だせなかったLove Letter:6

2010-04-29 | 自作小説:私小説
僕は、なぜか、不良に好かれる。
同じ臭いがするのだろうか。
僕が高校で最初に仲良くなったのは、
地元で有名な不良の多い中学出身、
それも、そこで一目置かれた存在だったT瀬だった。
彼は、僕に酒とタバコと男らしさを教えてくれた。
そして、君と僕の仲介をし、付き合うきっかけを与えてくれた。

T瀬が学校になじめずにいることは、僕も薄々感じていた。
最初から、彼はこの高校になじめずいた。
その理由はわからない。
今、考えると、淋しかったのだろう。
でも、僕も淋しかった。
なぜだろう。
高校時代は、とても淋しく、人恋しくなる、そんな季節だと思う。
僕らの育った時代、今もそうかもしれないが、
近隣の子供がそのまま小・中学校へ進み、
クラスは変わるが、ほぼ知り合い同士だった。
だから、人間関係を再構築するのが、高校時代だった。
高校には入学試験がある。
入学試験は学力を選別するだけなのに、
なぜか、人間の性質までも選別してしまう。
なぜか、その学校の文化に合った人間を選別する。
でも、はぐれ者は必ずいて、それがT瀬だった。

あるとき、彼は、僕にこう言った。
 “俺の中学では、鎌ヶ谷高校は、バカにする対象だったんだよ。
  校庭から、高校に向う奴に罵声を浴びせていた。
  でも、誰一人、その罵声に怒る奴はいなかった。
  そんな情けない奴が通う高校。
  それが、鎌ヶ谷高校。
  だから、俺は、こんな高校に来たくなかった。“
そして、彼は僕の目を見て、
 “でも、やり直したかったんだ。
  このままじゃ、だめだって。
  だから、ここ受けて、ここに通うことにした。“

そんな、彼を僕は助けることはできなかった。
助けるどころか、僕達を助けて、彼は高校を去ることになった。
僕にとっての“男”、それはT瀬だ。
僕も彼になりたい。
その頃も、今も。
でも、男らしく生きることを選ぶと、不幸になってしまう。
だから、いつも男は、男らしさに憧れ、
ふがいない自分を哀れむように、酒を飲むのかもしれない。
今の僕のように。


ランキング参加中
←良かったら、押して下さい

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« だせなかったLove Letter:5 | トップ | だせなかったLove Letter:7 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

自作小説:私小説」カテゴリの最新記事