方がそれぞれに好きで、よく真似をしました。
お客様も、とても優しい方がいて、電話でお声を聞くだけで、心に暖かいものが流れることがありました。この方に本が届くのだと思うと不思議な思いがしました。机に向かって1日座っていることがほとんどで、あまり人に会わない時間の中で、声を交わせることはとても大事なんやなと思いました。
えー、中には正直なところ1日落ち込むような電話もありましたが、それも含めて電話での会話は勉強になりました。声だけで交わすことの面白さと怖さの中で、見えてくる?聞こえてくる?ものがある気がします。これも、何かと機会があるからこれからも学んでゆきたいです。



本は幼い頃から好きではあったけれど、そんなに早く多くは読めないし(私の場合は演劇や朗読のように何度も何度も読んで、声に出して、身体を通さないと深い出会いがしづらいように感じていて)、お仕事をさせていただく以前に「いい読者」としての自信がなくて、本づくりの仕事に関わらせていただくことに正直なところずっとためらい、迷い、自信がないままでした。
だけど、このお仕事を通して、やっぱり自分なりに「本」そのものが好きだと思いました。たくさんのことを学ばせていただいたと思います。自分がさせていただけたことはわずかだったと思うし、冷や汗の出る失敗も数々しましたけれど。

★  ★  ★

社長と専務のお二人をはじめ、ほかの社員の方々やアルバイトの方々と一緒に働かせていただいた日々、とても勉強になりました。職場の皆さま、そして以前この会社で一緒に働かせていただいた先輩や同僚の皆さま、またご挨拶できなかったけれど仕事を通してお世話になった数え切れないたくさんの皆さま、そして社長・専務のお二人とのご縁をいただいた、大学を出て就職した前の会社の皆さま方も、ほんとにほんとにありがとうございました。お伝えできない方がほとんどだけど、この感謝の気持ち届きますように、と、この場を借りてあつく御礼申し上げます。

★  ★  ★


これから生活の仕方が変わってゆくので、不安いっぱいですが、まずは4月いっぱいはとにかくゆっくりするつもりです。
とは言え、週末の前後は相変わらず実家に帰省なので、平日に何しよう何しようと思っている間、せんなあかんこまごましたことしているうちに4月が終わってしまいそうな予感が……。

また、あらためてご報告いたします。
いつにも増して長文になりました。
読んでくださった方、まことにありがとうございました。
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4 コメント

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Unknown (スガナミ)
2012-04-11 14:40:25
あたたかい人たちとの大切な時間、宝物ですね☆☆☆
おつかれまさでございました!
ゆっくりして力をたくわえて、また新しいスタートに備えてくださいな☆
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ありがとうございます! (とよし)
2012-04-11 16:14:53
スガナミちゃん、ありがとうございます。
ほんま、大切な宝物です。
仕事でろくなことできていないので、お言葉恥ずかしいですけど、嬉しいです。
新しいスタート頑張ります。
返信する
お疲れさま (プク)
2012-04-14 03:33:30
社会人としてのイロハを教えていただいた方であり、演劇活動に理解があったおかげで、ここまで来れたので、感謝感謝ですね!
これからも応援してます。ファイト!!
返信する
Unknown (とよし)
2012-04-18 01:38:26
プクちゃん!
お久しぶりです、ありがとうございます。
ほんま、皆さんに感謝感謝です。

しかし、ブログ書いてから、かっこつけてたいそうに書きすぎてるように思って、ほんまにたいした仕事できてなかったから恥ずかしくなってきて。相変わらずのアホです。

応援のお言葉嬉しいです、もったいないような。ちょっとでもお言葉に沿うようつとめまする。
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