「かえるの日」後日メモ

豊島由香のブログです。2006年5月の「かえるの日」公演後から始めました。演劇のことや、日々の出来事などつづっています。

「のぞき穴、哀愁」

2014年05月16日 | 舞台などの感想メモ
MONO「のぞき穴、哀愁」作・演出 土田英生
3月11日(火) HEPHALL

大阪駅が随分変わって周辺も変わった。もっとずっと前、あれは何年前?オレンジルームがなくなって、その後新しくHEPHALLができて、そしてまたそれからも、かなり時間が経っている。赤いクジラの下を通り、エスカレーターを上がりながら、以前より幾分年月を重ねたHEPの店内を見、それぞれの場所で流れてゆく時間を考えながら劇場に向かった。

ビルの天井裏。もう舞台美術だけで、観ているこちらは反応して、何かが引き出されるような。すごいなあ。
幼い頃、子ども劇場みたいなのに行く機会があると、終わった後、よく舞台にかぶりついてセットをじろじろ眺めた。MONOのセットはその頃のことを思い出す。

ヒヤヒヤした。
ある会社の天井裏が勤務地で、下のオフィスをのぞく仕事。そこで働く人たちは黒のスーツをびしっと着ていて、轟さんはキッラキララメっていて(しかもそれが誰からも突っ込まれないのが好き…私が聞き逃していなければだけど…)、イキイキと?仕事をしている。テンポがよくて、交わされる会話が可笑しくてたくさん笑う。でも、いやいや相当気持ち悪い状況やで、と、ハッとする。もし自分がいつの間にかのぞかれていたらどうだろう、そして自分ものぞく側にまわってみたら…みたい気もする? どんなことになるだろう。楽しく笑って、ちょっと怖くて。そして客席でそのことを共有していることにまたこっそりヒヤヒヤした。

彼らは各々の事由でその会社を解雇されている。それぞれが何かしらの問題を抱えていて辛くて、その人たち自身も実はかなり危ないところがあって。けれど、愛らしくて笑ってしまう。遠い見知らぬ他人事じゃない。どこか身近に、自分にも思い当たる。

終盤、片山さんの台詞と、男たちの様子が胸に響いた。そのメモをねぇ、とっておけばよかったのになぁ。片山さんがのぞいているだけの悲しみや空しさなどについて言われたと思う。
そのシーンを見ていると、テレビだとかネットだとかのぞいている私たちの、いや自分の姿が思われた。そうして連想して出てきちゃう、っていうのは、繋げちゃうっていうのは、きっとそういう心当たりがあるからだ。

ずっと続けておられるMONOの皆さんの姿にどれほど多くの人が力をもらっていることだろう。感謝です。

あと、帰りしな、肩をたたかれて振り向くとハンサムTさんがいて、にこやかに手を振ってくれて嬉しかった。いつも思うけど、観劇はそういうことも込みの体験やなー。
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