特許法改正案に目を通しました。
概要、以下のとおりです。
1 ライセンス契約の保護
99条が改正され、通常実施権は、その発生後に特許権を取得した者に対し効力を有すると規定されました。旧法では、通常実施権の発生後に特許権を取得した者に対してその通常実施権を対抗するためには登録が必要でしたが、改正法では何の手続きも不要となります。
2 共同発明・共同開発の成果の適切な保護
74条に特許権の移転の特例として、共同発明者の一部によって特許が取得されてしまった場合などに、発明者等が特許権を自らに移転することを請求できることになりました。なお、移転登録前の通常実施権者に対しては、先使用権類似の要件の下、法定の通常実施権が認められます(改正法79条の2)。
3 ユーザーの利便性向上
旧法30条1項は、発明者の意に反して発明が公知になった場合のうち一定のもの限定して新規性喪失の例外となると規定していましたが、改正法30条1項は、この限定を除外し、発明者の意に反して発明が公知になった場合一般について、新規性喪失の例外となることが規定されました。また、発明者の行為に起因して発明が公知になった場合一般についても、6ヶ月間の猶予期間を認めることになりました(改正法30条2項)。
4 審判制度の見直し
第1に、特許侵害訴訟等が確定した後に、無効審決が確定した場合において、当該訴訟の当事者は、当該特許侵害訴訟に係る再審の訴えにおいて、当該審決の確定を主張することができないことになりました(改正法104条の4)。
第2に、現行法においては、訂正審判の提起可能期間について、無効審判が特許庁に継続してから審決が確定するまでは提起できないとしつつ、例外として、審決取消訴訟提起後90日間は可能と規定していました、改正法は、この例外を削除しました(改正法126条2項)。kれと連動して、旧法181条が廃止されています。
第3に、訂正請求について、請求項毎に行うことができることを原則としつつ、従属項等から構成される一群の請求項(経済産業省令にて規定)については、一群の請求項毎に行うべきものと規定しています(改正法134条の2第2項、3項)。訂正審判についても同様です(特許法126条3項、4項)。
第4に、無効審決の前に訂正請求の機会を付与するため、審判長は、請求に理由があると認めるときその他経済産業省令で規定する場合には、審決予告を行うことを義務づける制度が新設されました(改正法164条の2)。
第5に、無効審判が請求項毎に可能であることの関係で解釈論上の疑義が生じていた審決の確定範囲について、立法的に解決を図りました(改正法167条の2)。
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