じゅうのblog

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『邪悪な少女たち』 アレックス・マーウッド(著),長島水際(翻訳)

2024年08月26日 21時54分55秒 | ■読書
イギリスの作家アレックス・マーウッドの長篇ミステリ作品『邪悪な少女たち(原題:The Wicked Girls)』を読みました。
アレグザンダー・マコール・スミスの『キリンの涙―ミス・ラモツエの事件簿〈2〉』に続きイギリスの作家の作品です。

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その夏、絆で結ばれた11歳の少女二人は、4歳の少女を“殺した”―裕福な家で育った名門校の生徒アナベルと、貧困家庭に育ち読み書きできないジェイド。
境遇の違う彼女たちが偶然友人になり、偶然近隣の少女と遊んだ時に悲劇が起き、二人は別々の矯正施設へ送られた。
25年後の夏、リゾート地の遊園地で少女が殺された。
そのことが会うはずのない二人を結びつけ…アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞。
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2012年(平成24年)に刊行された作品です。

貧しい家に育った11歳のジェイドと裕福な家に育った11歳のベルが犯した罪──4歳の幼女殺し……別々の施設に二人は入り……。

11歳の少女2人が4歳の少女を殺したという衝撃的な事件を描いたサスペンス……25年後の現在と過去の回想が交互に展開され、2人の運命や心理、そして25年前に起きた4歳の少女が殺された事件と現在の若い女性が次々に殺された事件の真相が徐々に明らかになっていく展開、、、

2人の少女は、それぞれに過酷な環境に置かれており、友情と依存の間で心が揺れ動いていくのですが……その感情や思考が丁寧に描かれることにより、彼女たちの苦しみや孤独、そして罪悪感に共感することができましたね。

社会的な問題にも触れられている作品で、少女たちの事件は、メディアや世間の注目を集め、彼女たちを非難や憎悪の対象にしますが、彼女たちの背景や置かれている状況には、家庭の問題や貧困、虐待など、多くの要因が絡んでいるんですよねー 人間の邪悪さだけでなく、善良さや複雑さも感じさせられましたね……真犯人の正体や動機も興味深いものでした、、、

恵まれた友人をねたんだことはないか? 貧しい友人を無自覚に蔑んだことはないか? 世の中は不公平だと思ったことはないか? 幼い頃は親しかったのに生活に格差が生じたせいで失ってしまった友人はいないか? 自分の人生を振り返りながら、罪と罰、正義と悪、そして許しと和解について考えさせられましたね……単なるミステリに留まらず人間の心の奥深さに触れるとともに、読者に多くの問いかけを残す作品だと感じました。
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