だせなかったLove Letter:5

2010-04-29 | 自作小説:私小説
 ”ラグビーは男のスポーツだよな。”
柔道着を着たT先輩は白々しく、そう言った。
 “ラグビー部に入るのか?”
僕は少し戸惑いながら、
 “そう思ってます。”
 “ラグビー部と柔道部は仲良くて、部員が足りないから、
  試合のときは柔道部が臨時部員として参加することもあるんだ。”
 “そうなんですか?
 “そうだ。でも、ラグビー部は柔道をしない。
  つまりだ、柔道部にはいれば、柔道だけでなく、
  ラグビーもできるってことだ。“
どう答えたらいいのだろう。
T先輩の論理は、いつも自分勝手だった。
僕の返事を無視して、さらに、彼は続けた。
 “それに仲のいいのは、ラグビー部だけじゃない。
  ソフトボール部とも仲がいい。時々、練習試合をするんだぞ。”
ソフトボール部といえば、当然、部員は女の子。
少し、心が揺れた。
  ”まあ、ラグビー部に入る前に、柔道部をちょっと覗いてみないか?”
僕とN原は、彼の甘い誘いに騙され、柔道場に連れ込まれてしまった。
そして、次の日は、なぜか部員となり、道場の掃除をさせられていた。
そんなT先輩の口車に乗ったのは我々だけではなく、他に5人もいた。
T先輩の話は嘘ではなく、
ラグビー部とソフトボール部と仲がよいのは事実だったが、
それだけで、ラグビーの試合もソフトボール部との練習試合も
高校3年間で一度もなかった。
ただ、重要なこと、君はソフトボール部だった。
僕が、君がソフトボール部だと知ったのは
夏休みに行われた柔道部の合宿だった。

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