だせなかったLove Letter:7

2010-04-29 | 自作小説:私小説
N原が恋をした。
部活の帰り、彼は同じクラスのA賀のことを話続けた。
 “A賀と話をした。”
 “授業中、目が合った。”
クラスメイトなら普通に起こりえる出来事なのに、
彼にとっては特別なことだった。
僕にとってはとてもつまらない話。
錯覚みたいなのものだ。
恋は盲目。
そう思いながらも、そんな彼がうらやましかった。
僕は、恋が出来ずにいた。
その頃の僕は、全てのものに、情熱を感じられずにいた。
このまま、一生、熱くなる何かを見つけられないかもしれない。
そんな風に感じていた。
でも、僕の周りの人間は、この環境に馴染み、楽しみを見つけ、
熱くなっていた。

 “俺、明日から、東部線で通うことにした。”
 “なんで?”
 “A賀が東武線なんだ。”

確かに、十分な理由だ。
ただ、東武線で通うという僕の意見に反対し、
新京成を選んだのはN原だ。
そんなことも忘れるほど、彼女に夢中だった。
無理も無い。
A賀は、すごい美人だった。
学園のアイドル。
そんな華のあるタイプだ。
もともと、東武線で通おうと思っていた僕は、
彼の意見に従い、
東武線に変更することに同意した。
もっとも、N原は僕がどの様に、
通学方法を変えようが感心はなかった。
呆れるばかりだ。

そんな彼の恋に振り回され、
次の日、東武線の増尾駅で僕は電車を待つことになった。
通り過ぎる電車を何気なく見ていると、
ひとりの女の子と目が合った。
彼女の制服は、確か、僕と同じ高校の生徒のものだ。
会ったことない、女の子だった。
それなのに、なぜか、僕を非難するような目で睨んでいた。
怪我の功名。そう喩えればいいのか。
僕と君のはじめての出会いだった

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