いわゆるパテントトロールによる権利行使に関して差止請求権の行使を制限すべきという議論がなされている。
しかし、パテントトロールの適切な定義は難しいし、特許権者の属性によって差止請求権を制限することには疑問が残る。
思うに、この問題の本質は、権利行使自体ではなく、その態様にあるのではないか。すなわち、常識的な交渉のルールから逸脱した高飛車な態度による不当に高額のライセンス料の要求方法を問題にすべきではないか。
この視点に立てば、このような社会的相当性を逸脱した交渉態度について不法行為が成立するとの見解が成り立つ余地がある。他の法分野に目を向けると、権利行使の一環とみられる行為であっても恐喝罪の成立の余地が肯定されているし、また、退職勧奨についても、一定の場合、不法行為の成立が認められている。特許権の権利行使についても、同様の議論が可能となるはずである。今後、日本の知財政策は、司法解釈も含め、プロパテントの方向に進むと考えるが、そうであるならば、より一層、権利行使を背景とした交渉には、節度のある態度が求められるべきであり、社会的相当性を逸脱した交渉態度については不法行為が成立すると解するべきであると思う。
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