だせなかったLove Letter:44

2011-11-08 | 自作小説:私小説
よく覚えていない。
でも、確かに、そのとき、聞いた。

僕は校庭に向かおうとしていた。
体育の授業だったのかもしれない
スニーカー・・・靴紐を結んでいた。
そのとき、聞いた。

知らない女子たちが、そんな会話していた。
“T瀬が先生を殴ったらしいよ”
あり得ない話ではない。
“それ本当?”
僕は、彼女たちに聞いた。
 “らしいよ。”
僕は言葉に詰まった。
 “自宅謹慎になったって。”
 “緊急職員会議が開てるみたい。”
彼女たちは言った。
彼女たちは、T瀬を嫌っていたのか?
いなくなって当然。退学。
そんな感じで答えた。

僕は思った。
助けないといけない。
守らないといけない。
誰を?
勿論、T瀬だ。

今、50を目前にした僕は思う。

助ける?
守る?
誰を?

結局、それは僕自身だった。

そして、16歳の僕も、本当は、それに気が付いていた。
だから、僕は僕自身を許せない。

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