平成22(行ケ)10247:4部高部
請求認容
本件は、拒絶査定不服審判に対して取消を求めるものです。
裁判所の判断は14ページ以下。
まず、本判決は、一般論として、特許制度は、発明を公開する代償として、一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであるから、明細書には、当該発明の技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない、と述べた上で、物の発明については、その物を製造する方法についての具体的記載が必要であるが、そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき当業者がその物を製造できるのであれば、実施可能要件を満たすということができる旨判示しました。
次に、本判決は、本件について、出願経過における意見書の記載等も参酌した上で、当業者の技術常識を認定し、本願明細書には、本願発明1に係る炭素膜の製造方法が記載されているところ、記載された条件の中で、当業者が技術常識等を加味して、具体的な製造条件を決定すべきものであり、これにより、本願発明1に係る炭素膜を製造することは、可能であるというべきであると述べました。
さらに、本判決は、被告の反論に応える形で、本来、物の発明においては、物を製造する方法の発明において、特許請求の範囲に製造条件の範囲が示され、公知物質の製造方法として、方法の発明の効果を主張しているケースとは、実施例の網羅性に関して、要求される水準は異なると述べています。
実施可能要件の判断に関して非常に参考になる裁判例です。
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